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「ザ・ロイヤル・エクスプレス」が四国へやってきた

豪華列車のツアー公開
  • 2024年02月02日

横浜と伊豆半島を結ぶルートや北海道で運行されている東急のクルーズ列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤル・エクスプレス)」。鮮やかなロイヤルブルーの車体にところどころゴールドで縁取りが施された外装。内装には、木材がふんだんに使われ落ち着きがある豪華観光列車。この冬、四国で行われるツアーを前にした試乗会を味わった。

(NHK松山放送局 宇和島支局 山下文子)

特集の内容はNHKプラスで配信中の1月26日(金)放送「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。

画像をクリックすると見逃し配信が見られます!見逃し配信は2/2(金) 午後6:59 まで

ザ・ロイヤル・エクスプレスとは?

ザ・ロイヤル・エクスプレスは、2017年に伊豆エリアで運行を開始した。8両編成で乗客の定員は最大でおよそ100人と観光列車としては国内最大級だ。デザインは、JR九州の豪華寝台列車「ななつ星」など全国各地の豪華列車を手がけてきた水戸岡鋭治さんが担当した。

想像と違う車両がホームに

ツアーが始まる前に行われた報道陣向けの試乗会で、松山駅のホームに入ってくる列車をわくわくドキドキしながら期待を胸に待っていると、予想外の列車が入線してきた。なんと列車の先頭車両は、EF210形電気機関車!!その後ろに青の客車が5両が連結され、最後尾には白い電源車両マニまで従えているではないか。意外な組み合わせにしばし動揺を隠せない。もともと電車として自走できるはずなのに、なぜ電気機関車がけん引してきたのだろうか。JR四国の担当者に話を聞くと、四国の路線事情が関係していた。ザ・ロイヤル・エクスプレスに電力を供給するパンタグラフが予讃線のトンネルに引っかかってしまうというのだ。そこで、パンダグラフを自在に調整できる電気機関車を動力とし、客車をけん引することになったそうだ。これは、乗車したあとに分かったことだが、なるほど窓から外を眺めると機関車のパンタグラフがトンネルの前後で伸びたり縮んだりしていたのが見えた。

どんなツアーなのか

いざ、車内に乗り込んでみる。まず目を引くのが、至る所に使われている木材だ。5号車と6号車のダイニングカーは、天井がアーチ型になっていて、床には寄せ木細工が施されている。8号車は、本棚を備えたゆったりとしたソファがあり、書斎としても使える古民家風のたたずまいになっている。また、1号車は展望車となっていて、大きな窓からはまるで運転手気分でダイナミックな車窓を味わえる。通路にも、組子細工やステンドグラスなど一つ一つ職人の巧みな技がちりばめられている。

この列車で四国・瀬戸内をめぐる今回のツアーは、3泊4日で岡山を出発して瀬戸大橋を渡り、JR予讃線の線路などを使って香川や愛媛などを走行する。旅に欠かせない食事は、日本料理やすし、フランス料理など地元の料理人たちが列車に同乗し、ご当地自慢の旬の食材を使って腕を振るう。

さらに、旅を演出する音楽まで用意されている。プロの音楽家が乗り込み、今回の旅をイメージして新たに生み出した楽曲を生演奏してくれるのだ。

列車内には泊まれないため、香川の琴平や愛媛の道後温泉などで高級宿に宿泊し、旅のエンディングには、瀬戸内海を巡るクルーズ船「おりんぴあどりーむ せと」を貸し切って多島美を海から堪能する。旅行代金は最も安くて96万円からとなっていて、文字通り豪華列車のツアーである。一方で、主催者によると、ツアーには定員のおよそ2倍の応募があり、ことし3月までの合わせて6回の運行すべてがすでに完売、満席だということだ。

なぜ四国でツアーを?

なぜ今回のツアーの開催地として四国と瀬戸内が選ばれたのか。運営している東急の担当者に話を聞いた。

東急 社会インフラ事業部 クルーズトレイン推進グループ 
松田高広 統括部長

「四国は、ブランド力もあり歴史の中で育まれた文化が生活に根付いていると思います。たとえば、菊間町では伝統の鬼瓦が使われている家々があり、それが車窓から見えたときにとっても素晴らしいと感じました。ふだん運行している伊豆の海とはまったく違う瀬戸内海を走りながら、地元の旬を味わってもらうことで地域の食文化にも触れてもらえる。
四国と瀬戸内は、日本の原風景のような本当に魅力的なエリアをだと思っています」

ツアーの催行にあたっては、東急だけでなく機関車を提供するJR貨物やJR西日本、専用バスやクルーズ船を運行する両備グループ、それにJR四国など5社が連携していて、JR四国は、今回のツアーが新たな観光振興になるのではと大きな期待を寄せている。いくつもの会社が連携して実現するツアーというのもまた1つの新たな取り組みといえる。

四国旅客鉄道 鉄道事業部運輸部 運輸課
南壮憲 課長

「四国を活性化したいという思いから新たな取り組みにチャレンジしました。ツアーの乗客に四国のいいところを知ってもらい、四国ならではのおもてなしを体験してもらい、また来たいと思ってもらうことが1番ですね」

地域を元気づけたいという観光振興への思いは今回だけではない。東急はJR北海道と連携し、2020年から夏の北海道を巡るクルーズ列車としてザ・ロイヤル・エクスプレスを運行している。これは、北海道胆振東部地震で被害を受けた北海道ににぎわいを取り戻してほしいという思いから実現したもので、4年連続で運行されている。北海道のツアーが好評を得ていることなどから、東急は四国での運行も継続させていくことを視野に入れているという。

(東急 松田高広 統括部長)
「列車が走る姿を地域の人にも見てもらい、乗客たちと触れ合う機会を楽しんでもらうことで乗客と地域の人の一期一会のすてきな出会いをしてもらい、四国を元気にすることにつながればいいなと思っています」

取材後記

筆者とザ・ロイヤル・エクスプレス

試乗会では、実際のツアーさながらの演出を一部体験することができた。ゆったりと座席に腰掛けて、見慣れたはずの瀬戸内海を眺め、旬の魚を味わう。そこへ音楽家が足を運び、目の前でヴァイオリンとピアノの演奏が始まる。「瀬戸の花嫁」や「みかんの花咲く丘」など聞き慣れた音楽が車内に響き渡ると、いつのまにか私はふとセンチメンタルな気分に浸ってしまっていた。私たちはこんなにも美しい景色のそばで、日々暮らしているのかと。100万円近いツアー料金には手が届かないけれど、地域の良さを五感で楽しめる豪華観光列車の旅も悪くないではないか。

特集の内容は下の動画でご覧いただけます。

  • 山下文子

    山下文子

    2012年から宇和島支局を拠点として地域取材に奔走する日々。 鉄道のみならず、車やバイク、昭和生まれの乗り物に夢中。 実は覆面レスラーをこよなく愛す。

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