プラスチックが海に“とける”?海洋ごみ問題解決へ最新研究【動画】
- 2024年01月17日
プラスチックごみによる海洋汚染が世界的な課題となる中、海岸に漂着したプラスチックごみのうち「漁具」が大半を占めるという調査結果もあり、漁業が盛んな愛媛県で対策が急がれています。
そこで漁具として使っているときは丈夫でも、海に流れ出てごみになったときには自然に分解されるプラスチックを作ろうと、愛南町で最新の研究が進められています。
いったいどんなプラスチックなのでしょうか。詳しく取材しました。
特集の内容はNHKプラスで配信中の1月16日(火)放送の「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。
まだいや真珠の養殖など、漁業が盛んな愛南町で行われているのは、開発中のプラスチックを海の中に入れてどのように分解されるか確認する実験です。さまざまな種類のプラスチックのサンプルを1000個以上、いけすに沈めて変化を観察します。
愛南町でもプラスチックごみによる海洋汚染が問題となってきました。愛南漁協の立花弘樹 組合長は、漁業者が注意していても、どうしてもごみとして流れ出てしまうものがあるといいます。
「絶対ごみを捨てたらいけないという高い意識を持っていますが、どうしても海岸端に置いたりとか海洋に流れ出る可能性がありますよね。雨が降ったりとか風がとか、波でちょっと大潮のときに波でさらわれたりとかいうのがあると思うんです」。(立花組合長)
環境省が行った調査では、国内各地の海岸に漂着したプラスチックごみのうち、重さでみると「漁網とロープ」が最も多く40%余り、漁具全体では、およそ60%を占めました。
環境に優しい漁具をつくることはできないか。東京大学大学院の伊藤耕三教授が研究チームのリーダーを務め、海洋ごみ対策に詳しい専門家や企業などとのチームで、海の中で自然に分解されるプラスチックの開発を進めています。
「われわれが作ろうとしているのは、使っているときには丈夫で壊れない。それがたまたま間違って海に入ったときにすぐに分解してくれる、そういう理想的なプラスチックを開発したいと思っています」。(伊藤教授)
伊藤教授たちが開発を進めているのは、生物由来で海の中で水と二酸化炭素に分解されるプラスチックです。
これまでもこうしたプラスチックは開発されてきましたが、漁具に使うには耐久性がなく適していませんでした。
そこで光や熱、微生物の働きなど、さまざまな条件が重なったときに初めて分解が始まるプラスチックを作ることを目指しています。漁具を使っている時は耐久性を保ちつつ、釣り糸や網がごみになって海底に沈んだ時などに分解が進んで環境を汚染しないようにするのが狙いです。
研究チームは開発した素材で作った釣り糸を研究室で水に入れて観察しました。
その結果、不純物を取り除いた水の中では半年間強度を保った一方で、微生物などを海底に近い環境にした水の中ではおよそ3か月で完全に分解しました。
愛南町では、開発した素材が実際に海でどのように変化するかを検証しています。先月、半年間海に沈めていたプラスチックを引き上げました。
すると、開発を進めている素材は一般のプラスチックと比べて分解が進んだことが確認されたといいます。
「ちょっと押してみるとパリッと割れる。ちょっと触っただけでもすぐ割れますから、そうするとすぐ崩壊していると思いますね。うまくいっていると思いますね。予想通りの展開じゃないかなと」。(伊藤教授)
伊藤教授は、丈夫なプラスチックのメリットと環境への配慮を両立することで漁業の持続可能性を
高めていきたいと、次のように話します。
「プラスチックのいい面もあれば悪い面もあるんですけど、悪い足りない面をこういうプロジェクトで解決して、われわれがそのプラスチックのいい部分を長い間使えるように認めてもらえるようにしたいと思っています」。
詳しくはNHKプラスで(配信終了後は下の動画で)ご覧ください。