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あなたの“見えにくい”抱え込まないで セルフチェックと四国の相談窓口

  • 2023年12月21日

“目の見えにくさ”で日常生活に支障が出るほど困っている人たちが周りに多くいること、気づいていますか?
普通に過ごしているように見えても、文字が読みにくかったり、視野の一部だけがぼやけていたり、悩んでいる人が多くいて、しかもその数は増えているんだそうです。

自分自身が医師から“視覚障害”だと告げられた時どうしたらいいのか。
すぐにできるセルフチェックのほか、文末に四国で相談できる窓口の連絡先も掲載しました。

(NHK松山放送局 河村柚花)

12月22日(金)放送「四国らしんばん「あなたの“見えにくい” 視覚障害かも?」はNHKプラスで配信中です。

画像をクリックすると見逃し配信が見られます!見逃し配信は1/5(金) 午後7:55 まで

増える“視覚障害”

日本眼科医会の調査によると、全国で“目の見えにくさ”で困難を抱える人は、197万人以上いると推定されるそうです。
主な原因は、緑内障や黄斑変性、糖尿病などの病気です。
しかも高齢化が進む中、2030年にはその数が200万人を超えると想定されています。
今の人口に当てはめると60人に1人の割合になります。

“視覚に障害がある”と聞くと、全く見えない状態を想像するかもしれませんが、
眼鏡をかけても視力が保てなかったり、視野が狭いなど見える部分があったり、 “見え方”はさまざまです。

また大半の人は、人生の途中で見えにくくなった、いわゆる“中途視覚障害者”にあたります。
人が得る情報の80パーセント以上を占めると言われる視覚。
人生の途中で視覚障害になると今までできていた読み書きや外出など、日常生活のさまざまな場面で困難が生じ、中には生きる自信を無くすなど、精神的にも大きな影響を受けることもあるといいます。

実はあなたの周りにも? “隠れ”視覚障害の存在

厚生労働省によると、視覚障害で障害者手帳を発行している人の数は全国でおよそ31万人。
でも、先ほど書いた日本眼科医会の調査では、”目の見えにくさ“で困難を抱える人は197万人以上。
ずいぶん差があるように思えます。
この違いについて、視覚障害がある人への支援のあり方を研究している桜花学園大学の柏倉秀克教授は、以下のように分析します。

桜花学園大学 柏倉秀克教授
「この差を、“隠れ”視覚障害者といっています。実は潜在的にたくさんの人が“目のみえにくさ”で不便を抱えながら生きているにも関わらず"障害者になりたくない"、"年齢のせいで仕方ない"、"障害者手帳の認定に至らないけど、不便を抱えながら生きている"など、様々な要因がこの差を生んでいます」

また、目の病気は進行が遅いことに加え、首や目を動かすことで欠けている視野をカバーしたり、脳が見え方の違和感を補正したりして、そもそも異変に気づきにくいのも特徴だといいます。

あなたの目の症状が分かる12項目

すぐにできる簡単なチェックリストはこちらから

医療と福祉の間にある壁

もう一つ、“隠れ”視覚障害を生み出す要因となっていることが、「医療と福祉の制度的な課題」があります。

当事者団体の協力を得て実施した調査では、眼科などの医療機関で視覚障害が発覚してから1年以内に歩行訓練などの視覚リハビリテーションや福祉サービスにつながる人は、全体の4分の1しかいないそうです。
およそ半数の人は、5年以上もかかっていることが明らかになりました。

その理由は、視覚障害のリハビリテーションの特徴にあります。
例えば整形外科の場合、けがをして病院に行くと、治療と一緒に理学療法士に繋がり、リハビリテーションを受けられるようになっています。
しかし視覚障害の場合、リハビリテーションを行う歩行訓練士は福祉施設などに在籍し、医療機関の中でリハビリを行う仕組みになっていません。
一度失った“視覚”は治らないことがほとんどのため、治療と並行する形でリハビリが位置づけられていないためです。
従って目の場合は当事者が福祉側に自ら連絡をし、福祉施設などに出向いていかなければならないという、高い壁があります。

福祉側は、白杖の使い方や音声で読み上げるパソコンの使い方、文字を拡大する読書器の紹介など、“見えない・見えにくい”状態でも日常生活を送りやすくする方法を提供しています。

こうした情報すら患者に伝わらなければ、障害者手帳を発行するメリットがわからなかったり、まだ活躍できるのに仕事を辞めてしまったり、社会との関わりが持てるのに引きこもってしまったりしてしまいます。

高知で進む “孤立させない”連携

こうした事態を改善しようと、全国から注目される取り組みが高知県で行われています。
患者が通う病院に福祉の担当者が出向き、眼科内で福祉サービスや機器を紹介するというものです。
これは「中間型アウトリーチ支援」という手法で、患者が来る病院で接点を持つことで、視覚障害を告げたあとすぐに、今まで通りに近い生活を送れるように福祉側がサポートし、“孤立”を防ごうという仕組みです。

高知では、福祉の担当者が患者から得た情報も、患者の許可をもらった上で医師と共有し、みんなで支えていこうとしています。

この仕組みづくりに携わった別府あかねさんは、当時をこう振り返ります。

「(中間型アウトリーチを始める前は)福祉につながってきた方が"もっと早く知りたかった""あと3年早く知っていたら仕事も辞めずにつづけられたかもしれない"という利用者の声を多くきいてきました。(中間型アウトリーチを始めて)"いろんなことを諦める前"に情報提供すると、患者にすごく喜んでもらえたので、医療との連携は大切なポイントだと思いました」

“見えにくい”中でも生活の質をあげる

前出の柏倉教授は、「目が見えにくい」「日常生活で困っている」などの悩みがあったら、一人で抱え込まず最寄りの眼科や自治体の窓口、福祉施設に相談してほしいと訴えます。

桜花学園大学 柏倉秀克教授
「"年のせい" "他の人迷惑がかかる"と思わずに医療機関や福祉機関の助言を受けて、ぜひサービスにつながってほしいと思います。まだまだ人生は長いので、生活の質をあげるという意味でもリハビリをぜひ行ってほしいと思います」

取材を終えて

取材を通して多くの方のお話を伺いました。
「歩くことはできるけど、文字が読みにくい」「文字は読めるけど、階段の段差が分かりづらい」など、みなさん置かれている状況はさまざまで、“見えにくい”という状態も幅広いことを痛感させられました。見た目にはわかりづらい障害であり、周囲から“見え方”が理解されづらい部分もある中で、リハビリテーションに繋がり「視覚に障害がある中での生活の送り方」を学ぶことは、当事者にとって非常に有意義なものでした。
医療や福祉の担当者からは「残った視機能を使って、生活の質を上げたい」「視覚障害になっても、諦めることが少ないようにサポートしたい」という言葉を聞きました。
連携が行いづらい仕組みの中で、「視覚に障害がある状態での生活の困難さを解消したい」という最前線で当事者に関わる担当者たちの思いは一緒なのだとおもいました。
今後、当事者たちの悩みが少しでも解消される方向に進んで欲しいと願っています。

四国の相談窓口

四国各県にある以下の機関でも相談できます。

愛媛県
公益財団法人 愛媛県視覚障害者協会
愛媛県松山市本町6-11-5
連絡先:089-926-2233
営業時間:午前10時~午後5時
休み:火曜、土曜、日曜

香川県
香川県視覚障害者福祉センター
香川県高松市番町1-10-35 香川県社会福祉総合センター4階
連絡先:087-812-5563
営業時間:午前9時~午後5時
休み:土曜、祝日

徳島県
徳島県立障がい者交流プラザ 視聴覚障がい者支援センター
徳島県徳島市南矢三町2-1-59
連絡先:088-631-1400
営業時間:午前8時30分~午後5時15分
休み:木曜、12/29~1/3

高知県
ルミエールサロン
高知県高知市大膳町6-32
連絡先:088-823-8820
営業時間:午前8時30分~午後5時15分
休み:土曜、日曜

  • 河村柚花

    河村柚花

    2016年入局のディレクター。
    愛媛生まれの愛媛育ち。
    視覚障害者を取り巻く課題など、福祉ジャンルを中心に取材。趣味は、ドライブしながら温泉を巡ること。

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