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前橋 フリースペース代表の思い「悩める若者の居場所に」

  • 2023年01月05日

前橋市に、不登校やひきこもりの若者たちが集うフリースペース「アリスの広場」があります。自らも、不登校、ひきこもりだった代表の佐藤真人(さとう・まこと)さんに悩める若者たちとどう向き合っているのかお話を伺いました。

(前橋放送局アナウンサー 原口雅臣 /2022年12月取材)

“居場所”は街なかに

前橋市の中心市街地にある商店街、オリオン通りです。フリースペース「アリスの広場」はこの一角にあります。

佐藤さんは、福祉施設で働きながら、2014年から、不登校やひきこもりの若者たちを支援しています。

フリースペース「アリスの広場」 佐藤真人さん

「アリスの広場」が開くのは水曜日と木曜日の週2回。現在は、10代から30代前半のおよそ20人が通っています。

フリースペースってどんな場所?

原口雅臣アナウンサー

「今回の取材で初めてフリースペースにお邪魔しましたが、すぐ隣に和室もあって、自分の家だとか、サークルの部室のような雰囲気ですね。フリースペースとは、どういった場所なんでしょうか?」

佐藤真人さん

「簡単に言うと、自分が来たいと思ったときに気軽に来られて、帰りたいと思ったら、いつでも自由に帰れる、そういった場所なんですね。皆で一緒に何かをやりましょうということもあるわけではないので」

「僕だったりボランティアさんとおしゃべりしたり、私たちスタッフがいなくても、若者どうしでおしゃべりしたり、遊んだりしています」

ボランティアとのゲーム遊び

フリースペースは、不登校やひきこもりの若者たちが、外の世界に慣れるために通う場所です。「アリスの広場」は、悩みを抱える若者や家族の居場所であると同時に、キャンプや美術鑑賞会、仕事体験など、外に出るきっかけを提供しています。

仕事体験の様子

佐藤さんがこうした活動を続けてきたのは、フリースペースの必要性を何よりも強く感じているからです。

「僕は、中学生になってすぐ不登校になって、6月ぐらいで完全に行けなくなってしまったんです。『大きくなるにつれて大変なことが増える』と、小学校高学年のころから漠然と感じていて」

「中学生になってみたら、やっぱり環境が本当にガラッと変わって、体調を崩してしまったんです」

佐藤さんが不登校だった中学生のころ

学校に行けなくなった佐藤さんは、父親に連れられ、渋川市と埼玉県所沢市にあったフリースペースに通い始めました。

不登校は続き、結局、高校には行けませんでしたが、出会ったスタッフのあと押しを受け、もう一度、学ぶことを決意しました。

そして、20歳のとき、佐藤さんは、現在の高卒認定試験をパスして大学に合格。その後、大学院まで進みました。

 

大学院の修了式 父親の裕さんと

「迷った時や、どうしようかなというときは、ふたつのフリースペースの代表に相談に行っていました。背中を押してもらっていたんですね」

「それがきっかけで自分に自信を持てて…。フリースペースに通っていなかったら、いま、僕はどうなっていたか想像できないです」

「逆に今は、悩みを抱える若者や子どもたちと接するお立場ですが、ここに通っている皆さんは、どんな悩みを心に抱えているんですか?」

「理由を聞くと、いじめだとか、大きなきっかけがあって、不登校になったわけではないケースがかなり多いんです」

「学校に行くのがつらいとか、朝起きるのがつらいとか、そうした理由で学校に行けなくなった子が10代だと多いんですよ」

「20代ですと、ほとんどの場合は人間関係ですね。職場で人間関係がうまくいかなくなって、ひきこもり状態になってしまうケースが多いです」

「佐藤さんは、ひきこもり、不登校の経験者として、ここに通っている人たちには、どのように接しようと心がけていらっしゃるんですか?」

「まずは、気軽に来てもらいたいです。目的や用事がなかったとしても、来てほしいと思っているんです。それだけでも、家から外に出る、他人と接する練習になるんですよ」

佐藤さん

「ここへ来て、私たちスタッフや、同じ悩みを抱える人たちと話をするなかで、世の中を見る目を広げてほしい。ここをそういう場所にしてほしい。そこは大事にしています」

「アリスの広場」の運営は、おもに寄付でまかなわれ、不登校やひきこもりの若者、家族からの相談も受け付けています。

佐藤さんは、悩みを抱える若者たちには、フリースペースという“居場所”があることを伝えたうえで、本人が「行ってみたい」という気持ちになるまでは、あせらずに見守ってほしいと話していました。

「アリスの広場」 
場所:前橋市千代田町 オリオン通り 
開館:毎週水曜・木曜 午後1時~5時(年末年始除く) 
問い合わせ先:080-7835-8071 

  • 原口 雅臣

    前橋放送局アナウンサー

    原口 雅臣

    1997年入局。宮崎局、福岡局、東京アナウンス室などを経て、前橋局へ。「ほっとぐんま630」キャスター3年目。地域を元気にしようと汗をかいている人たちにスポットを当てていきたいです。

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