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災害時の車中泊 その注意点は

シリーズ「こうち守る備える」
  • 2024年05月14日

防災について考えるシリーズ「こうち守る備える」。今回は災害が発生した後に車の中で避難生活を送る「車中泊避難」についてお伝えします。
能登半島地震でも感染症への警戒感のほか、夜泣きする赤ちゃんやペットとの同伴などでやむをえず車中泊を余儀なくされた人も多くいました。
避難の選択肢の1つとして注目される中、注意点など課題について取材しました。
(NHK高知放送局 記者 益野美咲)

能登半島地震の被災地でも車中泊避難

石川 輪島市の避難所の駐車場

能登半島地震で建物の倒壊や火災で大きな被害が出た石川県輪島市です。
プライバシーの確保の問題などから、避難所に入らず、車中泊避難を続けている人たちも多くいました。

車中泊について学ぶセミナー

車中泊について学ぶセミナー

この車中泊について学ぶセミナーが香南市で開かれました。
講師となったのは高知防災プロジェクトの代表、山﨑水紀夫さん。
東日本大震災や熊本地震などの災害で被災地を支援してきました。

 

今回の能登半島地震でも、発災後から現地で避難所の運営のアドバイスを行ってきました。
そこで車中泊の多さを目の当たりにしました。山﨑さんは「圧倒的に車中泊を選ぶ方が多く、特に女性の方やペット連れの方が多い」と話していました。

エコノミークラス症候群に注意

 

車中泊を行ううえで注意することがあります。それがエコノミークラス症候群です。
長時間、足を動かさずに座っていると血栓と呼ばれる血の塊ができます。これが肺などに詰まるおそれがあり、過去の災害では「災害関連死」の要因の1つとなりました。

 

エコノミークラス症候群を引き起こさないようにするにはどうしたらいいのか。
対策の1つが眠るときに足をあげることです。

山﨑さんは車内で寝る場合について、「まずは寝る場所をフラットな状態にすること。でこぼこがあると寝られないので、100円ショップで売っているような板であればなんでもいいので、空間を埋めてから布団を敷きます」とアドバイスします。

 

山﨑さんは、運転席や助手席は狭いことから推奨はしていませんが、足元に段ボールを入れることで
フラットな状態を作れると説明しています。

車中泊で避難する人 支援に課題

 

一方、車中泊をする人たちへの支援の難しさが大きな課題となっています。能登半島地震では避難所の駐車場だけでなく、被災した住宅の近くで寝泊まりする人もいて、要支援者の把握が困難となりました。

こうした事態に備えようと、県内の自治体も対策を始めています。
人口3万の香南市です。

香南市では市内にある25の指定避難所のうち3か所におよそ120台分の車中泊のスペースを設けています。
車中泊で避難するには、寝るときに積んでいる荷物を外に出す必要があり、2台分ほどの駐車スペースが求められます。
香南市ではパチンコ店などの協力を得て駐車場の確保を進めていて今後も増やしていく方針です。

香南市が予定している車中泊の避難スペース

また、指定の駐車場を集約できれば、要支援者をサポートする保健師の効率的な巡回体制が構築できると期待しています。

香南市防災対策課の西内信考係長は「車中泊に一定のニーズは間違いなくあると思います。実際に助かった命を次につなげるという部分で配慮が必要」と話しています。

車中泊推奨しない自治体も多いが…

エコノミークラス症候群などで体調が悪化するおそれがあることから、車中泊を推奨していない自治体もまだまだ多いのが現状です。

ただ、たび重なる大災害を受けて車中泊が避難の選択肢として広がっている中、実情に即して対応していく時期に来ています。

高知防災プロジェクトの山﨑さんは「現実的には車中泊を選択する方が多いので、知らないではなくて、きちんと避難所として完備して、支援をしていくことでエコノミークラス症候群のリスクを減らすことができる。避難者ニーズに応えた避難所のあり方として、車中泊避難所も選択肢の1つとしてやらなくてはいけない」と話していました。

車中泊には注意が必要

災害時の車中泊ですが、健康被害が起きないよう注意が必要です。

エコノミークラス症候群の対策として挙げられているものです。
▽足を伸ばして寝られるよう座席をフラットにする。
▽足の指を3分ぐらい動かすなどときどき軽い体操やストレッチを行う。
それに
▽こまめな水分補給です。

また、季節にもよりますが、
▽冷暖房を活用して低体温症や熱中症に注意することなどが大切になります。
このほか
▽血流を改善するための「弾性ストッキング」の着用も勧められています。

新型コロナの流行もあって、感染症への警戒感やプライバシーの観点などから車中泊を選択するという人も増えてきましたが、正しい知識が必要です。

過去には車中泊で体調を崩して亡くなる「災害関連死」も起きています。住んでいる自治体に車中泊の
避難スペースがあるかも含めて、災害が来る前から事前に情報を得ておくことが大事です。

  • 益野 美咲

    記者

    益野 美咲

    銀行員・新聞記者を経て2023年に入局。学生時代には熊本地震でボランティアを経験。その際も車中泊の多さを目の当たりにした。

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