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高知の人ってなんでこんなに日本酒を飲むの?

  • 2023年10月06日

私が高知に赴任して1年。当初驚いたのが、高知県独特の酒文化でした。
献杯・返杯はコロナ禍で見かけなかったものの、べく杯、おきゃく…お酒をたくさん飲む文化が根づいていて、とにかくお酒が大好きな県という印象が強かったです。
今回は、そんな「お酒」についてリサーチしてきました。
 (高知放送局ディレクター 澤木里奈)

「高知県民と酒」のイメージ

県外の人に聞くと…

酒豪が多いイメージ
お酒が飲めないと出世できないと聞いたことがある

飲み会行ったら
酔い潰れるまで帰してもらえないというイメージ

高知県民は…?

お酒はなくてはならないもの
そのくらい好き

みんなで楽しくお酒を飲む空気感が好き
だから宴会が好きなのかなと思う

実際に、こんなデータも! 
外食のうち、飲酒にかける費用は東京に次いで2位でした。

このように、酒を愛する高知の人々。
 県内外の人にさらに聞き込みを行うと、日本酒のイメージが強いとの声が多かったです。

高知の人は辛口の日本酒が好き?

そこで、まず訪ねたのは、江戸時代から続く酒造会社の社長で、酒造組合の理事長を務める竹村昭彦さん。

竹村さん

昔から飲まれているといったらそりゃ日本酒です

ディレクター

高知の日本酒の特徴はありますか?

竹村さん

いちばんの特徴は辛口です
全国のデータを見ると、高知の酒はあらゆる分野でだいたいトップクラスの
辛口なんです

こちらは販売されている日本酒が甘口か辛口かを都道府県別に示した図。 
高知県は全国でも屈指の辛口好みであることが分かります。

専門家に聞く!そもそも辛口って?

日本酒の甘さや辛さの基準を定める酒類総合研究所の藤田晃子さんに伺いました。

藤田さん

日本酒の辛口というのは唐辛子みたいな辛さではないんです

ディレクター

では、辛口は何が基準で決まるのでしょうか?

藤田さん

酸と糖分のバランスで決まります

酸と糖分のバランスとはどういうことなのか?
下の図は、日本酒の醸造で起こる反応です。
米のデンプンからできたグルコース(糖分)が酵母の作用で発酵し、エタノールと酸が生まれます。

このグルコースと酸のバランスによって甘口か辛口かが決まるというのです。

甘い、辛いの基準となる式
藤田さん

基本的には、グルコースが少ないのが辛口
 同じ糖分でも酸が多いと辛く感じますし、酸が少ないと甘く感じます

藤田さん

辛口というのはさっぱりして、キレのあるというイメージです

なぜ高知で辛口が好まれるのか?

ヒントをくれたのは、辛口の日本酒を主に造っている酒造会社の久武宣興さん 。
出荷する際に、商品の味見をする重要な役割を担っています。

久武さん

高知のお酒の飲み方として昔からおきゃく文化があります。
そこでは必ずお酒をたくさん飲むんです。

ディレクター

「おきゃく」は高知の宴会のことですよね

久武さん

高知県民はおきゃくが大好きな人が多いんです。
お酒をたくさん飲むためには、辛口で飲みやすいすっきりしたお酒がいる
ということで高知県には辛口文化が根づいたと思います。

ディレクター

ほかにも辛口が好まれる理由はありますか?

久武さん

魚介類と日本酒の相性ってすごくいいんです
高知にはカツオがありますし、新鮮な食材がたくさん手に入りますので、そういった素材を生かした料理に辛口のお酒がばっちり合います。

新鮮な魚と辛口の日本酒はおきゃくの定番

なぜ、新鮮な魚に日本酒が合うのか?

教えてくれたのは、高知大学で講師を務める小﨑大輔さん。
日本酒の成分を分析し、様々な味を生み出す研究を行っています。

小﨑さん

日本酒に含まれる酸が、生臭さの原因物質になっているトリメチルアミンという物質を匂わなくするという効果があるんです。

ディレクター

つまり、辛口の高知の日本酒は
生臭さを消す効果が強いということですね

小﨑さん

加えて、高知県は辛口が作りやすい環境だったというのも理由のひとつだと思います。

小﨑さん

暖かい地域では日本酒を発酵させるときに酵母が酸を出しやすいので、辛口のお酒を作りやすいんです。
高知県の温暖な気候で作られた辛口の日本酒と、高知で取れる海産物がマッチしたからではないかと思います。

ということで、今回の調査の結果です。
「気候的に作りやすかった辛口の日本酒が、新鮮な魚と相性がよく、すっきりしていて飲みやすかったから、たくさん飲むようになった」ということが分かりました。

取材後記

取材する中で、「辛口」が特徴の高知県に異変が起こっていることが分かりました。
高知県産の酵母で、甘口の酒を作り出す「CEL-24」。この酵母を使った日本酒が今人気を高めているんです。
高知県工業技術センターによると、 高知県の酒造会社18社のうち、CEL-24を使って甘口のお酒を造っているのは11社。5年前は1、2社だったのが、近年大幅に増えているといいます。 
高知市内ではインドカレーに日本酒を合わせる店もあり、 食文化が多様化していくとお酒の楽しみ方も変化していくのだと感じました。

  • 澤木 里奈

    高知放送局 ディレクター

    澤木 里奈

    2020年入局。昨年8月に高知局へ。
    高知に来て日本酒が大好きになりました。

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