どうやって作られる?植物標本
- 2023年06月14日
連続テレビ小説『らんまん』で、主人公の万太郎が大切にしていた植物の標本。実際にどのように作られているのか、高知市の県立牧野植物園で取材しました。
(高知放送局 リポーター 五十嵐優衣)
県立牧野植物園の標本庫
高知市の県立牧野植物園にある標本庫です。こちらでは植物標本の所蔵や研究が行われています。
ここには牧野富太郎博士が集めた標本を含む、国内外の標本およそ34万点が厳重に保管されています。
県立牧野植物園の藤川和美研究員です。世界各地で植物を採集し、自らも標本を作り研究に携わっています。
藤川 和美 研究員
「これらの資料は植物分類学の研究に使われます。例えば、ある“種”の名前を付けるときに必ず1点、この名前に対してこの植物、という証拠を残さなくてはいけません。それを植物標本として残します」
植物標本は乾燥させ平面化したものが一般的です。押し葉標本とも呼ばれ、学術的にはもちろん、利便性や収納性にもすぐれています。
牧野富太郎博士の標本
こちらは今から100年以上前に牧野博士がつくった、ソメイヨシノの標本です。
博士の標本にはどんな特徴があるのでしょうか。
藤川 和美 研究員
「牧野博士の標本はあらゆる情報を網羅的に入れているところが特徴です。よく花が開いているものから花が散っている部分の枝まで、よく咲いている枝だけをとるのではなくつぼみの状態も合わせて採集しているのが特徴です」
標本はどうやって作られる?
このような標本がどのようにして作られるのか、その工程を見せてもらいました。
香南市で採集されたシダの一種、イシカグマの標本作りを見ていきます。採集した植物は吸水性が高い新聞紙に挟み乾燥機で2、3日かけて乾燥させます。
専用の機械とテープを使い台紙に固定していきます。乾燥した植物は非常に壊れやすいため、細心の注意が必要です。
藤川 和美 研究員
「シダの植物だったら胞子がしっかりと見えるように、花が咲く植物だったら花がよく見えるように、という点に注意して台紙に張り付けていきます」
時には糸で台紙に縫うことも。こうすることで、厚みのある部分もしっかりと固定され、頑丈な標本に仕上がるということです。研究者が使いやすく、かつ壊れにくい標本になるように意識しているそうです。
そして重要なのが、標本に添えられるラベル。このラベルがあって初めて研究資料として活用することができます。ラベルには採集した場所やその環境、標本にすると消えてしまう、色や草丈など詳細な情報が記入されます。
半永久的に保管するために
これで完成かと思いきや・・・。
藤川 和美 研究員
「これから半永久的に保存するために、1つ作業があります」
そう言って見せてくれたのは大きな冷凍庫です。
藤川 和美 研究員
「マイナス30度の冷凍庫に入れて、標本に今いるかもしれない虫を殺したり、もしかすると卵があるかもしれないので、ふ化しないようにすべて殺虫していきます」
標本にとって虫食いは致命的。薬剤をできるだけ使わずに管理するために、この作業は必要不可欠です。
手間暇かけて丁寧に作られた標本は、温度や湿度が管理された標本庫で半永久的に保管され、研究に使われます。
藤川 和美 研究員
「標本は作っておしまいではなくて、多くの人の研究に使われながらその形を残していくものです。当時ここに生えていた植物、その証としてしっかりと残していきたいです」