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『らんまん』舞台の酒造りの町を歩く

牧野富太郎博士を育んだ高知の城下町とは
  • 2023年04月03日

いよいよ始まった朝ドラ『らんまん』。主人公のモデルになっているのが、高知出身の植物学者・牧野富太郎博士です。酒造りで知られる牧野博士のふるさとを、地元局からご紹介します。
(高知放送局 記者 田中開)

牧野博士のふるさと佐川町とは

高知県中西部に位置する佐川町、高知空港から車で西におよそ50分の町です。
『らんまん』主人公の槙野万太郎のモデルとなっている、日本を代表する植物学者・牧野富太郎博士のふるさとで、幕末から明治にかけて多くの歴史的な人物を輩出した町としても知られています。

写真はその中心部を、山に咲く四季折々の植物が楽しめる「牧野公園」から見下ろしたもの。
右手奥にはJR土讃線の単線が見えるほか、きれいに整備されたのどかな町並みが一望できます。

佐川町について教えてくれたのは、地元の観光協会につとめる山﨑正和さん。『らんまん』の効果で早くも観光客が増えつつある町の観光案内などを担当しています。

山﨑正和さん
「高知県は江戸時代、土佐藩といって山内家という大名が治めていました。その筆頭家老・深尾家が領地としたのが佐川町です。代々非常に力のあった家老で、教育や商業振興にも力を入れたことから、幕末から明治にかけて人材を輩出する素地を作ったとされています」

深尾家が力を入れた商業振興の要が、酒造りだったといいます。
日本酒で佐川領を発展させようと、いまの静岡県から職人を呼んできて、領内で酒造りを始めたことがきっかけで、多いときで9つの酒蔵が集まる日本酒の一大産地となりました。

酒蔵があった場所には地面に屋号のプレートが埋め込まれている

山﨑正和さん
「牧野博士の生家もそのひとつで『岸屋』という屋号でした。ドラマでは『峰屋』として登場していますが、幼少期から好奇心が旺盛だった博士は、番頭が持っていた懐中時計を分解してしまい、細かな部品もひとつひとつ書き写したという驚きのエピソードも残っています。後年、精巧な筆致で植物図の名手と言われた牧野博士の原点とも言える逸話ですよね」

牧野博士の生家「岸屋」いまは

牧野博士の生家「岸屋」の跡地には、いま「牧野富太郎ふるさと館」という資料館ができています。牧野博士が住んでいた頃の様子を再現していて、玄関上には大きく「岸家」と書かれた看板があります。
牧野博士は字を右肩上がりに書く癖があったそうで、その癖も再現しているのだとか。

山﨑正和さん
「再現された建物は日本酒を売ったりするお客さん対応のスペースのみですが、このほかにも母屋など数棟が立ち並んでいたそうです。当時の岸屋が大きな造り酒屋だったことが伺えますね」

実際に岸屋の酒を造っていた酒蔵は少し離れた場所にあります。建物の老朽化や台風の影響ですでに取り壊され、いまは駐車場として使われていますが、かつては道沿いに立派な白壁が続いたそうです。

酒蔵があった場所は駐車場に

「岸屋」は明治時代になると経営が傾き、別の酒蔵に統合されることになりますが、その後、佐川町にあった酒蔵は次々に統合され、いまでは1つにまとまっています。酒造りが盛んに行われる冬の時期は、町を歩くだけで日本酒の香りが漂い、古くからの町並みが残ることもあって、観光スポットとしても親しまれています。

酒蔵の白壁が続く町並みが観光客にも人気

いまも残る牧野博士の息吹

植物採集中の牧野博士(高知県立牧野植物園提供)

佐川町に残っている牧野博士の息吹は、日本酒に関することだけではありません。
牧野博士は94年の生涯で40万枚以上の膨大な植物標本を収集し、1500種以上に及ぶ植物に学名をつけたことで知られていて、日本の植物学の父とも評されます。

そんな牧野博士が好んだのが桜です。博士は明治35年、当時住んでいた東京からソメイヨシノの苗を佐川町に送り、地元の人たちが寺の土手などに植えたそうです。その後、佐川町は高知を代表する桜の名所として知られるようになり、毎年春には桜祭りが開かれています。

地元では「はなもりC-LOVE(くらぶ)」という有志の団体が1年を通して牧野公園や沿道の植物を整備していて、桜だけでなく、牧野博士が愛した四季折々の植物を楽しむことができます。

山﨑正和さん
「牧野博士の意志をついで、佐川町では町全体を植物園に見立てて植物を育む『町まるごと植物園』という取り組みを、地元の小中学校とも連携して進めています。また町中には江戸時代後期の町並みがコンパクトに残っていて、町歩きとしても勝手が良いことが特長です。『らんまん』をきっかけに、家族や友人で訪れていただき、好奇心旺盛だった牧野博士が幼少時代にどんな風景に触れながら生活していたのか、想像しながら散策してもらいたいです」

佐川町は『らんまん』のロケ地としても使われています。私も、古くからの佐川町の町並みがどう描かれているかにも注目しながら、放送を楽しみたいと思います。

  • 田中開

    高知放送局 記者

    田中開

    2018年入局
    博士ゆかりの佐川町に毎週のように通う
    牧野公園の物見岩から町を眺めるのが好きです

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