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クマは関門海峡を渡るのか

万が一のクマとの遭遇に備える
  • 2023年12月21日

 

全国で相次ぐクマによる被害。東北地方を中心に、クマに襲われて命を落としたり、けがを負ったりした人もいます。日本には北海道から本州にかけて広く生息していますが、本州最西端の山口県に近接している福岡県北九州市でもクマへの関心が高まっています。はたしてクマは関門海峡を渡る可能性はあるのでしょうか。

(北九州放送局記者・財前祐里香)

野生のクマは九州では絶滅

クマは九州でも動物園で見ることができますが、九州の野生のクマについては、環境省が絶滅したとしています。

山口県内で捕獲された野生のクマ(動画提供:視聴者)

関門海峡を挟んだ隣県の山口県では、ことし11月10日までにクマの目撃情報が県全体で156件にのぼっていて、相次ぐクマの目撃情報に自治体だけでなく、警察も警戒感を強めています。

山口県警察のホームページ

山口県警はクマの目撃情報があった場所を地図で確認できるようにした「YPくまっぷ」という、独自のマップを作成して10月下旬から公開しています。

赤い印を選択すると、情報の詳細を確認することができます。

北九州市から関門海峡を挟んだ山口県下関市でもクマの目撃情報があり、この詳しい情報も確認できます。

クマが海峡を渡る可能性は?

関門海峡は狭いところで約600メートル。クマが渡ってくる可能性はあるのでしょうか。動物に詳しい福岡市動物園の安河内清文さんに伺いました。クマが渡ってくると予想される主なルートは①関門海峡②関門トンネル、それに③関門橋の3つ。
 
 

安河内さん

可能性としてあるのは①海を渡ってくる場合です。ですが、関門海峡は潮の流れが速いうえに船の往来も多く、対岸(門司港)にはエサ場がないとなると、あんまり行きたいとは思わないですね。

安河内さんによりますと、クマは泳ぎが得意だということで、北海道・利尻島ではかつて、ヒグマが北海道から泳いで渡ったことが確認されています。

安河内さん

②トンネルとか③橋になると、もうこの先に何があるのかクマはわからない状態になるので、そういうところにはほぼ行かないはずです。

特に「橋を渡る」という行為は、動物にとっては宙を歩く状態に近いことから、怖くて渡る可能性は少ないといいます。 
 

安河内さんの話によりますと、
山口県側から九州にクマが渡ってくる可能性は低いと思われます。

北九州でもクマについて関心高まる

しかし、九州の人たちもクマへの注目度や警戒感は高まっています。北九州市小倉北区のアウトドア用品店を訪ねました。

大きさや音色の違うクマよけの鈴

店内にはクマよけの鈴やホイッスルなどが並んでいました。アウトドア用品店の北本直己店長によりますと、これらの売り上げは昨年のおよそ3~4倍に伸びているといいます。さらに、クマと接近してしまった時に噴射するスプレーは、全国の店舗で完売しているということです。(10月17日現在)

クマよけの鈴は音色が異なる数種類取りそろえられていて、音の高低で使い分けることができるといいます。

北本店長

低い音が遠くまで聞こえるんですが、クマが嫌がる音は高い音ですね。

コロナ禍が終わり、人の動きが活発になってくるなかで、登山やハイキングなど行楽を楽しむ人が増えていて、万が一のクマとの遭遇に備えて対策グッズを求める人も多いということです。 

北本店長

最近はSNSとか登山のアプリとかで『きのう出た』とか『数日前に見ました』とか、情報がタイムリーに入ってきますので、
それで急きょ買いに来られる方とかも増えているなという印象です。

取材をしてみて

全国で相次ぐクマ被害の情報に接して、クマが九州に入り込む可能性について取材をしました。専門家によりますと、人為的に持ち込む以外は、その可能性は低いとみられています。また、たとえ人為的に持ち込まれたとしても、えさの確保や繁殖の観点から定着は難しいということです。
九州には野生のクマはいませんが、九州在住の人もクマが生息している北海道や本州で登山や自然散策などを楽しむ機会があると思います。その際には十分な注意とクマ対策が不可欠です。クマと人の遭遇を回避でき、人的な被害などがなくなることを願っています。

  • 財前祐里香

    NHK北九州放送局 記者

    財前祐里香

    北九州放送局記者。ふだんは北九州市政を取材。
    北海道旅行とネイチャートレイル散策が趣味。これを機にクマよけグッズを購入しました。

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