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小倉昭和館が再建 旦過市場火災から1年4か月

街の小さな映画館“みんなの居場所に”
  • 2023年12月20日

去年8月、旦過市場で起きた2度目の火災で「小倉昭和館」が全焼。誰もがその知らせに驚き、悲しみました。「何も考えられなかった」という館主の樋口智巳さんでしたが、多くの映画ファンらの後押しを受けて再建を決意。同じ場所で映画館を建て直しました。火災から1年4か月後の2023年12月、再び映写機が回り始めました。
(北九州放送局 大倉美智子)

小倉の街の銀幕が復活

2023年12月8日撮影

2023年12月8日午前10時。「小倉昭和館」を訪れると、上映の再開を心待ちにしていた映画ファンらが列をなしていました。「待っていたよ」「よかったね」口々に声をかけられる館主の樋口智巳さん。目に涙を浮かべ、話し出しました。

どれくらいぶりでしょう。また皆さんをお迎えできることが本当に幸せです。お待たせしました、どうぞお入りください。

プレオープンセレモニー

12月8日と9日はプレオープン。
抽せんで選ばれた計200人を招待し、セレモニーのあと、映画が上映されました。

「小倉昭和館」館主 樋口智巳さん

(樋口さん)
街の小さな小さな映画館がゼロからスタートです。すべてを失いました、すべてが焼けてしまいました。その中で、こうやって立ち上がりこの短期間にこれだけのものができる。本当に皆様のご支援、応援のおかげです。火災の前の83年に負けないようにさらにさらに年を重ねていきたいと思います。この場所は、皆様の映画館であり皆様の居場所です。

火災ですべてを失った小倉昭和館

2022年8月10日撮影

昭和14年に創業した「小倉昭和館」。映画館兼芝居小屋として樋口さんの祖父が創業しました。経営難で存続が危ぶまれた時期もありましたが、映画人を招いたり、客のリクエストに応えてフィルムでのみ残された過去の作品を上映したりして、多くの映画ファンに愛されてきました。
そんな映画館を、2022年8月10日、火の手が襲いました。

「小倉昭和館」に隣接する旦過市場で起きた大規模火災。この年の4月に起きた1度目の火災では、すんでのところで延焼を免れました。しかし、8月の2度目の火災は、小倉昭和館を飲み込みました。35ミリフィルムの映写機や保管していた貴重なフィルム、俳優の高倉健さんからの手紙…すべてが燃え尽くされ、シンボルだったネオン看板だけが残りました。

映画ファンらの後押しで再建へ

当時、再建は難しいと感じていた樋口さん。火災直後には、映画が見放題の「シネマパスポート」やイベントの前売り券の返金を行い、長年支えてくれたファンたちに感謝の気持ちを伝えました。

この先どうすればよいのか、樋口さんが方針を決められずにいるなか、再建を願う声は高まっていきます。市民グループが募った、再建に向けて市に支援を求める署名も広がっていきました。
映画ファンの後押しを受けて、樋口さんは、再建を決意。その後実施したクラウドファンディングには、約4000万円の寄付金が集まりました。そして火災から1年4か月。旦過市場の入り口から60メートル余り離れた路地を入った元の場所に、新しい看板が掛かった小倉昭和館が完成しました。

映画ファン

お帰りなさいって感じです。火災が起きたときは本当に悲しくて、復活して本当によかったです。

映画ファン

映画が斜陽のときに、単純に無責任に応援していいものだろうかとも思いましたが、きょうは本当にうれしいです。

「小倉昭和館」は“みんなの居場所”

2023年12月8日撮影

新しい映画館は、以前は2つあったスクリーンを1つにして、座席数は134席と規模を縮小しました。座席には、リリー・フランキーさんや光石研さんなど、小倉昭和館を応援する俳優や映画監督らの40人の名前が刺しゅうされています。
プレオープンに訪れた招待客の1人も、お目当てのシートがあると話しました。

ロックバンドの「シーナ&ロケッツ」の鮎川誠さんの座席に座るのが楽しみです。4列7番、シーナさんのゴロ合わせです!

ロビーには焼け残ったかつてのシンボルのネオン看板を設置。観客以外でも自由に立ち寄ってくつろげるスペースも設けました。

映画館の心臓部となる映写室には、デジタル用の映写機1台と35ミリフィルム用の映写機2台が備わります。火災前と同じように、デジタル化される前のフィルムの映画も上映することができます。

(樋口さん)
35ミリのフィルムを上映できる劇場は、北九州はうちだけだったのでどうしても残したかったんです。お客さんがどんな思いで見てくださるかと思うとそちらの方がワクワクしています。

再出発の最初の上映に選んだ映画は、不朽の名作「ニュー・シネマ・パラダイス」。イタリアの小さな村で、火災のあとに再建された映画館をめぐる物語に自身を重ね合わせました。

(樋口さん)
大きな映画館が閉館する時代。街の小さな映画館が経営を続けていくってことは至難の業だと思うんです。でも、火災の時はお客様がボールを投げてくださったんです。“再建してほしい”“やろうよ”とそれを私はしっかり受け止めました。しっかり受け止めてそしてまた皆様と一緒に走り出します。映画を上映するだけでなく皆様の居心地のいい居場所としての映画館を目指します。

ことし創業84年の「小倉昭和館」。12月19日に本格的に営業を再開し、新たな歴史を刻み始めました。

  • 大倉美智子

    北九州放送局・記者

    大倉美智子

    子育て中を言い訳に映画館から足が遠のいていましたが、取材をきっかけに映画館に行きたくなりました。好きな映画は「ショーシャンクの空に」と「サッド・ヴァケイション」です。

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