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JR貨物の新たな物流戦略

~2024年問題に対応へ~
  • 2023年12月20日

【2024年問題と鉄道輸送】

 

 JR貨物は張り巡らされた鉄道網と専用車両を使って、昼夜を問わず北海道から九州まで貨物輸送を行っています。

 

北九州貨物ターミナル駅

 北九州市門司区にある貨物ターミナル駅は、九州で唯一、24時間運用が行われていて、取扱量は全国におよそ140か所あるコンテナを扱う駅のうち7番目に多くなっています。

 

説明会

 ことし年10月、JR貨物は企業や荷主の業者などを対象に鉄道輸送の利点を紹介する説明会を開きました。

①大量輸送が可能
 貨物列車1編成で最大で、大型の10トントラック65台分の荷物を輸送できる。また、場所によってはトラックよりも速く運べる。

②長距離輸送ではトラックで運ぶよりもコストが割安になる場合がある
 さらに、2024年問題の影響で、トラックドライバーの勤務時間が短くなる影響で、これまでと同じ距離を輸送する場合はドライバーを増やすなどの対応を迫られるため、人件費が増えるなどしてコストが増加。

 そもそも鉄道輸送はあまり知られておらず、「大きな企業でないと使えない」「多くの荷物を運ばないと使用できない」などと誤解されているということです。
 JR貨物は説明会をきっかけに鉄道輸送について知ってもらい、2024年問題によって荷物が消費者に届かなくなるという事態を防ぎたいとしています。

 

JR貨物
但野新二
九州支社長

鉄道輸送はトラックと比べてコストがかかる場合もありますが、引き続きPRして利用を促して2024年問題に取り組んでいきたいです。

【JR貨物の戦略】

 

31フィートコンテナ

 JR貨物が今、力を入れているのは、「31フィートコンテナ」という大型コンテナの投入です。現在、JR貨物が主に使用しているコンテナは荷物の積み降ろし場所が狭い会社でも利用できる小型の「12フィートコンテナ」。「31フィートコンテナ」はトラック輸送でよく使われている大型の10トントラックと同じサイズで、「31フィートコンテナ」を使えば、大型トラックから荷物の中身を積み替えずに貨車にそのまま乗せることが可能という利点もあります。「31フィートコンテナ」が増えれば、トラック輸送が難しくなる中でもスムーズに貨物鉄道に切り替えられるようになることが期待されるのです。JR貨物はこの大型コンテナを2025年までに全国で1割余り増やす方針です。

 

JR貨物九州支社
八木清志
営業部長

貨物鉄道とトラックは今まで競争する関係にありました。ただ、2024年問題が迫る中で、競争ではなくて一緒に日本の物流を支えていく必要があるので協力していきたいと思っています。

 この鉄道輸送への切り替えを検討する業者も出始めています。北九州市八幡西区で包装資材を製造している会社は取引先が全国各地に及ぶため、2024年問題でトラックによる輸送コストが高くなると考えています。この会社では、鉄道輸送を利用した方が輸送費が安くなったり、これまでよりも到着が早くなったりすることに期待を寄せていて、今後、本格的な利用を検討しているということです。

包装資材の製造会社
企業担当者

せっかく北九州で作って全国に向けて出荷している物が2024年問題で運べなくなってしまうというのは非常に悔しいし残念ですので、鉄道によるコンテナ輸送に期待しています。

JR貨物九州支社
大江献悟
北九州営業所長

2024年問題というきっかけで鉄道コンテナ輸送というものを知っていただき、輸送手段の1つに加えていただきたいです。

 

【課題も】

 一方で、鉄道特有のリスクについて懸念する声も上がっています。それは、災害などで線路が寸断されて運べなくなるリスクです。

 

流失した線路

 平成30年の西日本豪雨では中国地方の山陽本線が3か月以上にわたって通れなくなりました。この影響で、JR貨物はう回運転を行ったほか、船会社などに依頼して代行輸送を行いました。代行輸送では到着時間が遅れ、運べる量も少なくなってしまいます。

 

完成予想図

 この対策として、JR貨物は災害時にもスムーズに物流を担う観点から物流会社と共同で輸送船を建造することにしました。鉄道会社が船を持つという意外な手段に出たわけです。これは、これまでの代替輸送では船を別の会社から借りる必要がありどうしても代行輸送を始めるまでに時間がかかってしまっていたことから、自分で船を持つことで、この時間を短縮することを目指しています。すでに輸送船の建造に着手していて2024年の春には完成する予定だということです。

【取材後記】

 取材を通して、2024年問題によってトラックでは運べなくなる荷物を減らすために鉄道輸送に期待がかかっていることを実感しました。トラック輸送の代替手段となるのは鉄道輸送だけでなく、フェリーや航空機も同じでそれぞれの業界が知恵を出し合ってこの問題に対応しています。
 ただ、2024年問題を巡っては実際にどのような影響が出てくるのかを正確に予想することは困難で、行政も企業も手探りの状態が続いているのが現状です。私たちの生活に大きく関わるこの問題。今後も取材を続けていきます。

 

  • 伊藤直哉

    北九州局 記者

    伊藤直哉

    2017年入局。山口局を経て2022年から北九州放送局。どこまでも続く線路をひた走る貨物鉄道にロマンを感じます。

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