【特集】夏場に気になる汗 多汗症・あせも・においの原因や治療法、ケアについて

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【特集】夏場に気になる汗 多汗症・あせも・においの原因や治療法、ケアについて

汗のにおいが夏は特に気になるという方必見。においを自分で確認する方法や、セルフケアについて紹介。また、多汗症やあせもに悩まされている方も多いのではないでしょうか。それぞれの症状や原因、治療法などについて詳しく解説します。

汗はどこから出る?

わきがの臭いの原因

汗は、皮膚にある汗腺から出ます。汗腺には「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2つがあります。エクリン汗腺は体全体にありますが、アポクリン汗腺はわき、耳、乳輪、外陰部など限られた場所にしかありません。
エクリン汗腺から出る汗は「多汗症」や「あせも」の原因になり、アポクリン汗腺から出てきた汗は、「わきが」の独特のニオイの原因になります。



多汗症

多汗症とは

多汗症が出やすい場所

多汗症はほぼ全身にある「エクリン汗腺」から出る、さらさらな汗が原因になります。
暑さとは関係なく、日常生活で困るほど多くの汗をかくのが多汗症です。
人のエクリン汗腺の数は約200万~500万、大きさも個人差はありません。多汗症の人は、1つの汗腺から出る汗の量が多く、また、働く汗腺の割合が多いことがわかっています。はっきりした原因はわかっていませんが、多汗症の場合、多くは緊張や不安、恐怖といった精神的なストレスなどの刺激により汗が出ます。

悩む人が一番多い部位はわきですが、他に手足や頭部、顔面などにも現れます。部位によって発症する時期が異なり、手足は低年齢から、わきは思春期になったころ、頭部や顔面は成人してからが多くなっています。

多汗症によって困ることは、汗のせいで授業のノートがとれない、携帯電話やパソコンが不具合を起こす、汗染みが気になり気に入った服を選べない、対面の仕事がしづらい、親しい人間関係を作りづらいなど、多岐に渡ります。恥ずかしさから周囲に言えず、悩んでいるという人も多くいます。

多汗症の診断基準

多汗症の診断基準

多汗症の治療をするかどうかの目安は、「日常生活に支障をきたしているか」で判断すると良いでしょう。汗をたくさんかいていても、困っていない場合は治療する必要はありません。診断基準としては、まず原因不明の過剰な発汗が手や足、わき、顔、頭などの局所のどこかに6か月以上続いていること。さらに、次の6項目のうち2項目以上を満たすものとされています。

①発症が25歳以下
②汗が左右同じくらい出る
③睡眠中は汗が止まる
④家族歴がある
⑤週1回以上汗で困ることがある
⑥日常生活に支障をきたすことがある

これらに当てはまり、治療を希望する場合は、皮膚科を受診するとよいでしょう。

多汗症の治療

多汗症の治療は、悩んでいる部位ごとにいくつかの選択肢があります。

手足の多汗症の場合

手足の場合、治療の最初に使われることが多いのは「塩化アルミニウム製剤」です。数日かけて皮膚の表面に塗り、角質の外側に蓋を作って汗を閉じ込めます。ただ、およそ半分に肌がかぶれる副作用があるため、どうしても汗をかきたくないとき、例えば学校の試験や会社の面接などのときに事前に使うようにするのも良いでしょう。

その他に「水道水イオントフォレーシス」「ボツリヌス毒素製剤」「抗コリン薬の内服薬」などがあります。「水道水イオントフォレーシス」は、水道水を入れた容器に手や足を入れ、専用の機器から微量の電気を流す方法です。この電流によって生じた水素イオンが汗腺の働きを低下させ、だんだん汗の量が減ってきます。

これらの方法で効果が見られない場合は、「ボツリヌス毒素製剤」を注射する治療法もあります。交感神経から汗を出すための指令を与えるアセチルコリンが放出さえるのを抑える働きがあります。

「抗コリン薬」は、アセチルコリンが汗腺に届くのを妨げることで、発汗量を減らします。副作用が比較的少ないのですが、夏に汗を止めると熱中症の危険も出てくるため、使用の際は医師とよく相談することをお勧めします。

さらに他の方法が効かないほど、重度の場合は、最後の手段として交感神経自体を遮断するという手術もあります。効果は期待できますが、神経を切るため、他の場所から大量の汗がでてくる「代償性発汗」という症状が起こります。安易に行わず、事前に充分に医師と相談する必要があります。

わきの多汗症の場合

わきの多汗症の場合の治療
ボツリヌス毒素製剤の注射

わきの多汗症の場合も手足と同様の治療法がありますが、ボツリヌス毒素製剤の注射に関しては、わきの多汗症で「日常生活に頻繁に支障がでるほどの大量の汗が出る場合」に限り、保険が適用されます。

さらに、世界に先駆けた外用薬として、2020年に保険適用で抗コリン薬の塗り薬、2022年にはシート状のものも発売されました。のみ薬に比べて副作用のリスクが少なく、外用した部分にのみ作用する薬剤になるため、大きな選択肢となっています。

頭部や顔面の多汗症の場合の治療法は、塩化アルミニウム製剤を使うか、抗コリン薬を内服、あるいは自費でボツリヌス毒素製剤を投与するという方法になります。

多汗症について詳しくはこちら



あせも

あせもとは

あせもは、正式には汗疹(かんしん)といい、子どもの皮膚の病気と考えられがちです。しかし、汗をかきやすい夏には、大人のあせもも少なくありません。たくさん汗をかいて、長時間そのままの状態が続くと、あかやほこりなどでエクリン汗腺の出口が塞がり、汗を排出できなくなります。その結果、汗が体外ではなくエクリン汗腺から真皮に漏れ出て、炎症が起こって赤い湿疹ができ、かゆみが現れます。これが、あせもです。

かゆみを我慢できずにあせもをかいてしまった傷から、細菌が侵入すると重症化し、"とびひ"と呼ばれる伝染性膿痂疹(のうかしん)が起こることがあります。

あせもができやすい人

あせもができやすい人

肥満のある人は、皮下脂肪が多いために体内の熱が放出されにくく、肥満のない人に比べて多く汗をかいて、あせもができやすくなります。皮下脂肪が多いと、下腹部や脚の付け根、わきの下、首などで皮膚と皮膚が重なってこすれることで、エクリン汗腺が塞がりやすいからです。
また、女性で胸が大きい人や、垂れた形をしている人も、乳房と胸の皮膚の間に汗がたまってあせもが生じやすくなります。

高齢者の中には、エアコンを敬遠しがちな人も多いのですが、汗をかいたままにしていると、あせもができる場合があります。また、病気などでベッドに寝たまま1日の大半を過ごすような人の場合は、背中などの皮膚がベッドに密着したままになるため、あせもができやすくなります。

あせもの治療

家庭でできるあせもの治療

軽症の場合、こまめに入浴やシャワーなどで汗を洗い流し、皮膚を清潔に保つことで、あせもは基本的には自然に治ります。あせもがある部分を洗うときには、泡のボディソープや、せっけんを泡立てるネットなどを使ってつくった泡をつけた手で優しく洗うようにしましょう。入浴後は、皮膚をこすらないようにタオルを体に押し当て、水滴をとるようにして拭きます。

かゆみがある場合は、まず保冷剤や冷やしたタオルなどで冷やします。そのうえで、あせもの市販薬を使ってかゆみを緩和します。

あせもをかいてしまい伝染性膿痂疹が起こるなど、重症化した場合は、周りの人にうつしてしまうことを防ぐためにも、皮膚科で適切な治療を受けることが大切です。

あせもの予防について詳しくはこちら



汗のにおい

汗のにおいの原因

「エクリン汗腺」と「アポクリン汗腺」の2つの汗腺から出てきた汗は、皮膚の表面で「あか」や「皮脂」などと混じり合います。それを「皮膚常在菌」が分解することにより、ニオイが発生します。

自分でにおいを確認する方法

においを確認する方法

  1. 近しい人に確認
    家族など、遠慮なく本当のことを言ってくれる近しい人に聞いてみましょう。
  2. 袋に衣類を入れて確認
    1日着た洋服をファスナー付きの保存用の袋に5分間入れて、その後、自分でにおいを嗅いで確認します。この検査をする前は、無香料のシャンプーやボディソープで体を洗ってください。洋服も無香料の洗剤で洗います。
  3. 直接指で触って確認
    臭いと思うところを直接、指でこすってにおいを嗅いでみます。このチェックをするときは、お湯で手を洗ってから行ってください。そのときに石鹸は使わないようにしましょう。
  4. わきに挟んだガーゼで確認
    ガーゼをわきの下に直接挟んで、5分間待って、その後においを嗅いでみます。

体のにおいを軽減するセルフケアについてはこちら

わきがの臭い

わきがの臭いの原因

鼻をつくような独特の臭いを発する「わきが」は、日本人のおよそ1割の人が悩まされていると言います。わきがの原因は、特にアポクリン汗腺から出る汗が皮膚にいる常在菌によって分解されたことにより発生します。
わきがのある人はアポクリン汗腺の数が多く、大きさも大きいことが分かっています。
また、わきがは遺伝的要因が関係しているため、家族にわきがのある人がいると、わきがのある可能性が高くなります。わきがは「病気」というより「体質」だと言えます。

わきがのセルフチェック

自分がわきがかどうかを見分ける方法の一つとして、ガーゼテストがあります。
わきの下にガーゼを5分間程挟んでから、ガーゼの臭いを嗅いでみるという方法です。自分の臭いは分かりにくいこともあるので、家族などに嗅いでもらうのもよいでしょう。

もう一つは、耳垢から調べる方法です。わきがは湿性耳垢(耳垢が湿っている)の人の約8割にあると言われ、乾性耳垢の人にはみられないことが分かっています。

においのセルフケア

体のにおいを軽減するセルフケア

においが気になる場合の正しい対処法は、まず、基本は、足・わき・頭は入浴の際「よく洗う」ことです。足・わきは、シートで拭いたり、制汗スプレーを使ったりするのが効果的です。「わきが」が気になる人には、汗をかいても取れにくい粘着性の高い「わきが用のクリーム」などもあります。その他、服にニオイが残っている場合もあるので、衣類・靴をこまめに洗濯することも大切です。靴には、中敷きを入れて、こまめに交換することも有効です。

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