新型コロナ最新情報 オミクロン株対応ワクチン わかってきた重症化のメカニズム

更新日

熱があるせきがでるショック症状呼吸器

※この記事は2022年9月に作成したものです。

免疫逃避の性質を持つオミクロン株BA.2.75

現在の主流はオミクロン株BA.5ですが、国内ではあらたにBA.2.75が見つかっています。BA.2.75は、国内で2022年6月まで感染の中心となっていたオミクロン株のBA.2系統から分岐した変異ウイルスです。
感染やワクチンによって得られた免疫を回避する「免疫逃避」の性質を持っているとされていて、ウイルスの感染・伝播性が強いという特徴があります。その「感染の広がりやすさ」はBA.5の1.14倍と推定され、“BA.5以上”という分析結果や、細胞と結合する受容体の結合力が“BA.5よりも強い”という検討結果があります。しかし一方で、免疫から逃れる「免疫逃避」の程度は“BA.5ほど高くはない”という報告もあります。今後日本でBA.5からBA.2.75に流行株が移って大流行するのかどうか、注視していく必要があります。

記事『新型コロナ感染症 第7波 BA.5はどんなウイルス?対策は?』

新しく接種がはじまるオミクロン株対応ワクチン

2022年9月から接種がはじまるオミクロン株対応ワクチン
2価ワクチンの効果(ファイザーとモデルナ製)

オミクロン株対応ワクチンが2022年9月から日本でも接種可能になります。これまで使われてきた従来株とオミクロン株BA.1の2種類に対応する2価ワクチンです。初回接種(1回目・2回目)の完了した人は追加接種することができます。
このワクチンのオミクロン株BA.1に対する効果を調べたところ、ファイザー社の臨床試験では、平均1.56倍~1.97倍、モデルナ社の報告でも、平均して1.75倍、中和抗体の量が従来のワクチンより多くなっており、有効であることがわかっています。このワクチンは、現在流行しているBA.5対応のワクチンではありませんが、BA.5に対する中和抗体の値の上昇もみられたと報告されており、一定程度有効だと考えられています。

患者の33%に後遺症

新型コロナの後遺症で現れる症状

厚生労働省の研究班の報告によりますと、新型コロナに感染して1年後にも患者の33%が何らかの後遺症に悩まされている実態が明らかになっています。
症状は多い順に、けん怠感13%、呼吸困難9%、集中力の低下・筋力低下8%などです。後遺症の重症度にはばらつきがあり、例えば、けん怠感については「働けるが、けん怠感をしばしば感じる」という程度から、「身の回りのことができず、終日横になっている」という重症のものまで、さまざまです。

多くの場合は時間の経過とともに回復していきますが、長期間残存して日常生活に支障が出る場合もあります。後遺症の原因が判明している場合はその原因に対する治療を、そうでないものについては症状を緩和するような対症療法を行います。

重症化のサイン?「DOCK2」と「Myl9」

新型コロナの感染者などの遺伝子を分析した

画像:コロナ制圧タスクフォース
(参照:Namkoong, Edahiro, et al. Nature, 2022)

遺伝子や体の中のたんぱく質を調べて重症化のメカニズムを探る研究が進んでいます。
DOCK2(ドックツー)は免疫反応に重要な役割を果たすたんぱく質です。コロナ制圧タスクフォースでは、ゲノムワイド関連解析という手法で新型コロナの感染者などの遺伝子を分析しました。その結果、65歳未満の人ではDOCK2たんぱくを作る遺伝子の領域に変異があった場合、新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいことが明らかになりました。また、重症の患者は重症化しなかった患者に比べてこの遺伝子の発現が低下しており、新型コロナで亡くなった人の肺ではこの遺伝子が作るたんぱく質の量が減少していることもわかってきました。

つまり、DOCK2たんぱくが少ないほど、重症化している可能性が示唆されたのです。このことはハムスターを使った実験でも確認することができました。この研究成果を受けて、今後はDOCK2を調べることで重症化を予想したり、DOCK2を活性化する薬を開発すれば新たなコロナ治療薬になる可能性があります。

Myl9(ミルナイン)

画像:千葉大学 Hayashizaki et al.,Sci Immunol.,2016

Myl9(ミルナイン)とは体内で炎症がおきたときに血液中の血小板と呼ばれる細胞から産生され、血管の内側に付着して肺などの血栓を作るたんぱく質です。
千葉大学の研究グループが新型コロナで死亡した患者の肺の血管にできた血栓を調べたところ、Myl9が多く付着していることがわかりました。そして、新型コロナの入院患者の血液を調べたところ、このたんぱく質の濃度が通常よりも最大で40倍近く上昇していて、濃度と重症度、入院日数の間に相関関係があることがわかりました。今後、Myl9の濃度を測定することで新型コロナの重症化を予測できる可能性があります。また、血液中のこのたんぱく質を簡単に測定するキットの開発や、新しい治療の開発も期待されます。

【特集】新型コロナウイルス 知っておきたい基礎知識&いま、私たちにできること

この記事は以下の番組から作成しています

  • きょうの健康 放送
    ニュース 「新型コロナ最新情報」