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リサイクル率日本一の大崎町は世界の未来を作る町だった

  • 2023年06月09日

自治体として14回リサイクル率日本一を達成し、その取り組みが世界的に評価されている大崎町。ごみ分別を開始して今年で25年。一般社団法人大崎町SDGs推進協議会から中垣るるさんと遠矢将さんに大崎町のリサイクルの現状とこれからについて伺いました。

鹿児島局アナウンサー 白鳥哲也

リサイクル率日本一の町 その始まり

白鳥

1998年に始まったごみ分別。どういう経緯で?

中垣さん

大崎町にはごみを燃やす施設、焼却処理施設がないのですべてのごみは埋め立て処分していました。それで25年前にごみの量がどんどん増えて、このままだと埋立処分場が当初の計画よりも早く満杯になりそうだということが発覚しました。 

                                  (提供:大崎町SDGs推進協議会)
              埋め立て処分場   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

そこでまず考えたのは、焼却施設を作ること。しかしそれは、莫大な予算と維持費がかかるのでやめました。その次に新たな埋立処分場を作る案も出ましたが、当時は何も分別しておらず、悪臭がする迷惑施設だったのでそれを作るのは難しいとなりました。そこで、「だったら今使っている処分場を長く使えるようにしよう、埋め立てるごみの量を減らそう」ということで25年前に分別がスタートしました。

ごみ分別は27品目 埋め立てごみの80%以上を削減

大崎町のごみ分別表

大崎町のごみの分別は25年前に「缶」「びん」「ペットボトル」の3品目から始まって、現在では27品目に分かれています。

「びん」だけでも4つに分かれてますね。分ければ資源ですもんね。

そうなんです。こうした分別によって、埋立処分場があと40年は使える見込みですし、さらに埋立ごみの80%以上を削減できています

循環型の町づくりを目指して

そんな大崎町におととし4月に設立されたのが「大崎町SDGs推進協議会」。この協議会を設立した目的は? 

遠矢さん

大崎町が20年以上続けてきたリサイクルの仕組みを土台にして、循環型の町づくりを様々な方向へ展開していくためです。

例えばどんなことを?

大崎町が描く「ビジョンマップ」というのがあります。資源、経済、人が循環するということを表している地図なんですが、これを達成するためにさまざまなことをやっています。 

             学校への出前授業   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

例えば、町内でいうと、リサイクルって本当に環境に良いのかどうか、国立環境研究所に調べてもらったり、子どもたちや学校の先生に改めて大崎のリサイクルの大切さ、すごさをわかっていただく授業をしたりしました。

先進地に学べと、全国からの視察も多いようですが、そうした対応にもあたっている?

                                   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

去年は600人以上の視察がありました。行政職員、鹿児島や首都圏を中心とした企業の方々、また修学旅行の生徒さん、海外からもお越しになります。 行政職員のみなさんはどうやって分別という仕組みを住民に理解してもらって巻き込んでいけるかというところに興味があります。 一方、企業の方は、自分たちの取り組みのヒントになることを探しにくる。

            埋め立て処分場の視察  (提供:大崎町SDGs推進協議会)

例えば、埋立処分場を見ていただいたときに、自分たちが作った製品が埋め立てられていた。それはショッキングなことではあるんですが、つまりはリサイクルできない、しづらいものということなんですね。焼却処分をしてしまうとそこに気がつかないんですが、埋め立ての場所で実際に見ることで実感できる。次の事業につながるヒントがあるそうなんです。

リサイクルの町から世界の未来を作る町へ

大崎町のリサイクルシステムは、国内だけでなく、世界からも注目されているそうですね?

日本ではごみは焼却処分が主流ですが、世界的に見ると実は埋立処分が圧倒的に多い。特に発展途上国ではごみ問題が深刻化しています。

              インドネシア   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

町にごみがあふれたり、ごみの山ができたりと深刻な問題になっているところが多いです。その中でインドネシアもごみ問題が深刻になっていて、大崎町はJICAの事業で平成24年からインドネシアに技術協力を行っています。

                                   (提供:大崎町SDGs推進協議会)
                                   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

去年はジャカルタにリサイクルセンターを作り、大崎町から役場の職員やリサイクルセンターのスタッフを派遣して、分別の方法を伝えています。 2023年7月にはインドネシアからの留学生2名が大崎町でリサイクルについて学ぶ予定です。今後はインドネシアだけでなく、他地域でも展開していきたいと思っています。

リサイクルネイティブ世代が誕生

去年、大崎町のふるさとPR大使に就任したタレントの薬丸裕英さんが大崎町を訪れた際に、小学校の子どもたちの意識の高さに感動していましたが、もう子どもたち含め、町民にとっては当たり前なんですか?

                                   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

そうですね、大崎町では本当に子どもたちを含めてリサイクルが当たり前のことになっています。私が子どもの頃にリサイクルの取り組みが始まったんですが、幼少期からリサイクルに触れてきた子どもたちに対してリサイクルネイティブなんて言葉もあります。

デジタルネイティブならぬ、リサイクルネイティブ!

                                   (提供:大崎町SDGs推進協議会)

県外に進学した子ども達が家族に電話をかけてきて、燃えるゴミって何?と聞いてくることも多いみたいですよ。

一方で27品目も分けるなんて大変・・・という声も?

そうですね。27品目という数字だけが一人歩きして、ごみ分別が大変な町、面倒な町と認識されることも多いので、なぜ分別するのか、分別した先にこんなに資源になっているんだということをもっと知っていただけるように伝えていきたいですね。

「紙おむつのリサイクル」 「空き家対策」 新たな取り組み

最近は紙おむつのリサイクル実証実験にも取り組んでいるとか?

現在、大崎町で出る埋め立てごみの3割が、実は紙おむつ。そこに紙おむつを作るメーカーが着目し使用済の紙おむつから、新しい紙おむつをつくるということに取り組み、成功しています。これは高齢化が進む中、大崎町だけの問題だけではなく、日本国内、世界中の紙おむつ問題の解決にもつながる取り組みだと考えています。

さらに、ことしは空き家を分別体験施設に活用する取り組みを始めたそうですね。

          体験型宿泊施設 完成イメージ (提供:大崎町SDGs推進協議会)

行政や企業の方たちが視察で町内の廃棄物処理施設を見学するんですが、見るだけでなく滞在してもらって、大崎町の分別のある生活を体験してもらうための体験型宿泊施設を計画しています。元々は県職員住宅だった築50年の空き家2棟を改修して活用する予定です。

大崎町出身の遠矢さんは、大学卒業後は東京の設計事務所で勤務して大崎町にUターン。これまでの知識・経験もつぎ込まれる?

大崎町の出身で、かつ設計事務所で働いた経験を活かして、この企画を立案・推進しています。ことしの6月に着工して12月にプレオープン、来年の4月にオープンを目指しています。施設について町民の皆さんにより深く知ってもらうために、先月から建物の内装の解体をワークショップという形で行っています。

完成イメージを見ると、庭や畑もあるんですか?

そうです。町内の生ごみで作ったたい肥を使って野菜などを育てる予定です。そこで育てたものを収穫・調理して食べられるキッチンも造ります。宿泊がないときは地域の皆さんが集う場にもなればいいなと思っています。

  • 白鳥 哲也

    アナウンサー

    白鳥 哲也

    長崎・京都・松山・沖縄局を経て、Eテレ「きょうの健康」などを担当
     現在は、ふるさと鹿児島で「情報WAVEかごしま」キャスター

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