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8・6水害 | 竜ヶ水 人々を襲った土石流

現場にいた元警察官の証言
  • 2023年05月30日

30年前の8月6日、国道10号線沿いの竜ヶ水地区では、20か所以上で土砂災害が発生。多くの人が犠牲になりました。当時、ニュースで流れていた、土砂に埋もれた列車の映像を覚えている方も多いのではないでしょうか。この場所で土石流に襲われた、ある元警察官の証言です。(動画はコチラ

(鹿児島放送局 柳沢直己)

たまたま竜ヶ水へ

有村新市さん

よくバケツをひっくり返したような雨と言いますけど、感じとしては、ドラム缶をひっくり返した雨というような感じでしたよね。

こう話すのは、元警察官の有村新市さんです。8月6日は、市内をパトロール中に検問の指示を受け、竜ヶ水の駅近くへ駆けつけていました。

あの日、竜ヶ水では大規模な土石流が発生して4人が死亡。道路は土砂で埋まり、多くの人が取り残されました。この土石流が発生する直前に現場で撮影された映像には、検問を中止し、停止した列車の乗客などを避難させる有村さんの姿がおさめられていました。

カメラにおさめられていた有村さんの姿

ふだんからこの場所をパトロールしていて、土砂災害のリスクが高い場所だと知っていた有村さん。崖の近くにいた人たちを海側へ移動するよう誘導していたのです。

人々を襲った土石流

土石流の前兆も感じていたといいます。

有村新市さん

もうそれはですね不気味な音ですよね。ゴーという音ですね。すぐ避難してください、山鳴りがしていますということで、呼びかけてですね。

そして、海側へ移動した人たちを、さらに安全な場所へ避難させようとしたときのことでした。

海沿いを歩き避難する人々
有村新市さん

走っている途中に、腰あたりにですね、風圧を感じましてピューンと飛ばされたんですよね。

竜ヶ水で発生した土石流

土石流に襲われたのです。崖から流れ下った土砂は、列車や車、そして避難していた人たちを巻き込みながら、海にまで達しました。有村さんは、土砂やがれきとともに海に沈み、死を覚悟したといいます。

土石流に巻き込まれた列車
有村新市さん

ちょうど海中から上がったときに、私の頭を抑える物体があったんですよ。そのとき私は苦しくてたまりませんでしたから、死ぬなと思ったときですね、家族の全員の顔が浮かんできました。

最後の頼み

もがきながら、なんとか浮上した有村さん。そこで目にしたのは海に投げ出され、負傷した人たちでした。

有村新市さん

女の人だったですね。私はもうだめですと。おたくが助かって私の主人に会うようなことがあったら、子どもは頼みますというのが最期の言葉でしたと伝えてくださいと言われるんですよ。何を言いますかと、あなたは私が助けますからということで ボートの上に押し上げて救助しました。

陸にたどり着いた有村さんは、頭と手にけがをしていましたが、現場に残り避難しようとしていた人たちの誘導を続けました。救助のためにやってきた船に乗ったのは、日をまたいでからでした。

竜ヶ水で発生した土石流

「教訓」と「悔い」

あの日から30年。竜ヶ水地区では斜面の補強が行われ、国道10号線も連続雨量が200ミリを超えると通行止めになるなど、対策が進められています。

国道10号線を通行止めにする訓練の様子

土石流のおそろしさを身をもって知った有村さんは、地元に潜むリスクを十分に理解して、備えを進めてほしいと訴えます。

有村新市さん

まさかああいう事態になるとは思いもしませんでした。自分の家の周辺はどういう災害が起こるんだというのは、知っておかなければならないと思います。4人の方が犠牲になっていらっしゃるんですよね。最善の方法はなかったかと、悔いが残りますよね。今でもですね。

8・6水害特設サイトもご覧ください

NHKは8・6水害の特設サイト〝わするんな(忘れるな) かんぐっど(考えよう)〟を立ち上げました。(リンクはコチラ

あの日、何が起きたのか。同じような災害が起きたとき、どうすればいいのか。自分自身や友人、家族、大切なひとを守るために必要なことは。8・6水害を語り継ぐ特集のほかに、身を守るためのさまざまな情報を掲載しています。ぜひ、ご覧ください。

  • 柳沢直己

    NHK鹿児島放送局 記者

    柳沢直己

    2021年入局。事件・事故担当。宮城県出身。鹿児島に来て、日本酒派から焼酎派に。

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