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台風14号「緊急安全確保」で「立ち退き避難」が大幅に増加

  • 2022年11月11日
防災トピックス

 

2022年9月に鹿児島県に上陸した台風14号では、上陸時の中心気圧の低さとしては統計開始以来5番目に並び、県内各地で記録的暴風が吹き荒れました。この際、県内の自治体が台風が接近する前の時間帯から「外出は危険だ」と伝えようと直ちに命を守る行動を呼びかける「緊急安全確保」を発表したところ、「立ち退き避難」をした人が大幅に増えていたことが分かりました。
(鹿児島局記者 小林育大・松尾誠悟)

9市町が発表「緊急安全確保」

大雨や台風の災害時、自治体からは避難に関する情報が発表されますが、「緊急安全確保」は5段階の警戒レベルのうち最も高いレベル5にあたります。すでに災害が発生、または災害が切迫している状況で出され、命を守る行動を取るよう呼びかけるためのものです。

避難所などへの移動は手遅れになっているおそれがあり、そうした「立ち退き避難」から行動を変えて、近くの頑丈な建物や建物の2階以上、崖から離れた場所に移るなどして、少しでも命の助かる可能性の高い行動を取ることが求められます。

台風14号では、西之表市、志布志市、曽於市、日置市、いちき串木野市、薩摩川内市、阿久根市、出水市、長島町の県内9つの市町が発表しました。

“外出を控えて”通常とは異なる対応

このうち西之表市は、気象庁が「台風の特別警報」を発表したのと同じ時刻、9月17日の夜に全域に「緊急安全確保」を出しました。この対応、通常とは異なるものだったと市の防災担当者は振り返ります。

蓑茂友興 係長

今回、危険な台風でこれはやばい状態になるのではないのかなってみんな思っていたところなんですよ。ふだんの台風対策とは違うところがあるんじゃないかって。

西之表市が「緊急安全確保」を発表した午後9時40分に、台風はすでに大型で猛烈な勢力でした。しかし、直後の午後10時の時点で、台風の中心があったのは沖縄県の南大東島の北の海上で、市内で土砂災害や川の氾濫といった災害の発生はありませんでした。

「緊急安全確保」の発表は、暴風域に入る7時間余りも前でした。

こうした状況で発表したねらいについて、市は“外出を控えてほしい”と、強いメッセージで伝えたかったと話します。

蓑茂友興 係長

外に出たら危ないということを伝えるためにはどうすればいいか。そこで強く訴えるためインパクトのあるメッセージを住民の方たちに伝える。本来の出し方とは少々違いますけど、これから避難するのは危ない状況になりますっていうのを伝えるために、早めに出したという事情があります。

住民行動は期待とは異なるものに

ところが「緊急安全確保」を受けた住民の行動は、市の期待とは異なるものでした。

避難所に移動する「立ち退き避難」をした人は、「緊急安全確保」を出す直前の17日午後9時半の時点で124人。しかし発表のあと、翌18日午前7時半の時点では166人と、40人余り増えていたのです。

こうしたケースは、ほかの自治体でも見られます。

出水市と日置市はそれぞれ18日の昼前、全域を対象に「緊急安全確保」を発表。暴風域に入る前で、いずれも災害の発生はなかったとしています。しかし、その日の夜にかけて それぞれ500人余りとおよそ100人、「立ち退き避難者」が増加。すでに暴風域に入っていて、避難所への移動は危険な状態でした。

「避難指示」でていねいな伝え方を

災害時の避難行動に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、「緊急安全確保」のあとに「立ち退き避難者」が増えているのは、情報が適切に役立っていないとしたうえで懸念を指摘します。

牛山素行 教授

緊急安全確保は何か確実に事が起こってしまった、例えば川があふれているとか、あちこちで土砂災害が起こって道路が寸断されてきている、そういうような状況下で出すのが基本だと思うんですね。「今いるところで安全確保ができるのであればそこにとどまる」というのは避難指示でもでき呼びかけになります。あまり緊急安全確保を乱発するような形になってしまうと、避難指示等の情報の効果が失われてしまうのではないか、そういったことを懸念します。

そのうえで「緊急安全確保」のひと言だけで伝えようとするのではなく、「避難指示」でていねいな伝え方をすることが重要だと話します。

牛山素行 教授

重要な情報は避難指示であって、避難指示を出すことによって何らの安全確保の行動を取ってもらう。屋外での行動は避けましょうとか、避難指示にもうひと言付け加えて情報を伝えていく、そういったことも重要になってくるかなと思います。状況に応じて丁寧に伝えていくということ、これはやはり努力していかないといけないところなんじゃないかなと思います。

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