図鑑で守る 野鳥の楽園・野付半島
- 2024年5月16日
【図鑑で触れる野付半島の価値と魅力】
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根室海峡に突き出た、釣り針のような形の野付半島。開けた土地に湿地や干潟、草原など多様な自然環境が揃い、極東ロシアと北米の2つの渡り鳥のルートが交差する国内屈指の「野鳥の楽園」です。これまで275種類が確認されています。
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『標津町から買いに来た女性』
気になってちょっと見に来ました
『東京から観光で訪れた女性』
鳥がいっぱいいたんですけれども、種類が全然わからなかったので、
ちょっと調べようと思って買ってみました
図鑑は96ページで、野付半島で観察できる主な野鳥138種類を分類して掲載しています。
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写真はいずれも実際に野付半島で撮影されたもので、野鳥がどんな場所でどのように過ごしているかなど、観察のヒントが添えられています。
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すべての写真を撮影したのが、野付半島ネイチャーセンターの藤井薫センター長です。
40年あまり、レンズ越しに野鳥を見守ってきました。北海道の自然を紹介する雑誌での連載が10年を迎えたのを期に図鑑を企画し、別海町の補助を受けて発行しました。
『藤井薫 野付半島ネイチャーセンター長』
この時期に来れば、こういう鳥に出会えるんだなぁっていう、
そういう思いをかきたてるような内容にしたいというのもありました
【図鑑が伝えたいもう一つの思い】
この図鑑にはもう一つ、伝えたいことがあります。
それは野鳥観察や撮影のルール違反を無くすことです。
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3月、センターの専門員坂口つくしさんが、あまり人が訪れない半島先端部でガイド中にひまわりの種を見つけました。そこは、ユキホオジロを撮影できる知る人ぞ知るポイントで、ひまわりの種は餌付けのために持ち込まれたとみられます。
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『坂口つくし専門員』
餌付けをすることで渡り鳥がいつも帰っているその時期に帰らなくなる、その後の繁殖にも影響が及ぶというのも考えられるのかなと思いますので、その自然のサイクルを崩してしまうということにつながる。そういう事はやめていただきたい
【野鳥の楽園を残すために】
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こうした状況を改善しようと図鑑に設けたのが、撮影スポットごとにルールをまとめたページです。
坂口さんが描いたイラストと共に「植生を踏み荒らさない」「野鳥を追いかけ回さない」といった注意を促しています。
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例えばこちらは、半島の中ほどにある景勝地で、潮の満ち引きで干潟になる「ナラワラ」。
干潟への立ち入りを禁じ、奥の原生林を近くで見るにはガイドツアーの利用を勧めています。
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『藤井薫 野付半島ネイチャーセンター長』
マナーを守ったり、長く付き合ったりするためにはどうしたらいいのかということを考えてもらう。 それがきっかけとなって、読み物として活用してもらえたらいいなと思っています
【取材後記】
野付半島に行くと季節を問わず全国各地のナンバーの車が停まっていて、野鳥の人気や地域資源としてのポテンシャルの高さを実感します。それだけにこの図鑑は、地域の宝物である野鳥と自然環境を残すため、私たちは何をしていくべきか考えるきっかけになると思います。図鑑は野付半島ネイチャーセンターや書店などで販売されています。
中標津支局 原田未央