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中標津町の小児科閉院 地域医療に影響

  • 2023年10月31日

中標津町で唯一の小児科クリニックが2023年いっぱいで閉院することになりました。背景には少子高齢化の影響がありました。(中標津支局 原田未央)

【地域に親しまれた小児科クリニック】

町立病院以外としては町内唯一の小児科、「中標津こどもクリニック」です。地域に根差した医療機関として長く親しまれてきましたが、2023年12月をもって閉院することになりました。

子どもを通院させていた保護者からは惜しむ声が聞かれました。
「今5歳なんですけど生まれて少ししてからずっとお世話になっています。いつでも予約すれば出来るのですごく助かっていました」

院長の栗山智之さんは神奈川県出身。バイクで訪れた中標津町にほれ込んで通うようになり、2002年、クリニックを開業しました。医療だけではなく、子育て支援や児童館活動、院内に音楽スタジオを設けて高校生に貸し出すなど文化活動にも力を入れ、地域づくりに広く携わってきました。

(栗山智之さん)
「やっぱり、人づくりやまちづくりをしたかったから、中標津で定着するぞと。やっぱり、その子たちがこの町でのびのびと育っていくことに関わっていくことができたら有意義であるし、こっちも楽しいんじゃないか」

【“若い町”で進行していた少子化】

5年前、クリニックは突然、赤字になりました。生れてくる子どもが少なくなっていたのです。中標津町は2012年まで人口増加が続いてきました。出生数は横ばいでしたが、2017年から200人を割り、2022年は129人と、20年前と比べほぼ半減しています。

子どもの人数としては町立病院一つでまかなえるようになっていました。そんな時、小児科の医師不足が懸念されていた兵庫県の丹波篠山市の関係者から依頼が来ました。中標津町に永住するつもりでしたが移住を決断しました。

栗山智之さん
「いや衝撃でしたね、日本の国は子どもが減っていくのは知ってたんだけども。やっぱり自分はこの町でこれからも住み続けたいなっていうのと、やっぱり(小児科医として)社会的な使命感を果たすのとどっちなのかなっていうのでずっと悩んでたんですよね」

【2つの懸念】
 閉院に際して栗山さんが懸念していることが2つあります。

ひとつは予防接種です。クリニックでは大人を含めてインフルエンザなどのべ2万人を超える予防接種を受け入れています。時間や場所の選択肢が減り、予防接種を受けられない人が出てくる可能性があります。

【少子化を“自分事”としてとらえて】

栗山さんは今後も月に一度は企業の産業医として中標津町を訪れ、関わりを持ち続けたいと考えています。

(栗山智之さん)
「子どもが減った何十年後の社会を考えたときに、相当悲惨な姿が待ってるはず。ほんとに他人事ではなくて自分事として主体性を持って考えていくと言うことは少子化に限らず何でも地域づくりに関しては絶対に必要なことですよね」

【取材後記】
予防接種の中には赤ちゃんが定期的に受けなくてはいけないものもあり、中標津町はクリニックの閉院後も切れ目なく対応できるよう、町立病院と準備を進めるということです。また病児保育について町は、場所や保育士の確保など早期の再開に向けた体制を検討しています。
私自身、かつてこのクリニックに子どもを連れて行ったこともあり、とてもお世話になったところです。中標津町は、根室地方の中でも比較的「若者が多い町」という印象でしたが、少子高齢化は今やどこでも進行し、地域が立ちゆかなくなる怖さを感じました。栗山さんが話すように、一人一人が考えていくべき課題だと思いました。

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