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北海道に瓦屋根はあるの?

  • 2023年11月13日

視聴者のみなさんから寄せられた疑問を調べる「シラベルカ」。 今回は、札幌市に住む20代の大学生から質問をいただきました。 

投稿いただいた方は大阪府の出身で、周りの家々が瓦屋根だったことから疑問に思ったそうです。確かに北海道で瓦屋根の住宅はあまり見かけない気がしますが、なぜなのか調べてみました。

北海道に暮らす人たちはどう感じている?

札幌市北区の住宅街です。瓦屋根の家はなく、平らな屋根が多く見られます。なぜ瓦屋根の家が少ないと思うのか、街ゆく人に話を聞いてみました。

「昔の瓦は重たく、北海道の雪も相当重いから家への負担が大きかったからではないかと思います。それにトタンだと雪が落ちやすいので、北海道には瓦屋根が少ないのではないでしょうか?」

石川県金沢市の瓦屋根

しかし、北陸など雪が多く降る地域でも瓦屋根はよく使われています。では、なぜ北海道では瓦屋根が使われていないのでしょうか?

ヒントは北海道開拓の歴史に!

北海道の瓦屋根の事情について調べるため、北海道博物館の元学芸員、小林孝二さんに話を伺いました。小林さんは40年以上にわたって北海道の住宅の歴史について研究していて、瓦屋根が普及しなかった理由について、北海道開拓の歴史と関係があると教えてくれました。

北海道博物館・元学芸員 小林孝二さん

小林孝二さん
「明治時代の入植当時、とりあえず冬を越さなきゃならないとすると、仮小屋を作るしかない。そうなると周りにあるものを使って作ることになり、開拓のために自分たちが切った木を使うのが一番手っ取り早くて合理的だったのではないでしょうか」

さらに、当時は瓦を手に入れづらかったことも要因のひとつだといいます。

「瓦は道内でほとんど作っていなかったので本州から船で運んでくる必要があり、値段が高かったのです。お金のあるおうちだと商家などでも使うようになっていましたが、当時の一般庶民にはそこまで浸透していませんでした」

それ以外にも、
▼瓦を修繕する職人が少なかったこと
▼道路や鉄道などの輸送路が整備されていなかったこと
▼重くて運びづらいこと
といった要因から北海道では瓦が普及しなかったのではないかと教えてくれました。

その後、大正時代になると国内で鉄板が多く作られるようになり、一般の人でも安く鉄板を買えるようになりました。鉄板は軽いうえに丈夫で耐火性もあることから、屋根の材料として少しずつ広まっていきました。それまで瓦屋根の文化が広まっていなかったことも重なって、その後の北海道では瓦屋根はほとんど普及しなかったそうです。

瓦の文化を受け継ぐ町

一方で、瓦屋根の文化が根づいている地域もあります。道南の江差町です。江差町を訪れてみると、ふだん札幌ではあまり見ることができない瓦屋根の家々が建ち並んでいました。

なぜ江差町には瓦屋根の家が多くあるのか。江差町教育委員会の学芸員、小峰彩椰さんが江差町で瓦屋根が普及した理由を教えてくれました。

江差町教育委員会・学芸員 小峰彩椰さん

江差町教育委員会・学芸員 小峰彩椰さん
「こちらにあるのが北前船の模型です。この船に瓦を乗せて商品として江差にやってきました。北前船が瓦を載せて運んできたことで、江差町では瓦が普及したのです」

江戸時代から明治時代にかけて活躍した「北前船」。江差町は北前船の交易の拠点で、道内の特産物を本州に運んだあと行くさきざきの物資を道内に持ち込んでいました。そのうちのひとつが瓦でした。

こちらは、北前船が瓦を運んでいたことを記した文書です。取り引きされたものの中に、“瓦”と書かれています。

さらに、文書の最後には“敦賀”と記されていて、北陸の福井県から運ばれてきたことが分かります。

さらに、瓦は商品としてだけではない重要な役目を担っていました。北前船は荷物が少ない状態だと重心が高くなり、転覆しやすい状態になってしまいます。そこで役立ったのが、瓦や石材など重たい物資です。こうしたものを船底に載せることで重心を低くし、船のバランスを保っていたのです。

江差町教育委員会・学芸員 小峰彩椰さん
「瓦など重たい商品は商品としての価値だけではなく、船の安全を守る役割を担っていました。本州から持ち込まれた瓦は江差の町並みを作るもとになっています」

瓦屋根の景色を後世に

明治時代に撮影された江差町の町並み

かつては多くの瓦屋根の家々が見られた江差町ですが、人口減少や建物の老朽化などで徐々に数を減らしています。こうしたなか、町では平成8年に歴史的な景観を保全し残していくための条例を制定しました。

いまも瓦屋根の建物を使い続けている室谷元男さんは、北海道では数少ない瓦屋根の景色をこれからも残していきたいと言います。

室谷元男さん
「本州の漁村の風景がそのまま伝わってきた北海道のなかではちょっと特異な町並みかなと思っています。こういう瓦も大事にしながら、瓦だけに『変わらぬ風景』を残していきたいなと思います」

取材した江差町のほかにも、北前船が寄港していた小樽市や松前町などでも瓦屋根の町並みが残されています。こうした光景が残されているのは北海道でも数少ないので、室谷さんがおっしゃるように「変わらぬ」風景として後世に残してほしいと思います。

2023年11月13日

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