ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. ほっとニュースweb
  4. “北海道の夏は暑い” 学校の環境改善に声を上げた高校生

“北海道の夏は暑い” 学校の環境改善に声を上げた高校生

  • 2023年10月26日

「“ことしもギリギリ乗り切れちゃった“これまではそんな感じでやってきちゃった。みんなエアコンがつくとは思っていないし、それでも仕方がないみたいな感じ。偉い人たちも必要性は分かっているけど、なかなか実行に踏み切れないという感じだったのでは」
そう話すのは、道立富良野高校2年生の山下胡春さん。学校の環境改善に向けてたった一人で始めた取り組みがいま多くの人を巻き込んで大きなうねりを生み出そうとしています。その取り組みに密着しました。


声を上げたからこそ、わかりあえることがある

これまで山下さんは、学校生活で感じた疑問については声を上げ、環境の改善につなげてきました。
1年生のときのことです。「2、3年生にはあるロッカーが1年生にはなんでないんですか?」。同級生からそんな声が上がりました。
富良野高校では、2、3年生になると教室の移動が多く、さらに使う教材も増えることから、保管用のロッカーが用意されていました。しかし1年生の時点ではロッカーは不要と学校側が判断していたことから、用意されていなかったのです。
そこで山下さんは、ロッカー設置を提案する意見書を書き上げて学校に提起。すると、実は学校も授業で使うタブレット端末を保管するのにロッカーはあったほうがよいだろうと考えていたとのこと。山下さんが声を上げたことで、設置が実現しました。
教頭の小林茂広さんは生徒から意見書を受け取ったことは初めてだったといい「意見書がロッカー設置の後押しになった」と振り返ります。


対策が不十分なままの学校の「暑さ対策」

いま山下さんは、もっとスケールの大きい学校の環境改善にも取り組み始めています。それは「暑さ対策」。きっかけはこの夏の異常な猛暑でした。
北海道では各地で観測史上最多の猛暑日を記録。熱中症の疑いで搬送される人は過去最多で、道内の学校でも児童・生徒の搬送が例年にないほど多く、伊達市では8月22日に小学2年生の児童が猛暑下の屋外での体育授業後に倒れて亡くなっています。
その一方で、学校での暑さ対策は後手に回っており、公立高校のエアコンの設置率は2022年9月時点でわずか0・7%(※全国平均は9割超)。
山下さんたち富良野高校の生徒たちも、連日、蒸すような暑さの教室で窓を全開にして扇風機を稼働。それでも風がなかなか通らず、「やる気が出ないなという感じ」を覚えたといいます。

そこで山下さんは若い世代ならではの方法を思いつきました。それは、署名サイトを使って「暑さ対策」実施への賛同の声を集めることです=画像下=。
街頭で署名を呼びかけるのは、ちょっと勇気が必要。でも署名サイトというツールを使って賛同を呼びかける形であれば、そんなに構えずとも一歩を踏み出すことができました。
山下さんは、最初に声を上げるのは難しいけれど「意外と声を上げても怒られない。まず声を上げないと始まらない」と語ります。

署名を集めるにあたり、山下さんは具体的な対策の内容もじっくり考えました。エアコンが設置できれば解決策にはなる。けれどもそれだけでは、エネルギーを使って地球温暖化を進めてしまうし、お金もかかる。だから外気温を遮断し冷房の効果を上げる「高気密断熱処理」など、総合的な対策を施すべきだと求めることにしたのです。
そして8月下旬から署名の募集をスタート。すると1か月あまりで全国の老若男女2万7000を超える署名が集まりました。


北海道の夏は“涼しい”という固定観念からの脱却

その署名を手に山下さんが向かったのは、北海道教育委員会です。署名は委員会事務局トップの倉本博史教育長が受け取り=画像下=山下さんの訴えも聞いてくれることになりました。
まず山下さんは、近年道内でも夏の厳しい暑さが問題となってきたことを挙げ学校にエアコンがついていないことなど、十分な暑さ対策がされていない現状についての認識を問いました。
教育長は、高校のエアコン設置に関して小中学校向けにある国から財政支援がないことを説明し「特にお金がかかることについては道議会の議決も必要。きょうこの場でこうしますと言える段階ではない」と苦しい財政事情を説明しました。

これに対して山下さんは、今回はエアコンの設置だけでなく、総合的な「暑さ対策」を求めて署名を集めたことを改めて伝えます。
すると教育長からは、①夏休みの期間の延長、②猛暑下での屋外授業の中止といったソフト面での対策も検討していきたいとの答えが返ってきました。

さらに教育長は、「これまでも気づく時間もきっかけも十分あったはずだという(山下さんの)言葉が胸に突き刺さった。北海道では8月中旬になるとすごく涼しくなって夏休みが終わるとかなり楽になってきたのがこれまでの常識だったので、そういう“北海道は涼しい”という固定観念に囚われ過ぎていた」と語り、現状の改善を約束しました。山下さんは冬を経て来年の夏までどのような対策の動きが出てくるか注目していくそうです。

山下さんは話します。
「みんな声を上げようよということでなく、声を上げているから特別というわけでもないし偉いというわけでもないけど、声を上げたかったらやっていいんじゃないみたいな、そんな雰囲気になればいいかな」

◇◇◇

「NHKニュース おはよう北海道」で10月26日に放送したところ、ご覧いただいた40代の女性の方からさっそく次のような「声」が届きました。

我が家には、高2の息子が居ります
この夏の暑さのなか、私たち親は本当に心配する毎日を送っていましたし、
生徒達は酷暑の中で授業やテストを受け、、本当に大変だったと思います
熱中症の生徒さんも数多く出ていますよね?

小中学は、徐々にエアコン設置に向けて動いているように見受けます。
高校も、昨今の気候変動に伴い、子どものいのちを守るという事を最優先に考えるより他に大切なものはあるのでしょうか?
予算など、他にクリアすべき問題が有る事も承知しておりますが、彼らが、適切な環境のなかで思い切り勉強やスポーツが出来るよう、高校にもいち早いエアコンの設置を切に願います。

皆さんの声を基にこれからも取材を続け進捗を報告していきます。

皆さんの声はこちらからお寄せ下さい↴
NHK初の専門チーム「Neeeds(ニーズ)」誕生! 

≪この夏の暑さのなかお伝えしました≫
オール電化住宅 物価高騰の中で… 
冷房の電気代…どうやって計算?

ページトップに戻る