市立稚内病院を取材！医療の2024年問題はどうなる？【3月3日（日）後3:05-4:03 総合テレビ ニュースなるほどゼミ】

全国各地の地域医療の現状を調べましたが、もともと医師不足の上に、医師の労働時間を制限する「働き方改革」が追い打ちをかけ、日常診療がままならなくなりつつある病院がいくつもありました。すでに廃院や合併に動いているところもあります。
市立稚内病院も、そもそも常勤医師が足りておらず、医師ひとりひとりの負担が非常に重くなっています。40代の診療部長でも、宿直を含めて40時間も連続して病院にいるのが通常だそうです。6つの科では、大学病院からの派遣医師に月に数回来てもらってなんとか回しているため、患者がすぐにかかりたいときに医師がいないことが常態化しています。

さらに問題は救急医療です。治療が一刻を争う心筋梗塞の患者が救急搬送されてきても、日によっては専門の医師が不在のため、170キロ離れた名寄市の病院まで運ばなくてはなりません。
こうしたギリギリの状況の中、医師の「働き方改革」に向けてさらに勤務時間を短くするため、まず午後の休診が増えました。もし大学病院が派遣医師を引き上げるようなことがあったら、診療体制をさらに縮小するか、救急医療から撤退することまで考えなければならないといいます。それは、そのまま地域医療の崩壊につながりかねません。

稚内市の地域医療の状況について、当初私たちは患者が極端に少ない地域の特殊な話ではないかと思っていました。しかし実際の市立稚内病院は、周囲の10市町村からの患者が外来に1日800人もつめかけ、ベッド数は300床以上の、地域医療の中核となっている典型的な病院でした。無理しながらも何とかギリギリで持ちこたえている地域医療に今回の働き方改革が何をもたらすのかを描くには象徴的な場所だと考えました。

今回の番組では「2024年問題」を単に、労働時間の短縮→私たちが不便になる、という話ではなく、運輸・建設・医療のそれぞれの業界の抱えてきた「構造の問題」が表面化したものと捉えています。
医療でいえば、「行きたい病院でいつでも（安く）診てもらえる」という日本の医療の環境は、医師の熱意と過剰労働によって支えられてきたものでした。診療時間が短くなる、救急医療が受けられない、病院が遠くなるなど、働き方改革によって今までの「あたりまえ」があたりまえではなくなるかもしれませんが、何を最優先するのかを私たちが真剣に考えることで、｢医師の偏在｣など数々の問題を抱える日本の医療を変えるチャンスになるかもしれません。