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気になる暖房費 昨冬は泣きました…今季はどうなる?

  • 2023年12月15日

今回は、みなさんから寄せられる声で多かった「暖房費」がテーマ。昨冬は電気をはじめとする金額高騰がくらしを直撃。特にオール電化住宅向けなど、自由料金のプランを利用する方から料金への憤りの声が相次ぎました。

オール電化住宅 物価高騰の中で… | NHK北海道

この冬は大丈夫?…という皆さんの疑問に応えるべく、現状と見通しを取材しました。

「まだ子どもも小っちゃいですし暖房は切るわけにいかないので、エネルギーの高騰というのは非常に困っていますね」。

そう話すのは、北広島市で妻と9か月のこどもと暮らす伊藤さん。去年、念願のマイホームを新築。新築にあたりこだわったのは、光熱費を安く抑えられるシステムの導入でした。電気、灯油、ガス等々…様々なエネルギーの中から、伊藤さんが選んだのは電気とプロパンガス(LPガス)の併用。その理由は5年前の胆振東部地震でのブラックアウトです。当時、なかなか復旧しない停電に悩まされた経験から、電気に加え、災害時に比較的復旧の早いガスも併用する暖房システムを設置したのです。ガスには都市ガスとプロパンガスの二種類がありますが、伊藤さんの住むエリアには都市ガスが供給されていないため、必然的にプロパンガスを選ぶ形になりました。

安い燃料を自動選択

伊藤さんの新居の暖房システムは、電気を使うかガスを使うかを自動的に選択してくれるというもの。実は電気やガスの料金は毎月変動しており、さらに昼間と夜間でも金額が異なります。そんな中その時々で、より経済的な方を選んでくれるという、ハイブリッドシステムです。先月11月は、赤ちゃんが過ごしやすいようにと暖房を頻繁に使いましたが、このシステムのおかげで3万円程度に抑えることができました。

そして伊藤さんの家計にとって、もう一つ大きな支えとなったのが、政府による激変緩和対策でした。

電気・都市ガス・灯油は↓もプロパン高止まり

政府による激変緩和対策は、9月以降も対策されることが決まり、電気、都市ガス、灯油の価格は安く抑えられているのです(画像上:価格イメージ)。

まず電気については、昨冬、発電に必要となる燃料価格が高騰。貿易価格を基に毎月の料金に反映させる「燃料費調整制度」で、国に規制された上限価格を突破しました。1月の平均燃料価格は、基準となる燃料価格の2倍以上に上る1キロリットルあたり8万6700円にまでなったのです。このときは「自由料金」と呼ばれる、上限なく燃料費が転嫁されるプランを利用する人たちの負担が大きくなりました。
その後、6月に「燃料費調整制度」が見直されました。規制料金の料金単価と基本料金が、高騰する燃料費を織り込む形で平均2割以上値上げされたのに合わせるかたちとなったのです。基準となる燃料価格は、1月並みの水準に迫る1キロリットルあたり8万800円に設定されました。
直近での足元の燃料価格は、1月に比べて4割ほど安い5万400円と少し落ち着きました。加えて毎月の料金に対しては、激変緩和対策による1キロワットアワーあたり3.5円の補助も継続されています。

次に都市ガスについてみてみましょう。札幌市などで供給する北海道ガスの料金によると、原料価格の変動分を輸入価格を基に毎月の料金に反映させる「原料費調整制度」で1月、基準となる原料価格の2倍以上となる1トンあたり15万520円に到達。その後少し落ち着き直近、足元の原料価格は8万9340円となっています。また電気と同じく激変緩和対策で1立方メートルあたり15円が料金から値引きされています。

灯油はどうでしょうか。去年12月~ことし2月の間、全道平均価格(配達)で116~118円で推移。その後、ガソリンの価格が1リットル当たり180円を突破するなど、原油製品が値上がりする状況が続いていましたが、現在は足元で119円となっています。国が行った激変緩和対策の効果測定によると、全国平均価格では12月中旬時点で対策がなければ、灯油も136円を超えているということで、1リットルあたり22円あまりが対策で抑制されている計算になります。

その一方で、ちょっと気になるのがプロパンガス。北海道ではおととし冬に10立方メートルあたり1万円を突破してからは上昇傾向で、足元の11月末も1万863円と高止まりが続いています。これは全国平均に比べて2割高い水準です。

プロパン補助 道は手薄…

新居に新たな暖房システムを導入した伊藤さん。そこで利用するガスは、政府による価格高騰対策がなされている都市ガスではなく、プロパンガスです。現状ではプロパンガスへの対策はどうなっているのか。この先の価格はどうなりそうなのか。気になり始めました。

「電力だったり灯油、ガソリンもそうですけど補助があって、一方でLPガス(プロパンガス)ってどうなんだろうというのは思いますよね」。

実はプロパンガスへの補助は、一時金というかたちで各都道府県が行っています。ただ地域によってばらつきがあり、この夏場に行われた補助額は北海道が契約あたり2千円だったのに対して、岩手県では使用量に応じて最大6千円、鹿児島県では1,350円×4か月、岐阜県では1,500円×3か月、島根県では4,250円となっています。残念ながら北海道は、全国平均価格より2割高く、寒冷地のため冬には使用量も嵩むにも関わらず補助額は手厚いとはいえないのが実情です。

そんななか12月14日に閉会した道議会で、この冬のプロパンガスへの補助額が決められました。その額は2千円。これまでと同じ額にとどまりました。北海道LPガス協会によりますと、プロパンガスは道内のおよそ半数の世帯が利用しています。道内では特に多くの人の暮らしに直結する問題ですが、いまのところ増額する方針は示されていません。伊藤さんは、プロパンガスの使用量を抑えるために新たに激変緩和対策の対象となっている灯油を燃料とするストーブを購入。この冬はできるだけこれでしのぐつもりだということです。使用量に比例して補助額が増えるものを使ったほうが相対的に得となるため、いまのところ複数をミックスして使用するのが私たちのできる自衛策といえるでしょう。

燃料高はまだ続くが…

この先、燃料価格はどうなるのか―。電力や燃料価格の動向に詳しいエネルギー経済社会研究所代表の松尾豪さんに聞いてみました。

松尾さんは、灯油やプロパンガスの原料で発電の燃料にもなる原油については、中東での治安の悪化により湾岸地域を原油タンカーが航海できなくなるといった事態は即座に起きる状況ではないとしつつも、中東などの主要な輸出国が減産を追加しようとしているところでなかなか追加減産を打ち出せていないということから需給面の不確実性が高く価格を見通すことが難しいといいます。

また発電や都市ガスの原料である液化天然ガス(下の画像は11月3日に石狩湾新港に入港したタンカー)については、昨冬ロシア産の調達を止めたヨーロッパで不足したものの足元では需給のバランスが取れてきているといいます。ただヨーロッパで寒波が続くような事態になると今後、価格が高騰する事態が発生することも否定できないということです。また同じく発電の原料である石炭についても昨年、液化天然ガスの価格高騰に引っ張られるようにこれまでなかったような価格の上昇が起きたときからみると落ち着いているものの、それ以前の平時の水準には戻っておらず、価格が極端に下がるということもまだないだろうということです。

そのうえで国の激変緩和対策などの補助策について、

「オイルショック以降初めてとなるようなエネルギー価格の変動から、国民の生活や経済への影響を最小限に抑えるという効果は非常に大きかった。一方でこの先(燃料価格は)一定期間は価格が高い状態が高止まりする状態が続くということが考えられる。国民負担がどんどん増えていくということも踏まえ、社会経済を逆にいまのエネルギー価格に近付けていく、対応していくという考え方も必要になってきます」

と省エネや所得アップといった総合的な政策の必要性を指摘しています。

激変緩和対策は、来年5月にいまの補助額が半減することになっており、6月以降はどうなるか未定です。どんどん緩和策が縮小するなか、私たちの暮らしを支える新たな政策が求められています。

◇◇◇

さて、前回お伝えした“北海道の夏は暑い” 学校の環境改善に声を上げた高校生
ですが、その後動きがありました。

道立の高校などにエアコンを設置する予算が、道議会で成立したのです。

予算には、道立すべての高校と特別支援学校合わせて256校に窓に設置するタイプの簡易型のエアコン合わせて6,484台を設置し来年稼働させるための予算、それに肢体不自由と知的障がいのある生徒・児童が通う特別支援学校25校にエアコン合わせて626台を設置し再来年に稼働させる予算として、合わせて26億円あまりが決まったのです。高校の普通教室には2台ずつ設置されるということです。みなさんの声に政治が応えた格好になりました。

これからもみなさんの声を基に取材を続け、進捗を報告していきます。

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オール電化住宅 物価高騰の中で…

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