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スポーツを地域活性化につなげる~北海道教育大学函館校・SPORTS北海道~

  • 2023年11月8日

北海道教育大学は道内に5つのキャンパスがあります。そのうち函館校には「国際地域学科」が設置されていて、小学校の教員を目指す学生のほか、福祉や地域政策などを専門にする学生たちが学んでいます。 今回の「部活自慢!」で紹介するのは、そんな函館キャンパスならではのサークル。子どもや高齢者を対象にしたスポーツ教室を運営し、地域活性化につなげようと活動している「SPORTS北海道」のみなさんです。 

「総合型地域スポーツクラブ」

大学の体育館に取材に行くと、その日は「小学3・4年生」の教室でした。ソフトバレーボールを使って子どもと大学生がペアになってキャッチボールをしています。「1人、2人、3人…、子どもが18人。あれ?全部ペアになっているのにさらに道具の準備をしている学生もいる!」―まずビックリしたのは学生の多さです。子どもたちがうまく投げたりキャッチしたりした瞬間には、学生から必ず「ナイス!」「バッチリ!」と声がかかります。これは嬉しくなっちゃいますね。この日は20人ほどがいましたが、SPORTS北海道には全部で70人を越えるメンバーがいて、この教室のほかに「小学1・2年生」「一般市民」「65歳以上」と、様々な年代を対象としたスポーツ教室を運営しています。

SPORTS北海道はスポーツ教室の会費等により自主的に運営されています。また子どもから高齢者まで(多世代)、様々なスポーツを愛好する人々が(多種目)、それぞれの志向やレベルに合わせて(多志向)参加できるという特徴を持ち、函館市の「総合型地域スポーツクラブ育成支援事業」に指定されています。教育、福祉、地域政策を学ぶ学生たちにとって、重要な実践の場にもなっているんですね。

小学3・4年生の教室のリーダーを務めるのは中村叶人さん。このSPORTS北海道の自慢の1つは「狙いを持ったプログラム」だと言います。中村さんはヘッドセットマイクで全体に指示を出しながら、常に手に持った資料を見たりメモを取ったり忙しそうです。

そして教室の後半、3人ずつがチームとなり、ネットを挟んだゲーム形式のバレーボールが始まりました。しかし見ているとちょっとルールが違うようです。レシーブやトスがなく、ボールをキャッチするのです。しっかり捕球してからパスを回し、3回目で相手陣地に返すもので「キャッチバレー」と言うそうです。

中村叶人さん 小学3・4年生の教室リーダー
バレーボールはもちろん上手にできる子もいますが、いきなりだとちょっと難しかったりするんです。ボールと自分の空間を把握する能力がまず大事だと思ったのでキャッチバレーにしたんです。段階を踏んでやるように心がけています。

この日の練習後、中村さんが体育館の中にあるSPORTS北海道の作業部屋を案内してくれました。壁には大きな紙が貼られ、そこには「コーディネーション能力」というタイトルと7つのキーワードが記されていました(「リズム」「バランス」「変換」「反応」「連結」「定位」「識別」)。コーディネーション能力とは、見たり触ったりして外部から得た情報をもとに、すばやく反応・判断し、適切に体を動かす能力のことで、運動神経を左右するものと考えられています。SPORTS北海道ではメニュー1つ1つを考える際に、このコーディネーションを意識していると言います。

中村叶人さん 小学3・4年生の教室リーダー
「この動きはコーディネーション能力の連結、リズムに関わる」というように1つ1つのメニューの狙いを書いて学生全体で意識して取り組んでいます。きょうのバレーボールで言うと、動いているボールと自分の位置関係をつかむ「定位」、バレーボールという道具を上手に操作する「識別」というところを意識してやってもらいました。

この作業部屋では代表を務める関根朱音さんがSPORTS北海道の2つ目の自慢を紹介してくれました。それは数々の「手作りの道具」。部屋の倉庫には、小さな子どもや高齢者でも楽しめるよう作られた的の大きなストラックアウトや、体を動かさないと完成できない大きなパズルのピースなど、段ボールやテープを駆使して作った道具がたくさん保管されていました。

関根朱音さん SPORTS北海道代表
手作りなので壊れやすいというデメリットもありますが、子どもたちに「道具を大切に使おうね」と伝えられるという点では良いと思っています。自分の好きなキャラクターやかわいい動物を見るとみんな喜んでくれるので、機能だけでなくイラストやデザインにも力を入れて作っているんですよ。

SPORTS北海道ではこうしたメニューや道具を考えたり実現したりするための話し合いが頻繁に行われています。毎回教室の1週間前に内容を決めるミーティングを行い、当日も教室のあとに反省会を1時間以上かけて行います。そこで学生同士が意見を出し合い、常に「今よりもっと楽しくて効果的なプログラム」を目指す循環が出来上がっているのです。

関根朱音さん SPORTS北海道代表
教育大学ということで、教師になる人も福祉を目指す人もたくさんいるんですけど、そういう中で高齢者や子どもたちと関われる貴重なサークルだと思います。北海道教育大学函館校の顔となるサークルになればいいなと思っています。

参加者一人一人と向き合い、自分たちの取り組みを検証し続けるのは大変な作業だと感じましたが、カメラを向けた学生たちはみんな常に笑顔で取り組んでいるのが印象的でした。取材した小学3・4年生の教室のリーダー中村叶人さんは「子どもたちが将来やっていて良かったなと思えるような教室を作りたい」と話してくれましたが、彼らの親世代でもある40代後半の筆者はそれを聞きながら「君たちの将来も楽しみでならないよ!」と叫びたい気持ちでいっぱいでした。

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