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避難所生活の不安は?

  • 2023年10月24日

底冷えする体育館、他人の目、使えるか分からないトイレなど、災害時の避難所をイメージした時、あなたはどんな不安を持っていますか?昨年度、北海道防災士会と渡島総合振興局が道南でアンケート(複数回答)を行い「避難所で気になること」を聞いたところ、最も多かったのは「トイレ」。次いで「プライバシーの確保」、「感染症対策」と続きました。こうした避難所運営を支える道南の各自治体の備えはどうなっているのでしょうか。今回は「災害備蓄倉庫」の現状を取材しました。

トイレとプライバシーの不安を軽減
お邪魔したのは去年完成した北斗市最大の災害備蓄倉庫。北斗市では約6000人が1日過ごせる量の(3食分)食料や水を備えているほか、テントや毛布、発電機、暖房器具、照明、成人用紙おむつなど様々な物資を用意しています。

アンケートで不安の声が多かった「トイレ」については、組み立て式の「電動簡易トイレ」を備蓄しています。この倉庫にはおよそ20個保管されています。便座の中のフィルムに凝固剤を入れ、用を足し、ふき取ったティッシュも入れ、最後にリモコンボタンを押すと自動的にフィルムが送り出されて口をふさぎ、熱で圧着させて密封する仕組みです。手を汚さず臭いを閉じ込め、衛生的に汚物を処理できると近年普及しているそうです。

プライバシーの確保については、北斗市は避難所用の「室内テント」を備蓄しています。形や大きさが異なったり、屋根のないキューブ型のパーテーションだったりしますが、いずれにしても高さがありプライバシーを守ることができるものが、道南の他の市町でも備蓄されています。
テントの設営を市の職員の方に実演してもらったところ、大人2人で完成までわずか3分半。イラスト入りで作業手順が記されたシートが袋と一体になっていて、慣れていないとこれだけ早くは出来ないかもしれませんが、迷うことなく組み立てられるという安心感がありました。

聞き取り調査をしたところ、ここ数年の間に北斗市だけでなく多くの自治体がこうした物資を増やしていました。その大きな要因は「新型コロナの感染症対策」です。国の支援金などもあり、衛生面や密集を避ける観点から簡易トイレやテントなどを増やした自治体が多かったのです。道南でも18市町のうち少なくとも13の自治体が支援金を活用して備蓄資材を購入していました(担当者の異動などで当時の状況が不明の自治体もあるため)。

また北斗市ではテントの数に合わせ、床に敷くマット、折り畳み式の簡易ベッド、毛布、寝袋も備蓄されています。テントの中に一式そろえてみると、まるでキャンプに来たような気持ちになります。プライバシーを確保するだけでなく、避難所生活の負担を少しでも軽減できるような資材が用意されていることが分かりました。

北海道防災士会道南ブロックの伊藤友彦(いとう・ともひろ)代表は、災害時の感染症対策を講じる中で各自治体の防災への取り組みや意識も促進されたと指摘したうえで、次のように呼びかけています。

伊藤友彦さん
国の支援金の力も大きいですが、どの自治体も防災計画に沿って年々災害備蓄を充実させています。いざという時に避難所に向かうことをためらわないで欲しいと思います。

倉庫から物資を早く届ける工夫
北斗市の災害備蓄倉庫は建設の計画段階で2つの工夫が施されました。その1つが「倉庫の前に段差がない」ことです。これにより大量に輸送できるトラックが横付けできます。

もう1つは「入口がシャッター式」になっていることです。間口が広いためフォークリフトを使えば簡単に大量の物資を出すことが可能です。
災害の初動でいかに早く避難所に物資を届けるかを考えたうえでの工夫です。

ただ、避難所支援の初動をスムーズに行うための方法は自治体によって様々です。函館市は道南の他の自治体と比べて広く人口も多いので、物資を集中させるのではなく、できる限り分散して備蓄して各避難所ですぐに使えるようにしています。

手ぶらで避難はダメ!
しかし伊藤さんは、北斗市に限らずどの自治体もできる備えには限界があるため、各家庭で非常食や非常用持ち出し袋を用意し、避難所に行く時にはそれを持参してほしいと言います。

伊藤友彦さん
北斗市では6000人が1日過ごせる量の食料や水を備蓄していますが、市の人口は4万3000人以上です。これだけの人たちが何の備えもなく避難してしまうと対応しきれなくなります。自助、共助があって初めて公的な支援が機能する、ということ覚えておいてください。

非常用持ち出し袋に入れるものは高齢者や乳幼児がいるなど家族の状況によって異なります。以下の記事も参考にしてください。

非常用持ち出し袋 水害や地震や津波で避難する際に あなたや家族、ペットに必要なものは?|水害から命と暮らしを守る|NHK動画|事前の備えと早めの避難を

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