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ハザードマップに潜むリスク

  • 2023年9月26日

お住まいの地域の「ハザードマップ」、見たことはありますか?「洪水」「津波」「土砂災害」など、過去の災害データや地理情報をもとにその地域で起こりうる災害を予測し、被害の範囲を地図にしたものです。自治体の役場などで手に入れたり、ホームページで確認したりすることができます(地域の事情に応じて「地震」「火山」などのマップもあります)。

ハザードマップには避難すべき方向や避難場所なども記載されています。しかしそれらを見ただけで「避難所までの道順が書いてあるから大丈夫」、「私の住んでいるところは色がついていないから安心」なんて思っていませんか?
実はハザードマップだけでは分からないリスクがあるんです。

避難所にたどり着けない?!
「津波ハザードマップ」を見ると色の濃いエリアほど深く浸水することが示されています。避難場所は緑のマークで、避難路(自治体が参考に示した避難ルート)は赤い矢印で示されています。

北海道防災士会道南ブロック代表で高校教諭の伊藤友彦(いとう・ともひろ)さんは、自身が顧問を務める上磯高校の「防災クラブ」の活動で、北斗市の上磯駅周辺の地震・津波災害のリスクを生徒たちと調査しました。

伊藤友彦さん
ここは海と線路に挟まれた地域です。避難所は線路の向こう側なので、避難するためには必ず踏切を渡ることになります。

そして踏切まで来た時、ちょうど貨物列車が来ました。長い長い貨物列車がいったん来ると、なかなか遮断機が上がらず線路の向こう側へ行けません。
それを見ていた生徒があることに気がつきました。

防災クラブ部員
この路線は貨物列車が通ることが多いんです。大地震が来て緊急停車したら長距離に渡って線路がふさがれて向こう側に行けないかも…

ではその場合、どうやって線路を越えれば良いのでしょう。

地図を見ると踏切から1キロほど東に陸橋があり、そこまで行けば線路を越えられそうです。しかし伊藤さんは危険性を指摘します。

伊藤友彦さん
陸橋にたどり着く前に橋で川を通らないといけないんです。大地震で津波のリスクがある時に川を渡るのは非常に危険ですよね。そのルートは諦めた方が良さそうです。

実際通ってみると橋の上は片側一車線。車で早く避難しようと思っても、橋の付近で渋滞してしまうと逃げ場がありません。踏切より東側には避難ルートはなさそうです。ではどうすれば良いのか。ハザードマップをいくら見ても生徒たちは次の避難ルートをなかなか見いだせません。

すると伊藤さんは彼らを連れて踏切の西側にある上磯駅まで戻ってきました。ハザードマップの避難路には載っていないルートです。駅舎の階段通路で線路の北側へ移動するといいます。

伊藤友彦さん
避難路はあくまで参考であると北斗市も強調しています。想定外のことが起きた時の“う回路”を私たちがどれだけ知っているかが重要なのです。踏切だけでなく、事故や渋滞で道路や橋などが使えないことも考えられます。ハザードマップを見るだけでなく、普段から町を実際にあるいて景色や距離感を体で覚えておくと良いでしょう。

ハザードマップ上は安全 でも…
伊藤さんによると、こうした災害への準備はハザードマップで色のついた地域に住む人だけが考えることではないと言います。
なぜならハザードマップの「対象になっていない」災害リスクもあるからです。

① 中小の河川:洪水浸水想定区域の指定義務のない小さな河川があり、その場合川のそばにあるのに浸水リスクは表示されません。

② 用水路:洪水ハザードマップは河川が対象であり用水路は対象外です。ふたもない用水路は簡単に水があふれ、住宅の浸水や道路・田畑が冠水するリスクがあります。

③ 市街地:下水道(雨水管)の氾濫で引き起こされる町なかの内水氾濫については、ハザードマップを作成している市町村がまだ少ないのが現状です。
※国土交通省によると、想定最大規模の雨の内水浸水想定区域図は2022年9月末時点で、下水道による浸水対策を実施している1108の自治体と団体のうち約1割の122団体において作成済みとなっていて、2025年度末までに作成することを目標にしています)

年々ハザードマップの対象となる河川が増えたり内水ハザードマップの作成が促されたり、私たちに提供される情報は増え続けています。しかし地図だけを見て「安全だ」と思い込んでしまうのは危険です。伊藤さんは「ハザードマップを参考にしながら、自分の災害リスクにどんなものがあるか、街歩きをするなどして確認してほしい」と話しています。

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