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ヒグマカメラ~となりのヒグマを知る~ 0755DDチャンネル

  • 2023年7月20日

200万都市札幌で、毎年のようにヒグマが市街地付近に現れています。そうしたヒグマたちは本来、どんな環境に暮らしているのでしょうか。 森に自動カメラをとりつけ、定点で記録しました。
どんなヒグマがどこに暮らしているのか知ることこそが、ヒグマ対策にとって大事な一歩になっています。 

初回放送:2023年1月28日
番組ページはこちら

動物たちの通り道にレンズを向ける
 

ヒグマ観察用のカメラを設置したのは、札幌市の市街地を取り囲むようにある森の一角です。車で行けるところまで行って、そこから歩いておよそ30分。森の中に、けもの道が交差する地点を見つけました。
カメラには動物の動きに反応するセンサーが取り付けられていて、カメラの前を動物が通りすぎると、シャッターが切れる仕組みです。
どんな動物たちがここで暮らしているのか、6月15日から本格的な撮影を始めました。

 

ヒグマはいつ現れるの?

はじめに姿を現した野生動物はエゾタヌキでした。設置したその日の夕方。カメラを設置している時には、まったく動物の気配はなかったのですが、近くに潜んでいたのでしょうか。
タヌキたちが連日のように現れていた7月1日、最初のヒグマをとらえました。

その次にヒグマがカメラの前を通過したのは、それから一月後の8月2日。最初のヒグマとは体格の異なるメスのヒグマが写っていました。
それから11月28日にカメラを停止させるまでに、レンズの前をどんな動物が通り過ぎて行ったのか、まとめてみると・・・。

連日、カメラにシャッターを切らせたのは、エゾタヌキとエゾリス。特にタヌキは、冬が近づくにつれて、毛並みが変化していくのがはっきりわかりました。エゾリスは何かを地面に隠しているようでしたが、何度現地にいっても何を隠しているのかは見つけられず・・・。
ついでエゾシカ、ヒグマ。ヒグマたちの体の模様や、顔や体の形を見ていくと、繰り返し観察できたのは子供を3頭つれた母グマだけでした。8月半ばから、10月初めまでに、2週間に一回のペースでこのケモノ道を利用していました。

このほかにも、クマゲラ、コウモリ、テン、ノネズミ、シギが姿を見せ、200万人が暮らす大都市の近郊の森は、多様な動物たちが利用していました。

 

カメラトラップとヘアトラップで知るヒグマ

札幌市は学術機関と共同でヒグマの生態調査を継続して行なっています。2022年は近郊の森の中、15箇所に調査地点を設けて、自動カメラとあわせて、ヒグマの体毛を集めるための杭を設置しました。ヒグマが木の幹に背中を擦り付ける習性を利用した「ヘアトラップ」です。

体毛からはDNA情報を集めることができます。その場所に、どのヒグマがいたのか、個体を識別するのに使うためです。札幌市では2003年から139個体を識別してきました。

札幌市環境共生課 大堀武蔵さん
「市街地の周辺にヒグマが出てきた時に、たまたまやってきたクマなのか、それともずっと居ついているクマなのか、目撃情報だけではわからないので、こういう 生息状況を調査することで点と点が線になります」

 

DNA情報でたどる「出没」グマのそれまで

DNA情報で個体を識別することで、どうヒグマ対策につながるのでしょうか。2019年に札幌市南区の藤野地区・簾舞地区で出没を繰り返し、捕獲されたヒグマの例を見てみます。

このヒグマが最初に「識別」されたのは、2011年でした。奥山での調査で採取された体毛でDNA情報が確認されました。
次に存在が確認されたのは2014年、市街地に隣接した場所に現れていました。よく、2015年には果樹の被害を起こしていました。
さらに2018年になって、再び市街地の近くで存在が確認され、この頃には、身を隠すような場所がないところでも行動していました。

DNA情報で個体を識別して、そのころどんな行動をしていたのかを突き合わせることで、「履歴」を探ることができます。

札幌市環境共生担当課長 濱田敏裕さん
「過去に札幌市内に出没したヒグマが、どういった行動をしているのかといったデータも蓄積することができるので、あらためて出没した際に過去の履歴と比較することでどういった対処をするべきか判断材料になります」

さらに札幌市に寄せられたヒグマ情報を、このヒグマが出没を繰り返した2019年にと、翌年の2020年を比べると、その数が激減していることがわかります。

これは、多くの目撃情報は、「問題グマ」が各地に現れていたから、と考えられます。
すべてのヒグマが人間と軋轢を起こすのではなく、特定のヒグマが「問題」になっているとも言えます。

 

問題グマを出さないために

2022年8月、藤野地区を流れる野々沢川に草刈りのボランティアたちが集まってきました。野々沢川の沢沿いはイタドリが茂って見通しが悪く、ヒグマにとっては格好の通り道になりかねません。集まったのは4つの団体と町内会のメンバー。あわせて50人が一斉にヤブを刈り払いました。

この草刈りをめぐる実験が、同じ8月に、豊平川の河川敷で行われました。
実験を行ったのは、酪農学園大学の学生たち。ヒグマの実物大パネルを3枚、ヤブの端から5m、10m、15mの位置において、はじから草を刈ります。

草を刈る前、教えてもらえれば一番近いパネルがかろうじて見つかるくらい、あとの2枚はまったく見えませんでした。草を刈るのはヒグマ対策を体験しにきた高校の先生たち。
刈り進んでいくと、まずは1枚目の「ヒグマ」があらわれ、さらに6分後に2枚目。3枚目があらわになったのはその7分後でした。

草刈りに参加した高校教諭
「3頭いたんですねー 驚きました」

学生たちとともに、この日の草刈りに参加していたヒグマの研究者は―

酪農学園大学 佐藤喜和さん(環境共生学類教授)
「草をかると、やっぱりよく見えるようになりますよね。クマ的には嫌だと思います」

ヒグマカメラのページはこちらで見ることができます。記事リンクは随時更新中です。カメラは春以降、稼働させる予定です。
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