NHK札幌放送局

サケ日本一のまち 斜里町で web後編

0755DDチャンネル

2020年10月23日(金)午後3時00分 更新

北海道の各地から、「サケが不漁」の声が聞こえてくるなか、サケの漁獲量日本一のまち、斜里町の漁師たちは、海だけではなく、川に目を向けていました。彼らが目指すのは、ふ化放流に加えて、川で自然産卵するサケ・カラフトマスを増やすことでした。【web後編】
初回放送:2020年10月10日(土)あさ7時55分~
※web版動画 追加掲載しました。

若手サケ漁師 再び川を行く

斜里町の9月、カラフトマスが川にのぼってくる。カラフトマスは一斉に遡上し、一斉に産卵していく。川によっては、カラフトマスにぶつからないように水の中を歩くことが難しい。

そんな川のひとつ、ウトロ漁港に注ぐペレケ川の河原に、斜里町内2つの漁協の若手サケ漁師たちが再び集まった。今回、手にしているのは、巻尺、温度計、流速計、そして記録用紙。カラフトマスの産卵状況を調べて記録するためだ。

今回、調べるのは次の2つの区間。

1)遊歩道で気軽に入れる流れ、市街地に近いため、流路をコンクリートで固定している区間
2)高さ16メートルの防災用堰堤を魚道で迂回した上流にある、草やぶに囲まれた砂利底の流れ

それぞれ50mずつの間で、カラフトマスの親魚の数、ホッチャレの数、産卵床の数、環境を記録していく。
巻尺で50メートルを測る人、泳いでいるカラフトマスを数える人、ホッチャレを数える人、温度を測る人、流速を測る人、それぞれ役割を分担をして、調べ、記録していく。


石組みで遡上を助ける
サケ・マスの遡上を助ける方法に「石組み」がある。大きな石を並べて水の流れを変化させて、魚の休み場所を作ったり、誘導路を作ったりする。今回は、調査の途中に水路の落差のため、カラフトマスが滞留している場所を発見。
一行は、周辺から石を集めて、落差にかかる流れの途中に組み上げた。泳力がそれほど強くないカラフトマスが、流れの途中で一息入れる場所を作り、上流へ向いやすくするためだ。5分ほどの作業で、即席の石組みが完成した。

こうした漁業者が参加しての遡上障害への対応は、前編で紹介した魚道のメンテナンスや、河川の専門家の協力を得ながらのボランティア工事(=下の写真)など、斜里町内のサケ・マス遡上河川で続けられている。

web版動画 手作り工事で上流へ

産卵に適した場所とは

ことし(2020年)のペレケ川の産卵調査で記録されたのは…

砂利の少ない水路エリア
親魚:135 ホッチャレ:5 産卵床:2

砂利底の中流エリア
親魚:330 ホッチャレ:57 産卵床:43

ペレケ川には9月中旬までに5000尾のカラフトマスが遡上した。その資源を支えている産卵場所は、中流から上の砂利底のエリアであることがわかる。

こうした調査は、この4年間に斜里町内28の河川で行われてきた。その結果をもとに、カラフトマスの産卵場所を拡大させようとしている川がある。フンベ川だ。

治山ダムを越えて

フンベ川もカラフトマスが川幅いっぱいに遡上してくる川のひとつ。9月中旬、遡上最盛期の現地に入った。
河口から350メートルの場所に、高さ3.6メートルの治山ダムがある。堤体の直下のたまりを見るとカラフトマスたちの姿があった。時折、上流を目指して水中からジャンプする魚もいる。

「このカラフトマスたちをさらに上流にあげて、産卵域を広げたい」

漁業者でつくる団体(オホーツク南部広域水産業再生委員会)の要望を受けとめたのが、この治山ダムを管理する北海道森林管理局網走南部森林管理署だ。このダムと、もう150メートル上流にある治山ダムの2つに、魚道を設置することを決めた。

網走南部森林管理署・森 孝二 総括治山技術官
「魚道をつけることで、サケ・マスの資源量が増えて地域経済に寄与できるのであれば、森林管理署としても貢献したい。さらに、サケ・マスが山の奥までのぼってくることになれば、動植物の栄養源となり、森林生態系にもいい効果をもたらすと考えています」

大岩を使って…  現地検討会から
フンベ川にどんな魚道をつけるべきか。知床世界遺産の河川工作物に関する委員会のメンバーで安田陽一教授(日本大学/河川環境工学・魚道の専門家)と関係者が現地で検討会を開いた。安田教授が目をつけたのが、魚道予定地にある巨石群だった。

安田陽一教授
「しっかりとした巨大な石は、その場所から動かすよりも、その場にあるままに使うことができるのでは」

地山の地形と巨石を生かした石組みの魚道。新たな方法で作られた魚道を辿って、カラフトマスたちが上流の産卵場所にたどり着く日は、そう遠くない。

小さな力でもできること

魚道を、ホームセンターで手に入る材料で作ることができるとしたら…。
8月、その画期的な魚道が、斜里町内の畑作地の真ん中を流れる小川の1mの落差工に設置された。それがこちら。

金属パイプと木製の板を組み合わせて作る「ポータブル魚道」だ。魚が遡上する時期にあわせて運び込み、遡上が終われば外すことができる。
開発したのは香川高等専門学校の高橋直己講師(社会基盤・水工学)と学生たちの研究チーム。ポーターブル魚道の最大の特徴は、設計こそ緻密な計算に基づいているが、板材のカットはすべて直線、骨組みになる金属パイプを組み上げる金具も一般の工具で締め付けることができる。
現場で組み立て作業にあたったのは、漁協と役場の職員に、近隣自治体から手伝いにきた漁業関係者、そして香川県から現地に駆けつけた高橋さんだ。

ポータブル魚道の可能性
ポータブル魚道について、開発した香川高等専門学校の高橋直己講師は、土木工事で作る魚道とは違った「可能性」について話す。それは—

香川高等専門学校・高橋直己講師
「それほど大きくない落差を魚がのぼれるよう、関係する人たちが連携して少しアシストする、というような、市民レベルの魚道づくりができます」

特別な知識や技術がなくても魚道作りに携わることができて、目の前で魚が上流に向かうのを見ることができる。ポータブル魚道は、関わる人たちが、【チカラをあわせて水の生き物の手助けすること】を共有できるツールなのだ。

その先で

地域の漁業関係者たちの「サケ・マスの産卵域を広げたい」という思いを形にしたポータブル魚道。9月中旬、上流に向かう魚道の出口にレンズを向けると、数分もたたないうちにゴトゴトッと音を立てながら、カラフトマスが上流へ向かって行った。

落差工ができて以来、カラフトマスが泳ぐことがなかった上流側の流れでは、群れになった魚影をいくつも確認できた。
そのうちのひと組のペアに水中カメラを近づけて見た。小砂利のたまった場所を産卵場所と定めたメスと、そのメスにぴったりと寄り添うオス。産卵の準備が始まっていた。

2020年10月19日

web版動画(後編)はこちら

サケ日本一のまち 斜里町で web前編はこちら

前編では、サケの漁獲量日本一のまち 斜里町のサケの最前線、サケ定置網漁の現場がいま感じていること。漁業関係者が、ふ化放流に加えて、川でのサケ・マスの自然産卵に注目していること。町の博物館が開催中のサケの特別展についてお伝えしています。

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