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サケにとって大事な魚道ってご存知ですか?

  • 2023年9月13日

ことしもサケの遡上シーズンがやってきました。海から帰ってきたサケやサケの仲間たちは、中流から上流の産卵に適した場所まで川を遡ります。その時に欠かせないのが「魚道」です。 今回は、魚道のあれこれを特集します。

北のサケお兄さん 2023年9月14日放送
ほっとニュース道央いぶりDAYひだか 2023年9月19日放送
※9月28日追記 続報 真駒内川の布式魚道 サケがのぼりました

あの落差を越えてー

サケやサクラマス、カラフトマスが川を遡る時、川を横断して作られた人工物に阻まれる場合があります。砂防ダムや地産ダム、堰堤と呼ばれるのがそれです。

こうした工作物は、人の暮らしを守ったり、森を育てたりするために作られたものですが、魚にとっては障害物です。上流に産卵に適した場所があったとしても、コンクリートの壁に通せんぼされて、たどり着くことができないからです。

そこで「魚道」です。オホーツク海側の国有林にある治山ダムに、魚道が完成するまでを記録しました。壁面を迂回する水路は、小さな壁で区切られていて、魚は休みながら遡上できます。

この魚道が設置された2014年夏から秋にかけ、海から遡ってきたサクラマスが、魚道を見つけて上流へ向かいました。
この治山ダムは河口から30キロの地点にあります。サクラマスが魚道を通ってたどり着いた上流で産卵するのは、15年ぶりのできことでした。

魚道をのぼるサクラマス

魚道を設置して2年目の調査で、ダムの上流域での産卵床は200か所以上にのぼり、ダムより下流の産卵床の数よりも多くなったことがわかりました。魚道によって、産卵環境を取り戻した形です。

魚道を機能させるために

魚道は、魚たちがダムの上下に移動するのに欠かせない水路です。しかし、放っておくと、土砂や流木でつまったり、水が流れなくなったりする場合があります。
環境調査の専門家や魚道設計のエンジニアなどで作る「北海道魚道研究会」は、こうした魚道のメンテナンス活動に、ボランティアで取り組んできました。
7月、その活動のひとつが、札幌市中央区を流れる磐溪川にある落差工の魚道で行われました。
この魚道は、前の年にも魚道研究会がメンテナンスしてつまりを直していましたが、1年たたないうちに、再び魚道の入り口がつまってしまいました。

そこで今回、魚道研究会は、メンテナンスの前に、「つまらない魚道にするにはどうすればいいか」考えるワークショップを開きました。
この魚道は1985年度に完成しました。それから30年、魚道の考え方は進歩し、まわりの自然環境も大きく変化しているはずです。参加者は魚道の周囲を観察した上で改良案を話し合いました。

出た意見は—

  • 入り口のコンクリートを取り除いて土砂が溜まりにくくする
  • 魚道とは反対側の流路を盛り上げて水の流れを魚道側に向ける など

結論は出ませんでしたが、来年の活動に向けて、人力で改良する方法の検討を続けることになりました。
そのうえで、今回は、入り口にたまった土砂を取り除いて、石組みで流れを誘導することになりました。魚道は無事に流れを取り戻しました。

北海道魚道研究会の理事長の奈良哲男さんは今回のワークショップの意義を教えてくれました。

「水の流れを体感しながら、それを設計に反映させるというのは、なかなかできなかったこと。若い技術者がこの感覚をもって魚道の設計にあたることになれば、いい魚道が増えるはず」

右端が奈良さん

いま、サケたちを上流にあげるために

魚道を作るには、多額の予算と時間が必要です。しかし、各地にサケたちの行手を阻む落差はたくさんあり、そのすべてに魚道をつけることはできません。そこで、注目されているのが、取り外し式の魚道です。

そのひとつは香川高等専門学校が開発した「ポータブル魚道」です。ことし、斜里町内で2つの川の堰堤に取り付けられました。

ポータブル魚道の特徴は「参加できる」こと。設計こそ、専門家の力が必要ですが、材料の合板や鉄パイプはすべてホームセンターで揃います。
斜里町の魚道は、漁協の若手職員、町おこし協力隊員、アウトドア用品メーカー社員、役場の職員が力をあわせて制作、現地に運び込みました。
鉄パイプで台座を作り、箱状に組み立てたパーツをのせていくと出来上がりです。サケ・カラフトマスの遡上シーズンにみんなで組み立て、シーズンが終わったらみんなで外します。
斜里町の人たちが自然と共生するためにどんなことをしているのか知る場所としても注目されていて、ガイドツアーの訪問地のひとつにもなる予定だということです。

一方、札幌の真駒内川の落差には、寒地土木研究所と道が開発した「布式魚道」が今シーズン初めて設置されました。

鉄パイプの骨組みに、トラック用の幌布をかける構造で、材料費が安く施工期間も短くすみます。布でできているため、複雑な地形にあわせて流路を作ることができ、大規模な出水が予想される時は、固定具を外して布部分をたたんでやり過ごすこともできます。

骨組みにあわせてできる布のたるみは、魚たちの休息場所になり、撮影の際にも10センチほどのヤマメが次々に上流へ向かっていました。
NHK北海道では、この布式魚道に「サケカメラ」を取り付けました。
真駒内川にのぼるサケの姿を追って、特設ページ「サケカメラ」で、推移を紹介していきます。
※9月28日追記:真駒内川の布式魚道 サケがのぼりました

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