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広がるナプキンの設置 生理の貧困対策“先進地”広島の対策は

  • 2023年12月26日

 

経済的な理由で生理用品が買えない「生理の貧困」の解消に向けた取り組み。広島は全国的に対策が進んでいるって、ご存じでしたか?内閣府の調査によりますと、生理の貧困について対策を行っている自治体の割合は、2022年7月時点で、広島県で79%。全国で最も高くなりました。実際にどんな対策が行われているのか、調べてみました。

(広島放送局 記者 大石理恵)

利用は1日平均7.4個

2021年に県内でいちはやく、生理の貧困対策を始めた廿日市市は、市役所などの一部の女性用トイレに個包装のナプキンを置いています。

 

廿日市市役所のトイレにある生理用ナプキン

利用数は1日あたりの平均で7.4個。ひと月では148個に上ります。市では必要な時に自由に使ってもらいたいと、毎日欠かさず補充しています。

パックごと無料で配布も

窓口では、希望者にまとまった量のナプキンを無料で配布する取り組みも行っていて、シカのキャラクターを指さすことが意思表示になります。

 

私(記者)も実際に体験してみましたが、名前や事情を言わなくても1パックをその場ですぐに受け取ることができました。

 

紙袋に入ったナプキンを手渡してもらいました

しかし、窓口での受け取りは月に平均7件。トイレに設置されたものと比べると、利用は少ない印象です。

広島県によりますと、ナプキンを無料で配布する自治体は廿日市市のほかにも多くあるものの、利用は全体的に少ないということです。県は、対面での受け取りが恥ずかしいといったことが背景にあるのではないかと見ています。

しかし、ニーズがないわけではなさそうです。そのことがうかがえる国のデータがあります。

厚生労働省が2022年にインターネット上で生理の貧困の実態調査を行ったところ、新型コロナの感染拡大後に生理用品の入手に苦労したことが「よくある」、「ときどきある」という回答が、18歳・19歳であわせて12.9%、20代で12.7%に上りました。割合は若い年代ほど高くなりました。

 

こうしたことを踏まえ、廿日市市では、今後も必要な人に届きやすい方法を模索することにしています。

 

廿日市市人権・男女共同推進課 岡田浩美 課長補佐

廿日市市人権・男女共同推進課 岡田浩美 課長補佐
「貧困対策にとどまらず、どういう理由であれ、生理で困っている人に使っていただける環境を作るのが大事だと思います。そのためには周知や受け取りの方法をさらに検討していかないといけないなと思っています」

学校のトイレにも

子どもたちの支援に力を入れる自治体もあります。

 

府中市立第一中学校

府中市教育委員会では、2022年からすべての市立学校の女子トイレにナプキンを設置。ケースに入れて個室などに置いています。「生理で困ったことがあれば相談してほしい」と呼びかけるメッセージも添えています。

 

ナプキンが入ったケースが各個室に

これまでは保健室で直接受け取る仕組みでしたが、利用が少なかったそうです。教育委員会は、子どもたちにとっては、保健室に行くこと自体や、保健室でもらった生理用品をトイレに持っていくことへの抵抗感があったのではないかと分析。ナプキンをトイレに設置する方法に切り替えました。

3割「生理用品がなくて困ったことがある」

子どもたちの声も、設置を後押ししました。

教育委員会が小学5年生から中学3年生までの子どもたちにアンケートを行ったところ、女子の3割余りが「学校で生理用品がなくて困ったことがある」と答えました。想像していた以上に多くの子どもたちが、生理についての困りごとを経験していたことがわかりました。

今回、取材した府中市立第一中学校では、多い時で週3回、生徒自身がナプキンを補充しています。生徒にとっては、トイレットペーパーと同じようにトイレにナプキンがある光景が当たり前になってきているようです。

 

生徒たちが補充
女子生徒

個室にあるのはありがたいし、うれしい

女子生徒

突然生理がきた時は本当に焦る。そういう時にさっとナプキンを取って安心して授業を受けられるところがすごくいい

ナプキンの設置は、子どもがより安心して学校生活を送ることができる、そんな効果もありそうです。ちなみに学校によると、以前は「おなかが痛いです」と言っていた女子生徒たちが、最近は「生理痛です」とはっきり伝えるようになってきたそうです。子どもたちが生理について、オープンに口にできる環境が整いつつあると感じました。

「めがねと同じくらい必要なもの」

一方、生理のない男子はナプキンの設置をどう見ているのでしょうか。保健委員の生徒に聞いてみました。

 

男子生徒

僕も目が悪くて、コンタクトやめがねをつけることがあるけど、それと同じくらい生活から引き離せないものだと聞いたので、女子にとっては安心なんじゃないかなと思う

男子生徒

男女がお互いが違うことを知って認めてから支え合っていく理解の部分がとても大切だと思うので、そこをしっかりとしていきたい

男子生徒も、生理について、そして男女の違いについて理解しようとしている姿がなんとも頼もしく、印象的でした。府中市教育委員会では、生理の貧困対策は、性別を超えて、他者を思いやる心を育むことにもつながると期待しています。

 

府中市教育委員会 学校教育課 大川幸雄 課長

府中市教育委員会 学校教育課 大川幸雄 課長 
まずは子どもたちが安心して過ごせる学校づくりによって、いざという時にSOSを発信しやすい環境につなげていきたいと考えています。さらに他人の体調のことを考えたり配慮したりできる、そういった態度も育成していきたいと考えています。

必要な時に手に取れる環境を

県内の自治体や学校現場で進む生理の貧困対策。

全国に目を向けてみると、就学援助を行う家庭の子どもに生理用品を提供する、生理用ショーツを学校の保健室で配布するといった取り組みも行われています。

とりわけ見えにくい生理に関する問題ですが、生理用品は女性が生活する上でなくてはならないものです。経済的に困窮する人はもちろん、様々な理由で生理用品が必要な人が、必要な時に自由に手に取ることができる。そんな環境が、今後さらに広がることを期待したいと思います。

 

  • 大石理恵

    広島放送局記者

    大石理恵

    2004年入局
    広島県廿日市市出身
    ネットワーク報道部等を経て2度目の地元勤務中
    「生理=隠すもの」という雰囲気に長年モヤモヤしてきました




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