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どうする?自転車のヘルメット着用 中国地方で最下位の6.6%

  • 2023年10月26日

ことし4月からすべての人を対象に着用が努力義務化された、自転車のヘルメット。秋の全国交通安全運動の重点項目にも掲げられましたが、県内の着用率は低くなっています。警察庁がまとめた結果では、着用率は6.6%で全国ワースト10位。中国地方では最下位でした。自転車を利用する人たちの受け止めと、新たな取り組みを始めた高校を取材しました。

(NHK広島放送局記者 池本美優)

努力義務化から半年、街の様子は

着用の努力義務化が始まってからおよそ半年。街では、ヘルメットを着けている人の姿はまばらでした。

未着用の
50代女性

着けたいなとは思いますけど。汗をかきやすいので、秋になればかぶりやすくなるかなと思います

着用の
60代女性

妹にかぶった方がいいよと勧められてかぶっています。やっぱり命を守るために

未着用の
10代男性

自分は事故に遭わないだろうというような思いがあって、意識が低いかもしれないです。着用が義務づけられたら着けていくようにしていくかもしれません

9月30日まで行われた秋の全国交通安全運動の期間中、福山市と世羅町で、自転車に乗っていた人が車にはねられる事故があり、合わせて2人が死亡しました。警察は、広島市内で自転車に乗った人たちにチラシを配って、ヘルメットの着用を呼びかけるなど、対策を強化しています。

模索始めた学校では

こうした中、広島市中区の安田女子高校では、ことし4月から新たな取り組みを始めました。通学に自転車を使う生徒を対象に、ヘルメットの着用を学校として義務づけたのです。学校が、義務化にあたって重要だと考えたのが「選択肢の多さ」と「生徒の納得感」の2つだったといいます。

①選択肢の多さ
もともと着用が義務化されていた付属の中学校では、ヘルメットは指定された1種類だけでした。高校でも義務化するにあたって、この学校では安全性が確保できれば市販のものでも認めるようにしました。売店だけでも、5種類のヘルメットが販売されていました。

交通指導に取り組んでいる沢本竜一先生は、次のように説明しています。

安田女子高校 沢本竜一先生
「今までは白一色のものが決まっていたんですけれども、選択肢の幅が狭いかなとなり、生徒はかぶりやすいものであったり、自分にもっと合ったサイズのものを選べるようにしました」

②生徒の納得感
もう1つが、生徒自身がヘルメット着用の必要性を理解し、納得することです。学校では交通についての講習会を毎年開いていますが、ことし4月に開いた際はJAFの担当者を招いて、着用によって死亡率が低下することなどを説明してもらったといいます。

沢本竜一先生
「簡単に言うと規則を守りなさいって伝えるだけであれば、そんなに時間をとる必要がない中で、どうしてかぶらなければならないのか、どうして必要なのかを本人に考えてもらう。そうすることで、より理解は深まっていっているのではないかと思っています」

「納得」して着用を

こうした取り組みについて、生徒たちは…

高校1年生

髪型が崩れるんですけど、転んだ時はあったほうがいいのかなって思います 

高校3年生

ないほうが楽なので、最初は嫌だなと思いました。でも、自転車事故って結構多いとニュースでみるので、やっぱりもしもの時のためには大事かなと思ってます

高校1年生

自分の命を守ることができるからかぶってくださいって言われて、私もなるほどなと思ったのでかぶっています

規則だからと押しつけるのではなく、生徒に必要性を理解してもらうことでヘルメットへの抵抗感を減らしていったということですが、取材の中で、沢本先生は生徒からよく聞くという声を教えてくれました。

『大人はヘルメットを着けていないじゃないですか』とよく言われます。まわりはしていないのに、なぜ自分たちはしなければいけないんですかという点は、率直に言って共感できる部分もあります。

警察庁がことし7月時点の全国の地域ごとのヘルメット着用率を調査した結果では、広島県の着用率は6.6%と全国平均の13.5%を大きく下回る結果でした。
一方、海を挟んで隣の県の愛媛県では、着用率が59.9%で日本一でした。
その理由を調べると、愛媛県ではかつて自転車で通学する高校生が犠牲となる事故が相次ぎ、教育委員会が主導して通学時の着用義務化を進めたということでした。犠牲者が出たあとに対策を迫られることがないよう、私たち大人も「子どもたちが見ている」という意識を忘れず、着用が習慣化していけばと思います。

  • 池本美優

    広島放送局 記者

    池本美優

    2023年入局。広島県三原市出身、記者1年目。警察や司法を担当しています。

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