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どうなる?広島県の拠点病院の整備事業

  • 2023年10月13日

9月県議会に出された補正予算案は一般会計の総額で212億5200万円あまり。さまざまな事業が盛り込まれましたが、このうち拠点病院の整備事業について解説します。

(NHK広島放送局記者 小野慎吾)

岡崎アナウンサー

市内の病院を再編して、JR広島駅近くに拠点病院が建設されるんですよね?

小野記者

はい。9月8日に病院の基本計画が発表されました。改めてポイントをまとめます。広島市内のJR広島病院、県立広島病院、中電病院、そして広島がん高精度放射線医療センター。この4つの医療機関を統合して、JR広島駅前の東区二葉の里に新しい拠点病院を整備するというものです。

新しい病院にはどんな特徴があるんですか?

病床はおよそ1000床。最新の医療設備も導入され、東京や大阪の病院にも匹敵する、全国トップレベルの医療を受けられるとしています。さらに期待されているのが、医師を呼び込む人材育成拠点としての役割です。

令和2年の都道府県別の人口10万人あたりの医師の数ですが、広島県は「全国」をわずかに上回っています。ただ、医師の増加数で見てみると…。

あれ、今度はだいぶ少なくなりましたね。

2002年から18年にかけての10万人あたりの医師の増加数は44人。これは全国で下から数えて5番目の少なさです。

どうしてなんでしょう?

その理由のひとつとして考えられるのが、若手医師の不足です。
県によりますと、若い医師や研修医が勤務先を選ぶ際に「多くの症例を経験できる」ことや「指導体制が充実している」ことを重視する傾向があるということなんです。こうした若い世代の医師が、主に首都圏の病院に集中している状況が続いているとしています。
さらには専門家からは、こんな指摘も出ています。

地域医療や病院経営に詳しい 城西大学経営学部 伊関友伸教授
全国的に見ると広島県は最近ではあまり医師が集まる県ではない状況にあります。特に山間部の地域では医師不足が非常に深刻な状況です。単に広島市の中の病院の拡大ではなくて、広島県全体に医師を送るための病院として、今回の統合というのが検討されている。その方向性は私は間違ってないかなというふうに思っております。

より多くの医師を広島に呼び込んで、足りない地域にも医師を送るという大きな役割を持った病院なんですね。

そのとおりですが、気になる点もあります。それは費用です。

こちらの数字は、県が示している新たな拠点病院の整備費用の見通しです。

すごい金額ですね…。

湯崎知事は、事業費は建築単価や借入金の金利の一定程度の上昇も見込んだものになっていると説明しています。しかし、議会からは「約1400億円という試算の根拠が不明だ」とか、資材価格の高騰が続くなか、最終的な費用はさらに膨らむのではないかといった指摘も出ています。

それだけの費用を県や病院だけで負担できるんですか?

整備費用の一部は国が肩代わりする見通しですが、専門家はそれでも財政的な懸念は残ると指摘しています。

伊関友伸教授
整備費用としては異例の金額であることは確かだと思います。やっぱり財政的に本当に大丈夫なの?というのは、心配は多少あります。1300億、1400億の全てが広島県や病院の返済に求められるわけじゃなくて、その6割程度を県と病院で返済していくことが必要です。その金額自体もかなり大変な金額ですので、建設費の圧縮や、新しいいわゆる経営改善等の試みも積極的に行う必要がある。

整備費用がかさんだ結果、赤字経営になって、税金で補填をし続けるという事態は避けてほしいですよね。

はい。そして専門家が指摘するもう1つの課題は、地域の住民の理解です。特に統合される病院があった地域の人たちの理解が欠かせないとしています。

伊関友伸教授
やっぱり身近な病院がなくなることの不安とか心配というのは正直あるとは思います。そこへの十分な説明と目配りは必要。新しく統合した病院が、皆に祝福されて幸せな出発ができるように、やっぱり丁寧な対応をしていくことがものすごく重要だと思います。

これだけの大きな事業ですし、県民の声を丁寧に聞いて進めてほしいですね。

はい。県民の命に関わる医療の拠点が、今後どのような形で整備されることになるのか、今後も注目していきたいと思います。

  • 小野慎吾

    広島放送局 記者

    小野慎吾

    スポーツ紙記者を経て2016年入局。岐阜局、スポーツニュース部を経て2022年2月から現所属。8月から広島県政担当に。

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