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廿日市市宮島でコッペパンに挟む “祖父の味”

  • 2023年08月28日

廿日市市の宮島でコッペパン専門店を営む男性がいます。男性は県外から、祖父の暮らす廿日市市へ移住し、店を始めました。パンに挟むのは、祖父から引き継いだ、宮島伝統のあの味です。

(広島放送局記者 大石理恵)

宮島にあるコッペパンの専門店です。
最も人気なのは、伝統のこしあんを使った「あんマーガリン」。
店を訪れた人は…

「おいしい」
「きのう来ようと思ったんですけど売り切れていてわざわざきょう朝来ました」

店を営む早川秀樹さんです。かつて、祖父がもみじまんじゅうを製造・販売していた「勝谷菓子舗」があった場所で店を開いています。

おじいちゃん子だった早川さん。両親と千葉で暮らしていましたが、たびたび宮島を訪れ、祖父と釣りや畑仕事をして過ごしました。

早川さん
この場所が好きだったので、本当に学校の休みには必ず来て、おじいちゃんと過ごすのが定番になってましたね。ここ(宮島)に来たらなんか人生楽しくなるんじゃないかみたいな感じの場所でしたね、祖父を見てたら。

もみじまんじゅうの店は祖父の体調不良に伴い閉店しました。早川さんは大学卒業後、千葉で教師をしていましたが、30代の時、家族とともに廿日市市へ移住。2018年に、コッペパン専門店を始めました。きっかけは、祖父が施設に入ったことでした。

早川さん
「あんこをこうやって絞ってカステラをこうやって作って」みたいな話を、認知症も始まっていたから毎回同じような話をするんですけど、祖父の顔がすごい楽しそうというか生き生きとした感じだったので、祖父が元気なうちに勝谷がもう1回復活したよというのを見せてあげたいと。

伝統を受け継ぎたい。早川さんは「勝谷」の店名を継ぎ、祖父のこしあんをふんわりとしたコッペパンに挟むことにしました。東京でコッペパンがブームになっていたことも追い風になると考えました。

しかし、ひとつ課題がありました。まんじゅう用のこしあんは、パンに塗るにはかたすぎました。周囲からは改良を勧められましたが、早川さんは、祖父のレシピ通りに作ってもらうよう、あんの製造業者に依頼。その代わり、パンに塗る道具を変更することにしました。

早川さん
木べらで塗るとどうしても木べらの方が負けてしまうようなあんこのかたさだったりするので、金属製のへらで塗るようにして、とにかく祖父のあんこを使いたいというのが一番だった。

経営は新型コロナの影響で思うようにいきませんでしたが、最近は観光客が戻り、多い時期には1日平均900個を売り上げています。メニューも、お好み焼きや広島名物のがんすなど28種類に増えました。

祖父は開店から2年後に亡くなりました。最後まで孫のコッペパンを好んで食べていたそうです。

早川さん
「何がいい?」って聞いてもやっぱり「あんこ持ってきてくれ」って、入れ歯でまともにかめないだろうによく食べてましたね。

早川さんは、祖父が晩年を過ごした廿日市市の施設でもパンを販売。お年寄りにバイキング形式で楽しんでもらう試みも行っています。祖父がつないでくれた縁を大切に早川さんは大好きな宮島にこれからも貢献したいと考えています。

早川さん
やっぱり祖父のあんこをみなさんに食べていただきたい。宮島に行ったらあそこに食べに行きたいって思ってもらえるようなお店になりたい。宮島をもっともっと盛り上げることがやりたいなと。

早川さんはパンの販売だけでなく、さまざまな形で地域を盛り上げたいと考えていて、教師だった経験を生かし、島の子どもたちを集めた科学教室なども計画しているということです。

  • 大石理恵

    広島放送局記者

    大石理恵

    2004年入局 
    広島県廿日市市出身
    2回目・5年ぶりに地元広島で取材しています

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