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広島 福山市 公園の遊具が使えず子どももがっかり どうして?

  • 2023年08月24日

青いシートでぐるぐる巻きのすべり台。子どもが大好きなすべり台やブランコなどの遊具が、突然「使用禁止」に。いま、福山市が管理する公園で、200基もの遊具が使えなくなっています。なぜ使えないの?いつ使えるようになるの?調べてみました。

(広島放送局 福山支局 橋本奈穂)

公園で遊びたいのに…

この問題に気づいたきっかけは、子どもと一緒に公園に遊びに行ったこと。これまで遊べていた遊具が、ある日突然、使えなくなっていたんです。その後、意識して福山市内の公園を見てみると、いろいろな公園で遊具が使用禁止になっていることがわかりました。

使用禁止になっている公園の遊具

どんな遊具が使えなくなっているのでしょうか。多かったのは、すべり台やブランコでした。市によると、鉄棒やジャングルジムもあるそうです。青いシートでぐるぐる巻きになったまま、半年以上たつ遊具もあります。ふだん遊具で遊ぶ子どもたちや、公園の近くに住む人たちは、どう感じているのでしょうか。聞いてみると…。

小学生の
男の子



 

遊びたい!

公園の
近所住民

休みのたびに、多くの子どもたちが、使えなくなった遊具で遊んでいた。残してほしいけど、いつごろ直るのだろう?

使えない理由は「安全基準」

そもそも、なぜ遊具が使えなくなっているのか。公園を管理している、福山市の公園緑地課の担当者から、現場で説明を受けました。

例えば、こちらのブランコ、座面が固定されて遊ぶことができません。

使えないブランコ

ことし1月から、使用禁止になっているそうです。なぜなのでしょうか?

福山市公園緑地課 田辺尚史 課長
「ひとことで言えば、遊具の安全基準を満たしていないからです」

「遊具の安全基準」って何?この疑問に、遊具の高さなどを測定する器具を使いながら説明していきます。

福山市公園緑地課 田辺尚史 課長
「まずブランコの高さが、2.5メートルです。そこに1.5メートルを足した距離、つまり4メートル。ブランコの後方の4メートルの範囲の中に、コンクリートの側溝があります。これが危険ということで、使用禁止にさせてもらっています」

コンクリートの側溝が危険とは。正直、思いつきませんでした。

実は、このブランコの前と後ろ、それぞれ4メートルの範囲は、「安全領域」と呼ばれ、遊具を安全に利用するために必要な空間とされています。

この空間の中に、柵やコンクリートなどの硬い構造物があると、子どもが遊具から落ちてぶつかったときに重大な事故につながる可能性があり、硬いものがない状態にしなければならないと、安全基準で定められているのです。

「安全領域」は、遊具の種類や大きさによっても変わります。こちらのすべり台は。

すべり台からコンクリートまでの間隔が70センチ

福山市公園緑地課 田辺尚史 課長
「すべり台の踊り場から90センチの中に、コンクリートの硬い構造物があると危険という判断になります。このすべり台ですと、70センチのところにコンクリートの水路があるので、使用禁止の措置をとらせていただいています」

安全基準を見たさない遊具の中には、こんなものもあります。

画像提供:福山市

この遊具の使用禁止の理由は、すき間に頭がひっかかる可能性があるため。胴体が入っても頭が抜けないことがあるというのです。

この遊具、設置されたときには、問題はありませんでした。しかしその後に制定された安全基準に、すき間の幅が合致しませんでした。そのため、重大な事故につながる恐れがあると診断されたのです。

遊具は今年度中に撤去の予定

市は、これらの遊具について、今年度中に撤去、もしくは硬い構造物を取り除くなどの対応をすることにしています。撤去したあとに再び遊具を設置するかは、公園のある町内会と話し合い、ニーズを聞いて決める方針だといいます。

福山市公園緑地課 田辺尚史 課長

福山市公園緑地課 田辺尚史 課長
「利用者の安全を最優先に考えて、使用禁止としています。1日も早く利用者の方に安全安心に使っていただけるよう取り組んでいきたいので、ご理解いただけるようお願いいたします」

遊具の安全基準とは

なぜ、こんなにたくさんの遊具が、一度に使えなくなってしまったのでしょうか。それは、やはり「安全基準」と関わりがあります。今回、使用禁止の根拠となったのは、遊具メーカーなどで作る「日本公園施設業協会」が、21年前の2002年に作成した安全基準です。その後、最も新しいものは2014年に改訂されています。

福山市は、市内の公園に設置された遊具の多くが、設置から30年以上たっていることから、遊具の劣化状況の点検は行ってきていましたが、4年前まで、安全基準に基づいた点検は行ってきていませんでした。しかし4年前、総務省の行政評価局から指摘を受け、その後3年かけて市内およそ2200か所のすべての遊具の点検を行い、その結果、基準を満たさない遊具が次々と見つかってしまったのです。

広島県内のほかの自治体は…

今回の問題を受けて、広島県内のほかの自治体に、安全基準に基づいた点検を行っているかたずねたところ、多くの自治体で行われていました。一方で、直近では記録がなく、行っているかわからないという自治体や、危険があると診断された遊具も使用禁止などの対応をとらず、利用を続けているという自治体もありました。

専門家「すぐに修繕を」

安全工学が専門で、子どもの遊具の事故にも詳しい、東京工業大学の西田佳史教授は、基準を満たしていない遊具は、決して放置してはいけないと指摘します。

東京工業大学 西田佳史教授
「遊具の安全基準は、過去に発生した重大事故を踏まえて作られているので、基準を守っているかの点検は絶対に必要だ。点検に際しては、一般の人が遊具の危険性を見抜くのは難しいので、専門家の目で見てもらうことが大切だ。そして、危険性がわかれば、すぐに使用禁止をかけて修繕し、安全に遊べるようにする必要がある」

さらに、遊具を管理する自治体に対しては、こんなことを求めました。

東京工業大学 西田佳史教授
「遊具の修繕に必要な予算を、あらかじめ取っておき、すぐに対応できるようにしてもらいたい。遊具の事故で、大けがをしたり亡くなったりした子どももたくさんいる。子どもの命を守るためにもしっかりと対応してもらいたい」

取材を続けます

子どもたちの安全にも関わるこの問題については、今後も取材を続けていきたいと思います。是非、身近な事例や知りたいことがありましたら、情報やご意見をお寄せください。
 

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  • 橋本奈穂

    NHK広島放送局記者

    橋本奈穂

    2009年入局 青森局や首都圏センターなどを経て、2回目の広島勤務。故郷の福山で育児と取材に奮闘中。

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