ページの本文へ

ひろしまWEB特集

  1. NHK広島
  2. ひろしまWEB特集
  3. ブラインドサッカー アフィーレ広島BFC代表 相川貴裕さん 木村文子さん・STU48川又優菜さんと聞く

ブラインドサッカー アフィーレ広島BFC代表 相川貴裕さん 木村文子さん・STU48川又優菜さんと聞く

  • 2023年06月29日
(左から)川又優菜さん 相川貴裕さん 木村文子さん

7月2日にブラインドサッカーの「西日本リーグ2023 in 広島」が広島市で開かれます。広島を拠点に活動するブラインドサッカーチーム「アフィーレ広島BFC」の代表、相川貴裕さんが「ひろしま コイらじ」に出演。木村文子さん(エディオン女子陸上競技部 アドバイザー)、川又優菜さん(STU48)と競技の魅力や普及への思いを伺いました。

(広島放送局 アナウンサー 武本大樹)

広島スポーツ界を支える“汗かき屋”

相川貴裕さんは、山口県岩国市出身の43歳。岩国高校から早稲田大学に進学し、大学卒業後はトレーナーになりたいという夢を叶えるため、鍼灸師やアスレティックトレーナーの資格を取得。2008年に視覚障害のある人たちが通う広島中央特別支援学校の教員となり、2015年に中国地方で初めてのブラインドサッカーチーム、「アフィーレ広島BFC」を立ち上げ、初代監督に就任しました。おととしの東京パラリンピックではメディカルスタッフとして日本代表をサポートしたほか、ダイソー女子駅伝部や全国男子駅伝の広島県チームのトレーナーも務め、さまざま形で広島スポーツ界を支える“汗かき屋”です。現在は、広島文化学園大学人間健康学部スポーツ健康福祉学科の准教授も務めています。

ブラサカチームを立ち上げたきっかけ

木村)実は相川さんには10年以上前からお世話になってきたんです。私が2010年の国体に出場した時、広島県チームのトレーナーが相川さん。トレーナールームでたくさんお話を聞いてもらいましたよね。
相川)懐かしいですね(笑)。もうすでにお姉さん的な感じで、チームをまとめて、盛り上げて、という存在でした。自分の考えもしっかり持っていてアスリートとしてすごいなと思っていました。
川又)そんなに昔からの付き合いだったんですね!相川さんはトレーナーとしてたくさんの選手たちをサポートされてきましたが、パラスポーツに関わろうと思ったきっかけは何だったんですか?
相川)僕は中学、高校生で陸上をしていました。その時に治療していただいていた鍼灸師の方が視覚に障害のある方でした。そのご縁で、何か障害のある方と関わる仕事をしてみたいなという思いが心のどこかにずっとありました。トレーナーもしたかったし、そういうこともしたかった。それがきっかけで特別支援学校の教員になりましたし、今もパラスポーツに関わらせてもらっています。
川又)ブラインドサッカーチームを立ち上げようと思ったのはどうしてですか?
相川)8年間、特別支援学校に務めてすごく良い経験をさせていただきましたが、もっとトレーナーとして臨機応変に選手たちをサポートしたいという思いが強くなりました。特別支援学校は退職することにしましたが、何か恩返しをしたいなと思ったのがきっかけです。
木村)いろんなスポーツがある中で、ブラインドサッカーにしたのは?
相川)ブラインドサッカーは見たことがある方はわかると思いますが、衝突のリスクがすごく高い。特別支援学校の体育の授業でブラインドサッカーを選ぶのはすごくハードルが高いんです。僕も特別支援学校の教員でしたから、その気持ちはよくわかります。それならば、学校の外にクラブチームを作って多くの人たちに楽しんでもらいたいと思いました。
武本)思いを共有できる仲間がいたことも、相川さんの後押しになったんですよね。
相川)そうなんです。僕は今、「アフィーレ広島BFC」の代表をさせてもらっていますが、「アフィーレ広島」にはいくつかの障害者サッカーチームがあります。腕や足に障害のある「アンプティサッカー」「電動車いすサッカー」などです。アフィーレ広島を立ち上げ、アンプティサッカーチームを作ったのは坂光徹彦さん。坂光さんとパラスポーツ指導員の講習会で偶然出会いました。障害者サッカーの輪を広げたいという坂光さんの熱意もうかがって、アフィーレ広島の中にブラサカチームを作らせていただくことにしました。本当にご縁ですよ。
川又)最初は相川さんがブラサカチームの監督も運営も。大変ではなかった?
相川)今はサッカーの経験豊富な方に監督をやっていただいていますが、当時は「何でも屋さん」でしたね(笑)。もちろん指導もしますけど、練習場所をとったり、人を集めたり、スポンサー集めたり。最初は選手は4、5人くらい。少しずつ人が増えて、いろんな方々に応援していただけるようになりました。

ブラインドサッカーの醍醐味

木村)優菜ちゃん、ブラインドサッカーを体験したことがあるんだって?
川又)そうなんです!一度体験したことがあるんですけど、とても難しかった…。
武本)ブラインドサッカーは5人制。フィールドプレーヤー4人とゴールキーパー1人。ゴールキーパーは視覚障害のない選手、または弱視の選手が務めます。コートの大きさは、縦20m、横40m。フットサルコートの大きさです。
木村)相川さんにボールをお持ちいただきました。優菜ちゃん、ボールを振ってみて。
川又)(カラ、カラ、カラ)鈴が入っています!普通のサッカーボールよりちょっと重たい気がします。
木村)もうひとつ使うのがアイマスク。優菜ちゃん、付けてみると…。
川又)何も見えないですよ…真っ暗です。
木村)皆さんが想像しているよりもアイマスクは分厚いと思います。相川さん、視覚に障害がある人たちが行うブラインドサッカーなのに、アイマスクを使うのはどうしてですか?
相川)視覚障害の方の中には全盲の方だけではなく、弱視の方もいらっしゃいます。国内の大会では視覚に障害がない人も人数に制限はありますが、アイマスクをすれば出られます。条件を同じにするためにみんなが全く見えない状態を作るんです。
木村)見えない状態で安全にプレーするために声かけが大事だと聞いています。どんな声を出すんですか?
相川)ボールを取りに行く選手は必ず「ボイ」という声を出さないといけません。スペイン語で「行く」という意味です。「ボイ」という声を出しながらボールを取りにいかないとファールになります。
川又)へえー!じゃあ、試合中はずっとボイ、ボイですね(笑)。それ以外の声かけはどんなものがあるんですか?
相川)フィールドプレーヤーに対しての指示の声は、エリアで手分けをしています。コートを3分の1に分けて、守備側の3分の1はゴールキーパー、真ん中は監督、攻撃側はコーラー(ガイド)が指示を出します。コーラーは相手ゴールキーパーの後ろにいて、「ゴールまでの距離は6メートルだよ」「ゴールの左45度にいるよ」と言いながら、選手を誘導していきます。
木村)コーラーの声が選手の感覚になっていきますね。選手だけではなく、全員がチームですね。
相川)そうです、そうです。ブラインドサッカーは5人の選手と監督、コーラー、サポーター、合わせて8人がひとつになってこそのスポーツだと思います。ちなみにチーム名の「アフィーレ」は「8本の矢」を表すドイツ語から来ています。毛利元就の3本の矢よりももっと結束が固いですね(笑)。
川又)相川さんは監督も務めていましたが、視覚障害のある選手たちにどうやってスキルを教えてきたんですか?
相川)全く見えない選手には本当に難しいですよ…動きをコマ送りみたいにして教えています。例えば、シュートを打つまでの動きを8コマくらいに分ける。「足をどれくらい引くか」「ボールのどこに足を当てるのか」など、ひとつひとつ伝えていきます。それをいかに連続した動きに変えていけるかがポイントになると思います。

パリを目指す期待の星!

武本)パリパラリンピックを目指す広島出身選手がいます!熊野町出身の後藤将起選手、38歳です。後藤選手はどんな選手ですか?
相川)彼は30歳をすぎて視覚に障害が出てきて、特別支援学校に入ってきました。もともとサッカーをしていたこともあり、アフィーレ広島BFCで活動するようになりました。彼には日本代表になりたいという強い思いがあり、代表活動もしやすい東京に行くことを決めました。今は横浜のチームに期限付き移籍をして、家族を残して単身で東京に行っています。
木村)すごい覚悟ですね。
相川)彼は5月にブラジルで行われた国際大会で日本代表デビューも果たしました。積極的な攻撃参加で、ブラジルに次ぐ準優勝にすごく貢献していましたよ。
木村)「アフィーレ広島BFC」から日本代表選手が出るのは、チームにとっても大きな励みになりますよね!
相川)本当にそうです。チームとして日本一になることと、チームから日本代表を出すことの2つが僕らアフィーレ広島BFCの目標です。まずは1つがかないつつあるかなと。もちろん彼がパリに行ってから本当にかなったことになると思いますけど(笑)。

広島でブラサカを応援しよう!

武本)ブラインドサッカーには、全国を4つのブロックにわけた「地域リーグ」があります。アフィーレ広島BFCは西日本リーグに所属。5月の山口県周防大島町でのシリーズでは2連勝!7月2日に「西日本リーグ2023 in 広島」が広島県立総合体育館(広島グリーンアリーナ)で開催されます。相川さん、見どころは?
相川)初めてグリーンアリーナで開催していただくので、ぜひ優勝したいと思っています。誰でも見られるように入場は無料なので、ぜひまず見て知っていただきたいです。お気軽に足を運んでいただいてブラインドサッカーを見に来ていただければうれしいなと思っています。
木村・川又・武本)応援しています!

ページトップに戻る