中国山地の山間に 再び金メダルを!
- 2023年06月07日
月曜から木曜の夕方にラジオ第1で放送しているひろしまコイらじ。5月8日(月)の放送に、ソフトテニスチームどんぐり北広島の高橋乃綾(たかはしのあ)選手が出演しました。今年秋に中国で開催されるアジア大会の日本代表に内定している高橋選手。大会への意気込みや北広島町でソフトテニスに取り組むやりがいなどを語りました。凝縮してご紹介します。
(報告:佐藤洋之アナウンサー)
岩手県奥州市出身の高橋乃綾(たかはしのあ)選手は26歳。小学生の時、ソフトテニスを始めました。北海道の高校を卒業後は、2015年に発足したソフトテニスチームどんぐり北広島で競技に打ち込んでいます。2018年のアジア大会ではシングルスと団体で金メダルを獲得。今年のアジア大会では連覇に挑みます。
ソフトテニスに打ち込む高橋乃綾選手
ソフトテニスは、ネットを挟んでノーバウンドかワンバウンドでボールを打ち合うスポーツです。
1ゲーム4ポイント先取で、4ゲーム先取か5ゲーム先取で行われるのが一般的です。
ルールはテニスと似ていますが、使用するボールが異なります。
硬式のボールはフェルトで覆われていますが、ソフトテニスはゴムだけで、重さはおよそ半分の30グラムほどです。
ラケットもテニスと比べて軽いそうです。柔らかいボールを思い切り振って打つため、ボールはひしゃげて、バウンドすると不規則に回転することもあります。
高橋乃綾選手
「ゴムのボールは、柔らかいので、力を入れてラケットを振らないと飛んでいきません。
打つのは難しいと思うかもしれませんが、ボールにいろんな回転をかけられ、自由自在に操ることができるところが楽しい競技です」
岩手県出身 日本を代表するあの野球選手と同郷!
※奥側のコート左側の子どもが高橋選手
スポーツ大好きで、バスケットボールや水泳に取り組んでいた高橋選手。
小学1年の時、自宅でゲームをしているとき、その場に居合わせた父の知り合いのソフトテニスのコーチに勧められました。
「リズムに合わせて太鼓をたたくゲームをしているとき『バチさばきが上手なのでソフトテニスに向いている。東北で1位にしてあげる』と言われ競技を始め、ソフトテニス1本に絞りました。
バチさばき?当時はピンときませんでしたが、大人になって、バチをさばく手首の動きはソフトテニスでも大事だなとよく分かるようになりました」
素質を見込まれた高橋選手ですが、小学生のときも中学生のときも、目標の東北1位になることはできませんでした。
地元の高校への進学を検討していましたが、北海道の札幌龍谷学園高校に勧誘され、この学校なら日本一を目指せると考え越境進学。しかし、高校時代、全国大会ではベストエイトまであと一歩というところで敗退しました。
「余談ですが、尊敬する人は、同じ岩手県奥州市出身で大リーグの大谷翔平選手。私が2つ年下で、直接話したことはありませんが、私の友人が大谷選手と仲が良いです。人間性が素晴らしく、誰からも応援されるところを尊敬しています」
高校卒業後、高橋選手は、当時の日本代表中本裕二(なかもとゆうじ)監督が指導していた広島の実業団チームに誘われました。
「高校時代、複数の学校が参加する合同合宿が全国各地であり、そこで私を見た他県の先生が、私のことを中本監督に推薦しました。
すると、中本監督は当時自分のチームに所属していた日本代表選手の映像をDVDに編集し送ってくださいました。中本監督のもとなら日本一になれそうだと思い広島に来ることにしました」
どんぐり北広島で実った高橋選手
高橋選手が広島に来た翌年の2015年、中本監督は、地域密着のソフトテニスのクラブチーム「どんぐり北広島」を立ち上げました。
チームに所属する選手は現在7人。全員、北広島町内で働きながら、ソフトテニスの練習に励み、国内や海外の各大会に出場しています。
高橋選手の職場は、北広島町役場内にある地域づくりセンター。平日の日中は、地域交流の行事を企画し参加したり、図書の貸し出し業務に携わったりしています。 ソフトテニスの練習は、平日は午後6時から9時まで、土日は午前10時から午後5時まで行います。
高橋選手はじめ選手たちは県外出身ばかりで、町内で一人暮らしをしていて、基本的には自炊です。
練習で疲れた選手たちに、町内の有志の方々が弁当や食事を提供してくれることもあります。
「平日の夜にもかかわらず練習を応援に来る方もいらっしゃいます。私たちは、地域の方の応援や支援があって活動できているチームなので、感謝しています」
日頃の感謝の思いを込めて、どんぐり北広島では、月に一度、普段練習する豊平総合運動公園で、ソフトテニスの講習会を開催しています。
「毎回、小さいお子さんから大人の方まで年齢も経験も問わず楽しんでいただけるように教えています。中には北海道から来る方もいます。いろいろな方に来ていただきたいです」
北広島の皆さんの支援を受ける高橋選手は、チーム発足から2年目の2016年。
国際ソフトテニス札幌大会で、チームメートの半谷美咲(はんがいみさき)選手と組んだダブルスで、優勝。初めて頂点に立つことができました。
「中本監督は自由にプレーさせてくれる方です。教えられたことを忠実に実践し、のびのびプレーしたら優勝できました。監督から教えられたことは間違っていないと実感し、自信もつきました」
再び アジア大会で金メダルを
勢いに乗った高橋選手は、2018年インドネシアで開催されたアジア大会の日本代表に選出されました。オリンピック競技ではないソフトテニス。
4年に一度の国際総合競技大会のアジア大会と、2年に一度のソフトテニス世界選手権が選手にとって大きな目標となります。
2018年のアジア大会では、シングルスで強豪の韓国や台湾の選手を破って優勝。団体でも金メダルを獲得しました。
「初めての日本代表としての試合でしたが、しっかり練習を積めていたので自分がどこまで勝ち上がれるか楽しみでした。気負わず臨めたことが良かったと思います。
ただ、現地では体調を崩してしまったこともあって全然実感が湧きませんでした」
現地では実感が湧かなかった高橋選手がようやく金メダルの快挙達成を実感したのは、帰国後、広島駅に着いた時でした。
「改札の外側に、北広島の人たちが横断幕持って出迎えてくださいました。サプライズの歓迎にぐっときたとき、金メダル取ったんだと実感が湧いてきました。大会前、北広島の壮行会で『金メダルを取ります』と宣言していて、『言ったことは絶対やるんじゃのお』と、地元の方に喜んでいただいたことがうれしかったです」
2019年の世界選手権では、ダブルスと団体で金メダルを獲得した高橋選手。 2022年は、全日本シングルス選手権とミックスダブルス選手権で優勝。安定した成績を残し、今年秋のアジア大会の日本代表に再び選出されました。
高橋乃綾選手
「今回は、シングルス、ミックスダブルス、団体で3つの金メダルを持ち帰れるように頑張ります。年齢的には、この先いつまでも現役を続けられないので、悔いのないようにやりきりたいです」
このWEB記事を見てくださった方にもメッセージをただきました。
静かな語り口からは想像しづらいですが、高橋選手は2018年のアジア大会で金メダルを獲得したときは、大きな声で喜びを表したそうです。
今回も高橋選手の有言実行の活躍で、北広島町の皆さんも再び歓喜に包まれることを願っています。