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約4割が「体が動かず」-性被害に遭った瞬間 私は

「抵抗しなかったほうも悪い」
「逃げようと思えば逃げられたのでは」

性暴力の被害に遭った人は、こうした声を投げかけられることがよくあります。しかし、被害者の約40%は、被害に遭ったとき、体が動かず、声が出せない状態だったことが明らかになりました。

NHKが行った“性暴力”実態調査アンケート。一人ひとりのご経験や思いを、より大きな声として可視化して、社会全体に問いかけたいと呼びかけたところ、性被害に遭ったという人やそのご家族から、38,383件の回答が寄せられました。

【関連記事】「回答者の性別」や「被害内容」、「加害者との関係性」などの回答結果はこちら。

今回は「被害に遭ったときの心身の状態」、「加害者はどんな言動をしたのか」、「体やことばを使った抵抗の有無」など、《被害時の状況》について回答結果をお伝えします。

また下記の番組でも、アンケート結果とともに性暴力被害の実態に迫り、私たちの社会に求められることを考えます。ご覧いただけると幸いです。

6月19日(日)夜9時放送(総合テレビ)
NHKスペシャル「性暴力 “わたし”を奪われて」
【番組HPはこちら】
※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。

「よく分からない」「体が動かない」が最多

被害に遭ったときに自分が感じたことや考えたことを尋ねると、全回答の約6割が「自分に行われていることが何か、よく分からない状態だった」を選択しました。次いで「予想していない言動があり驚いた、どう反応すればよいのか分からなかった」、「頭が真っ白だった」が多くなりました。

4番目に多い「現実ではないような感じがした、自分が切り離されているような感覚があった」は、専門家と相談のうえ、つらい体験をした人が自分の体と心を切り離す「解離」と呼ばれる症状を意識して選択肢を設けました。全回答の24.3%、挿入(膣・肛門・口腔)を伴う被害の場合は37.5%が選択しました。

被害に遭ったとき、体の状態はどうだったか尋ねると、全回答の約4割が「体が動かなかった、声が出なかった」を選択しました。次いで「汗をかく、震える、心臓がドキドキする等の身体反応があった」が25.5%でした。

また、もともと障害があったり、持病やケガのためとっさの判断や行動がとれなかったりしたという回答も見られました。

子どもは“混乱” 大人は“加害者の感情・行動を推察”

被害に遭ったときの年齢が18歳以上の場合と18歳未満の場合を比べると、「自分に行われていることが何か、よく分からなかった」、「頭が真っ白だった」などは18歳未満のほうが高くなりました。

一方、「相手に合わせる、あるいは相手を受け入れないと、安全が守られない、ひどい目に遭うと思った」、「相手が自分よりも上の立場だったので断れなかった」など、加害者の感情や行動を推察するような選択肢は18歳以上が高い傾向がありました。

「体が動かなかった、声が出なかった」は、18歳以上は30.8%。18歳未満は42.8%でした。

加害者の約6割が「何も言わず突然」

被害に遭ったとき、もしくは被害に遭う前に加害者がどんな言動をしたか尋ねると、全回答の約6割が「何も言わず突然 性加害をした」を選択しました。次いで、「だんだんと体を触る、触らせる行為を増やしていった」、「予想していない言動をした」となりました。

黄色の項目は、明確な“暴行や脅迫”です。現在の刑法の要件では、被害者が13歳以上の場合、性被害を罪に問うには、“同意をしていない”ことだけでなく、暴行や脅迫を加えられるなどして“抵抗するのが著しく困難な状態だった”ことを立証しなくてはなりません。アンケートの回答からは、明確な暴行や脅迫を受けている人の割合は全体から見ると低いことが分かりました。

体でもことばでも 抵抗が難しい現実

一方、性暴力被害に遭ったときは、加害者の言動に関わらず、体が凍りついたように動かなくなって抵抗できないことがあると言われています。アンケートで、「体で抵抗したか」と「ことばで抵抗したか」を尋ねました。

体でもことばでも、「抵抗できなかった・しなかった」という回答が最も多くなりました。「抵抗し続けた」という回答は、約2割。男性はさらに少なくなりました。

知らない人からの被害と顔見知りからの被害の場合、「体で抵抗し続けた」は知らない人の場合が高い一方、「ことばで抵抗し続けた」は顔見知りの場合が高くなりました。また、「抵抗できなかった・しなかった」にはほとんど差がありませんでしたが、「途中で抵抗できなくなった」には大きな差があり、顔見知りからの被害の場合はいったん抵抗を試みて途中でできなくなる人が多いことが分かります。

年齢が下がるにつれて抵抗は難しい

被害に遭ったときの年齢が、現在の成人年齢である「18歳以上」の場合と、「13~17歳」、「13歳未満」で比較します。日本の刑法では、性行為への同意を自分で判断できるとみなす年齢が13歳と定められています。これを「性交同意年齢」といいます。そのため、「13~17歳」は、未成年でありながらも性行為への同意を自分で判断できる能力があるとされる年齢です。

また、“性交”以外の性的行為に対して同意する能力があるとみなされる年齢を「性的同意年齢」といい、日本ではこれも13歳です。

「体で抵抗したか」は、「18歳以上」と「13~17歳」で大きな差はありませんでしたが、「抵抗できなかった・しなかった」は年齢が下がるにつれて多くなりました。

ことばの抵抗は、年齢が下がるにつれて難しくなることが分かります。「13~17歳」は性的な同意能力があるとされる年齢ですが、成人である「18歳以上」より「抵抗できなかった・しなかった」が10%高くなりました。

決して珍しくない「加害者に合わせる言動」

性暴力被害に遭ったときは、抵抗できないだけでなく、加害者に合わせたり、感謝や好意をほのめかすなど喜ばせるような言動をしたりすることも珍しくありません。こうした言動は、大きな危険に直面したとき、生き延びるために起きる神経系の自然な反応で、本人の意思でコントロールできるものではないという専門家もいます。

加害者に合わせたり喜ばせたりする言動をしたか尋ねると、「顔見知り」の場合は半数近くが「した」と回答しました。それに比べると「知らない人」が相手の場合は低いように見えますが、知らない人から加害されたときも14.6%が加害者に合わせる行動をしていることが分かります。

被害のあと続く影響も・・・ 次回公開します

今回は、被害に遭ったとき、何が起きたか分からなかったり体が動かなくなったりする人が少なくないことや、抵抗しない・できない人がいることが明らかになりました。ここからどんなことが分かるのか、性被害者支援の専門家とともにさらに詳しい分析を進めているところです。

さらに、アンケートからは、“被害のあと”に生じるさまざまな影響も浮かび上がってきました。次回は「自分の心身の変化」、「対人関係への影響」、そして被害のあとの「周囲からの反応」などの回答結果をお伝えします。

アンケートの回答方式 データの概要など

●回答期間
2022年3月11日(金)~4月30日(土)

●回答の対象者
性暴力被害に遭ったという方、また、そのご家族など被害者本人の近くにいらっしゃる方。

●回答方式
視聴者からご意見などを受け付けるシステム「NHKフォーム」でアンケートを作成し、みんなでプラス「性暴力を考える」のページに公開した。

●データの概要
回答の総数は38,420件。そのうち、すべての質問に無回答だったもの、性加害者と名乗るものなど37件を除き、38,383件のデータについて分析を行う。なお、回答者への負担を軽減するため、それぞれの項目で「無回答」が可能であり、⽋損値が⽣じるため、分析対象データ数は分析内容ごとに異なっている。また、例えば現在の年齢から被害に遭った年齢を引いた場合にマイナスになるなど、明らかに回答の誤りの場合は除いて分析する。小数点以下第2位は切り捨てることとする。

●アンケートの作成・分析にご協力いただいた方々(五十音順)
大沢真知子さん(日本女子大学名誉教授)
小笠原和美さん(慶應義塾大学教授)
片岡笑美子さん(一般社団法人日本フォレンジックヒューマンケアセンター会長)
上谷さくらさん(弁護士)
齋藤梓さん(臨床心理士、公認心理師、目白大学准教授)
一般社団法人Spring(性被害当事者を中心とした団体)
長江美代子さん(日本福祉大学教授)
花丘ちぐささん(公認心理師)
宮﨑浩一さん(立命館大学大学院博士課程)
山口創さん(桜美林大学教授)

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