がれきの撤去が進められ、町の機能が少しずつ回復し始めた岩手県釜石市では、今、「雇用」という深刻な問題が浮かび上がっている。かつての鉄の町・釜石は、新日鐵の規模縮小の危機を積極的な企業誘致で乗り切ってきた。しかしその誘致企業が軒並み津波に晒されおよそ4千人が職を失ったと見られている。市では、浸水地域以外に新たな工場用地を用意し、企業に残存を呼びかけているが苦戦が続いている。一方、地場産業も大きな打撃を受けた。水産加工業を営む小野昭男さんは、今年初めに竣工したばかりの新規工場を津波で破壊され、5億円の借金だけが残された。小野さんは、従業員の9割を断腸の思いで一時解雇、残った機械を修理し細々と事業再開を模索しているが、改修費用などの金策に駆け回る日々が続く。雇用の維持という難題と向き合い奔走し続ける釜石の人々を追い、復興への課題を探る。
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