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【解説】東日本大震災・原発事故「廃炉の今」

ゼロからわかる福島のいま 第6回
  • 2023年02月13日

震災・原発事故関連のニュースを読み解く鍵となるテーマを1日1つずつ解説していく、「ゼロからわかる福島のいま」です。6回目のテーマは「廃炉の今」。

原発事故 そのとき何があった…

東京電力福島第一原子力発電所の事故からまもなく12年。福島第一原発の事故の概要をおさらいします。
大熊町と双葉町にまたがる福島第一原発。2011年3月11日当時、6基ある原発のうち1号機から3号機が運転中でした。あの巨大地震のおよそ50分後に大きな津波が襲い、原子炉が設置されている敷地のほぼ全域が浸水。1号機から3号機はその影響で冷却装置が停止し、核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起きました。
まもなく発生した水素によって1号機と3号機が水素爆発。4号機にも配管を通って水素が流れ込み、爆発しました。一連の事故の過程で、大量の放射性物質が外部に放出されました。
複雑に壊れ、放射性物質で汚染された原発の廃炉は前例がなく、40年かかるともされる取り組みが進められています。

「廃炉」はどんな作業?

廃炉は、放射性物質のリスクを下げながら施設の解体などを進める作業で、国と東京電力がロードマップを示しています。その長さは最長で40年とされていて、大きく3つの時期に分けられています。いまは第2期の「燃料デブリ」取り出しを始められるかどうかというタイミングにさしかかっています。
事故当初の不安定な状態だった原発は第1期までに安定化し、現在は廃炉がより本質的な局面に入っているといえます。
ただ、第3期で実施する作業はまだ技術的に確立されていないものもあり困難が予想されています。

最大の難関“燃料デブリ取り出し”

廃炉で今注目されているのは「燃料デブリの取り出し」と「処理水」です。
廃炉の最大の難関とされているのが溶け落ちた核燃料と構造物が混ざりあった「燃料デブリ」の取り出しです。現在は、デブリの状態を把握するため、それぞれの原子炉格納容器の内部でロボットによる調査が行われていて、最も調査が進んでいる2号機では2019年に初めて燃料デブリとみられる堆積物をつかむことに成功しました。
東京電力は来年度の後半に2号機でデブリの試験的な取り出しを始める計画です。ただこの計画、当初は2021年内に始めるはずでしたが、これまでに2度延期されています。今後、計画通り進められるかは不透明でデブリの取り出しは今、これまでの「準備」を「実行」に移せるのか正念場を迎えているともいえます。

注目集める“処理水”

もうひとつの注目が処理水です。
廃炉は「水」との戦いでもあります。デブリを冷やした水、それに建屋に流れ込む地下水や雨水は大量の放射性物質を含んだ高濃度の「汚染水」となり、現在も1日平均でおよそ100トン発生しています。
「汚染水」は原発構内の設備でトリチウム以外の放射性物質が取り除かれて「処理水」となり、1000基あまりのタンクで保管されています。
ただ、タンクの保管容量は限界に近づいていて、政府は処理水を基準を下回る濃度に薄めた上で「ことし春から夏ごろ」に海に流す方針です。処理水を放出する設備の建設は着々と進んでいますが、風評被害を懸念する地元漁業者などの反対の声は根強く、福島第一原発の廃炉はこの処理水の問題で、いま大きな注目を集めています。

  • 潮悠馬

    NHK福島局コンテンツセンター

    潮悠馬

    神奈川県川崎市出身。2017年NHK入局。警察取材担当、会津若松支局を経て、現在は福島県政と東京電力の担当。

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