【解説】東日本大震災・原発事故「処理水の海への放出」
- 2023年02月15日
「処理水」って何?

ことし1月、政府が処理水を海に放出する時期を「春から夏ごろ」と確認し、関連するニュースも増えています。「処理水」とは何なのか。
東京電力福島第一原子力発電所では、溶け落ちた核燃料を冷やした水と原子炉建屋に流れ込む地下水や雨水が混ざった「汚染水」が1日あたり100トン発生しています。
高い濃度の放射性物質を含む汚染水をさまざまな設備で浄化しトリチウムを除く放射性物質を取り除くための処理をしたものが「処理水」です。
トリチウムとは?

処理水に含まれるトリチウムは自然界の雨水や海水、それに水道水にも水として存在しています。トリチウムを含む水は、通常の原子力施設でも発生し、各国が基準をつくり薄めて海に放出しています。
なぜ放出?
廃炉作業では、汚染水の浄化が進んで、リスクが大幅に低減されましたが、こんどは増え続ける処理水をどう処分するかが問題となりました。処理水の貯蔵タンクは1000基あまりにものぼり、東京電力は敷地が圧迫されて計画的に廃炉を進めるうえで支障が生じかねない状況だとしています。
政府は2013年から蒸発させたり、地中深くの地層に注入するなどさまざまな処分方法を検討してきましたが、おととし、基準以下に薄めて海に放出する方針を決めました。
そして先月、放出の時期をことし春から夏ごろを見込むと確認しました。
放出にあたっては、トリチウムの濃度を国の基準の40分の1、WHO=世界保健機関が示す飲料水の基準の7分の1程度に薄めるとしています。
地元の理解は?
風評被害を懸念する地元の漁業者らを中心に放出に反対の声が根強くあります。

国は処理水について、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする方針を過去に示しています。これまでに、処理水放出の安全性をテレビコマーシャルや新聞広告で広くPRしたり、放出によって風評被害が起きた場合に水産物を買い取る基金を設けるなどして、放出へ向けた理解の醸成を図ろうとしています。
海への放出の期日が迫る中、合意形成が図られるのかどうか注目されています。