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みんなが安心して使えるトイレを考える

性別に関係なく使えるトイレを必要とする人がいます
  • 2024年01月30日

「通報されるのを恐れて、多目的トイレを使うようにしている」「外出先で使わないよう水分を控える人もいる」。性別に関係なく使えるトイレをもっと増やしてほしいと考えている人が、実は大勢いることが分かりました。誰もが使えるトイレの例もご紹介します。あなたはどう思いますか。
(NHK福岡放送局アナウンサー・廣瀬雄大)

いろんな人が感じていた、“入りにくさ”

トランスジェンダーが直面する「トイレの問題」。「はっけんラジオスペシャル 九州沖縄LGBTQ最新事情 ~教えて、隣のトランスジェンダーさん~」(2023年12月放送)では、みんなが使いやすいトイレのあり方についてもお伝えしました。
放送では、当事者からの切実な声が聞かれました。

  • 周囲の視線が気になる
  • 不安を感じる人の気持ちも分かるので、男性用、女性用に無理に入ろうとは思わないが、通報されるのを恐れて、多目的トイレを使うようにしている
  • 外出先でトイレを使うことがないように水分を控える人もいる
  • 車いすの人を待たせてしまうと申し訳ないので、バリアフリートイレの利用はためらう

 

この問題の解消策の1つは「性別に関係なく使えるトイレ」がもっと増えることではないでしょうか。
大手住宅設備メーカーでは「多くの人がより使いやすいトイレ」の形を探りたいと利用者にアンケートを実施。すると、性別に関係なく使えるトイレを望んでいるのは、トランスジェンダーだけではないことが分かりました。

TOTO九州支社 市場開発第一部 主査 重留美穂さん

たとえば、夫を介助する妻やヘルパーなど、異性を介助する人が多くいます。男性を介助する女性の方から、「男性のトイレに入れないし、かといって中で倒れていたらすごく心配だ」という声がありました。ほかに、発達障害の子どもを連れた親などからも「男女のトイレだけだと一緒に入ることができず、心配」という声もあります。従来の男女別トイレ、そして車いす使用者のトイレだけでは、使いづらいと感じている人が多くいると思っています。

ポイントは、どこに入るか見えないこと

メーカーでは、アンケートに基づいて、誰もが使いやすいトイレの例を提案。
冊子やホームページで紹介しています。

さまざまな配慮がされたトイレの例(TOTO株式会社の冊子より)

たとえば、内部をいくつかの空間に分けたトイレ。従来の「男子トイレ」「女子トイレ」「車いす使用者のトイレ」「キッズトイレ」に加えて「男女共用の個室トイレ」を設置しています。
もちろん、トランスジェンダーの当事者を含めて、男女別のトイレを使いたい人もいるので、自身が使いたいトイレを安心して選べるようになっています。

男女共用のトイレの個室が広いのは、介助や同伴の人が一緒に入れるようになっているためです。乳幼児のオムツ替えをするベッドや着替え台などの設備も付いていて、トランスジェンダーに限らず、さまざまな人が、使いやすいようになっています。

一般的な広さのトイレ(資料)

ポイントは、気兼ねなくトイレを選べること。
トイレの選択が、意図しないカミングアウトにつながってはいけません。
外からどのトイレに入るのか見えにくくすることで、安心感につながります。

また、そもそも「リラックスしたい」「着替えをしたい」「我が子と一緒に入るため」など、広い個室トイレを選んで使う理由はさまざま。性別に関係なく使えるトイレが、“誰でも気兼ねなく使える場所”として広く認識されることが大切です。

実感する変化

こうしたトイレが増えるといいですよね。大きな課題となるのが、予算や建物の広さの制約です。しかし、このメーカーでは、客からの発注を通して「性別に関係なく使えるトイレ」が少しずつ社会に広がっているのを実感しているといいます。

重留さん

建物の管理をされている方も、性的マイノリティーだったり、いろいろな方に配慮をしたいっていう思いがありますので、我々からお話しするっていうよりもオーナー様からご指示いただくことも増えていると思います。商業施設だけではなくて、学校だったりですとか、事務所オフィスっていうところでも、設置が進んでいるので、全国的に広がっていることは我々も実感しています。

その上で「性別に関係なく使えるトイレ」自体の“ハード整備”を進めると同時に、特にオフィスや学校といった顔見知り同士が使うような空間では、トランスジェンダーをはじめとする多様な利用者への理解を進める“ソフト整備”も必要だといいます。

TOTO九州支社 市場開発第一部 主査 重留美穂さん

いま、みなさんトイレに関していろいろ考えていただいている時代にはなってきているので、より、さまざまな当事者のことを知っていただいて、どういうトイレが一番理想的なのかっていうのをみんなで考えられるような社会になったらいいなと思います。

トイレが社会のバロメーター?!

重留さんによると、公共トイレはこれまでさまざまな変化がありました。メイク直しができる「パウダーコーナー」ができたり、車いすの人が使える広いトイレや、ベビーチェアが設置されたりしたことが代表例ですが、いずれも定着までには10年ほどかかったといいます。社会の変化、意識の変化を表す1つの目安として「性別に関係なく使えるトイレ」が増えていくのか、注目したいと感じました。

(2023年12月10日放送の「はっけんラジオスペシャル」から抜粋しました)
 

  • 福岡放送局アナウンサー

    廣瀬雄大

    2009年入局。
    高松・甲府・北九州を経て、現局。「ザ・ライフ」キャスターを担当。

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