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どう評価?不登校生徒の通知表  追跡!バリサーチ

  • 2023年10月27日

みなさんの疑問やお悩みに答える『追跡!バリサーチ』。不登校のお子さんを持つ方からこんな投稿をいただきました。

子どもの中学校から『1』の並んだ通知表を受け取りましたが、それを見た子どもの反応に心を痛めました。不登校の子どもの頑張りを評価できるような取り組みはありますか? というお悩みです。
不登校の子どもの評価について、どんな課題があるのか?その成長を評価するような取り組みはあるのか? まずは、そもそも学校の通知表をどのようにつけているのか、福岡県教育委員会に聞いてみました。

成績評価は「テスト結果」「提出物」「授業態度」などを主な基準にしており、不登校の生徒も同じ。最終的には各学校の判断に任されているとのこと。
では、実際の教育現場で不登校の生徒をどのように評価しているのか。福岡市内の12の中学校が取材に答えてくれました。

学校側から不登校の子どもにアプローチしても反応が返ってこない

不登校だからと言って特別扱いをすることはできない…

聞こえてきたのは「評価したくても難しい」という声。どうにか評価したいという思いはあっても、なかなかそれが叶わない。教育現場の葛藤が見えてきました。
通知表や成績評価に詳しい慶應義塾大学の藤本和久教授。現場の先生たちの頑張りだけでは、限界があると指摘します。

学校現場では保護者や学校の外部への説明のために、なるべく客観的な評価資料を集めることにエネルギーが注がれている。共通の判断材料がないからということだけで、先生たちも苦しみながら1点の評定をつけていることもあると思う。『通知表ではこういう評価だけど、私はここを見ているよ』というような声掛けなど通知表の評定が独り歩きしない工夫が必要だと思います。

北九州市にヒントあり!?

不登校の生徒の評価について、北九州市の取り組みにヒントがあると聞き、向かいました。

ここで行われているのは、不登校の児童や生徒のためのオンライン教室です。運営しているのは学校ではありません。市の教育委員会が独自に、市内の学校の先生たちを集め、2年前に始まりました。

「おはようございます!」 カードの文字と音声でのあいさつ
専用の教材を作るなど、オンラインに特化した授業を工夫

オンライン専用に、教材や授業の仕方を工夫して、国語、英語、数学から図工や体育まで。通常の学校と同じ科目を教えているんです。

この教室で特に大切にしているのが、生徒ひとりひとりとのコミュニケーションです。生徒たちがその日の感想や授業の振り返りを書き込み、担任の先生がひとつひとつにコメントを返します。

実際のやりとりをまとめた冊子
生徒

新聞紙や説明書でも読書になると聞いて そうなんだ!とわかることができました

先生

授業の終わりでの「ありがとうございました」の言葉にこちらが感謝です。ふりかえりに分かったことを書けていてびっくりしました!!今まで知っていたこととくらべてお話を聞くことができて、タブレットの文字入力できて、おみごとです。これからも楽しく学んでいきましょう

高砂舞さん、中学3年生です。小学校3年生の頃から学校に通えなくなりました。2年前から、このオンライン教室に参加しています。チャットを通じて、先生やほかの生徒と何気ない会話をするのが楽しみだという舞さん。画面越しですが、先生やほかの生徒が自分のことを見てくれていると感じ、うれしかったと言います。

スマートフォンを使って絵を描くことが大好き

趣味を共有できたり、好きなことをたくさん話せる空間がすごくいいと思います。オンラインを始めると、私と似た人もいるんだなあと思えて、視野が広がった感じがします。それで生きやすくなった気がします。ずっとここにいたいなと思えた。

実は、担任の先生からは生徒の顔は見えません。しかし、毎回のやりとりを通じて生徒への理解が深まっていると言います。

ずっとやりとりをしている間に、好きなこととか趣味とか、少しわかるようになったりして、顔を見ることはありませんけど、自分の中で人物像が浮かんでいます。

 

こうしたオンライン教室での子どもたちの様子は、生徒たちが在籍している学校にも共有します。それぞれの学びの様子を少しでも学校での評価に反映してもらうためです。この教室の立ち上げから関わっている、北九州市教育委員会不登校等支援センターの福嶋一也担当課長は、その理由をこう語ります。

不登校、学校に行けてないということは問題行動でも何でもない。だけども、子どもたちは、学校に行けている子どもと行けてない自分を比較してどんどん自尊感情が下がってくると言います。ただ本来は、その子の本質は何も悪いことはないし、自分はダメなんだと思う必要はないわけです。本来の子ども自身の良さを子供に伝える、気が付かせるようにすることで自信を取り戻して行ければなあと考えています。

このオンライン教室には、北九州市の公立の小中学校に在籍している児童・生徒なら、参加することができます(※問い合わせ 北九州市教育委員会 不登校等支援センター 093-641-1800)。不登校の生徒たちをどう評価して通知表をつけるのか、多くのヒントがあると感じました。全国各地からの視察も多いそうです。

 

取材中に思いがけないことが

オンライン教室の2学期の始業式の日、思いがけないことが起こりました。先生たちが授業を行っている施設に、舞さんが母親と一緒にやってきたのです。

「きょう来とうち聞いたけん、あわてて来た…
会いたかった、わかりますか?」
多くの先生が、舞さんがやってくることを心待ちに
舞さんは笑顔で先生たちとおしゃべり

2年間画面越しに自分を見続けてくれた先生たち。「直接会ってみたい」という気持ちが、舞さんに芽生えたのです。

先生

舞ちゃん3年目ですよね。少しずつ慣れてきたと思うけど、お母さんから見てどうですか?早起きができるようになったって言われてましたよね?

お母さん

私が仕事で家にいないので1人でいるから、こうやって振り返りの文章を書いて、自分の考えてることとか思っていることを出すんだと…。

先生

とても考えがしっかりされてるなあ、とみんなで思ってたんですよ

お母さんは、授業での舞さんの様子や成長ぶりを直接聞くことができました。
そして舞さんは、この教室で学んだことを先生たちに直接、伝える事ができました。

舞さん

いろんな人がいるんだなってことも知れたし、努力して自分をほめるということも教えてもらって、そこから自分を受け入れられるような自信が持てました。

家族以外の人たちともコミュニケーションがとれるようになってきたという舞さん。今回、自分の姿を見てもらうことで、同じ境遇の人たちの力になればと取材を受けてくれました。取材に対して、言葉を大切に選びながら一語一語丁寧に答えてくれる様子が、深く印象に残りました。また、舞さんがやってくると聞いて集まってきた先生たちの笑顔も忘れることが出来ません。

数字にはあらわせないものをくみとって、認めていくことの大切さ。そのためにはコミュニケーションがとても大事で、誰かが見ている、向き合う存在は大切だと感じました。
 

※オンライン教室の問い合わせ 北九州市教育委員会 不登校等支援センター 093-641-1800

 

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