「アニメ はなかっぱ」 多様な価値観を伝える

「アニメ はなかっぱ」 多様な価値観を伝える

月曜から金曜まで、毎朝、Eテレで放送している「アニメ はなかっぱ」。やまびこ村に暮らし、頭に花が咲いているかっぱの男の子を主人公に、家族や友達とのにぎやかな日常を描いた物語です。
14年間続いている人気番組ですが、時代の変化に伴い、家族の描き方や性別を巡る表現についてさまざまなご意見が寄せられるようになりました。

【視聴者から寄せられた声】

  • 登場する子育て家庭が全て、父親が外で働き、母親が家で家事育児をする昭和のような表現が気になっている。今の子どもが大人になる頃には、ますます共働きが増え、性別だけにとらわれない、家庭内の役割分担が必要になると思われる。毎朝みる番組だからこそ、子どもの意識に影響があると思うので、ぜひ多様な家族観が描かれる番組をお願いしたい。(30代女性)
  • 子どもたちはお気に入りの番組だが、同じ生き物でしか結婚や付き合いをしていないので、寂しくなる。違う種類どうしで子どもが出来たり、養子だったりしてもよいと思う。性別や人種は関係なく、恋愛も結婚できるという回をいつか放送してほしい。Eテレが幼稚園、小学生の偏見をなくす一歩になったらうれしい。(40代女性)

●9月6日放送 新作 「ドリナとカラバッチョ」 

こうした声を受けて、番組では性の多様性や新しい家族観を子どもたちに知ってもらおうと、新作づくりに取り組みました。9月に放送したのは、「まだ性別のない人魚・ドリナ」という新しいキャラクターが登場する物語です。

はなかっぱの友達のカラバッチョは、休暇で別荘に来ている「ドリナ」という人魚と出会います。湖で一緒に泳いだり、空を飛んだりして楽しく遊び、友情を深める2人。

202309_01_002.jpgドリナ(左)とカラバッチョ(右)

ドリナに好意を抱いたカラバッチョは、「特別な友達」になりたいと思い、はなかっぱが咲かせてくれた花束を手渡そうとします。

202309_01_003.jpg頭から花を咲かせるはなかっぱ

するとドリナは、「もしかして、私のこと女の子だと思ってる?私たちは、子どものうちは男でも女でもないの」と、打ち明けます。その言葉に驚いたカラバッチョは、花束を渡さずに別れます。

202309_01_004.jpg

翌日、家族とともに別荘を去り自宅に帰るドリナ。カラバッチョが見送りに来てくれないことをさみしく思っていたところ、花束を持って追いかけてくるカラバッチョの姿が…。そしてドリナに向かって、「男でも女でも何でもなくても、どっちでもいい。俺はお前のことが大好きだから!!」と伝え、花束を投げ渡して見送るというストーリーです。

202309_01_005.jpg

●性の多様性を子どもたちに伝えるには

一話5分という短い時間の中で、子どもたちにどのようにして「男女という性別のない」キャラクターを分かりやすく伝えるか。アニメの監督や脚本家など、制作スタッフにとっても初めての試みで、何度も打ち合わせを重ねました。さらに人権問題の専門家にも監修を依頼し、セリフなどについて推こうしました。例えば、ドリナがカラバッチョに「男でも女でもない」と告げた後のシーン。当初の脚本では、ドリナのせりふは「ごめんなさい」となっていましたが、「あやまるというのは自分に自信がなく、引け目を感じているようだ」と専門家から指摘があり、「早く帰った方がいいよ。じゃあね」と自然に話すセリフに変更しました。
また短い時間の中で、LGBTQなど性別を巡る表現について深く説明するのは難しいと判断し、「シンプルに自然に関係を描く」ことで、子どもたちに何かを感じてもらうことを目指しました。このため、通常の脚本づくりの2倍の時間を費やしてようやく完成しました。

ほかにも、主人公のはなかっぱが友達の家を訪れると、女性2人で子育てしている家族だったという物語も制作し放送しています。
NHKの子ども向けアニメ番組の中で、性の多様性や新しい家族観を伝える物語を集中して放送し、SNSなどを中心にさまざまな反響がありました。

【視聴者から寄せられた声】

  • ドリナとカラバッチョの話が、とてもよかった。同じ生き物同士、その人であることが大切で、性別は関係ない。小さい頃から社会で伝え、当たり前になっていけば、ジェンダー違和や性別で求められる役割に苦しむ人は減ると思う。大切なテーマをありがとう。(40代女性) 
  • 今後子どもの身近に、性別にとらわれない人たちが現れるかもしれない。そのような時、きょうのはなかっぱのように自然に察することができたらよいと思う。(X・旧ツイッターの投稿より)
  • 「ママ」と「おかあさん」という家庭が描かれて、感動した。しかもおもしろおかしく、描いているわけでもなかった。今までジェンダー感覚とか家族観が古いと思っていたので、このような内容をもっと放送してほしい。(X・旧ツイッターの投稿より)

番組では、今後も主人公たちの家族の中で、男女の役割分担を見直すなど、子どもたちに分かりやすい表現や物語で、多様な価値観を伝えていくことにしています。NHKは公共メディアとして、時代の変化やニーズをとらえながら、未来を担う子どもたちの成長を支えるコンテンツの創造に取り組んでいきます。

アニメ はなかっぱ  https://www.nhk.jp/p/hanakappa/ts/762861KRYL/

※内容は、掲載当時のものです。