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教育からの地域・人・未来づくり

離島の高校を拠点に、地域の担い手づくりに取り組んできた岩本悠さん。さらに活動の場を広げ、人づくりを通じた持続可能な地域づくりに挑みます。

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2020年07月13日 (月)

小さくてもキラリと輝く個性豊かな学校を

「進化するスパイラル」を生む高校魅力化

学校や教育機関が地域社会に協力を仰いでいくには、対話によって互いに納得が得られなければならない。自分たちの「感覚」「感性」「志」の3Kだけではなく、データ等に基づく根拠も必要になってくる。そこで、私たちは、学校での取組を教育的な価値基準だけでなく、地域社会的な価値基準で定量的に示す魅力化調査を実施した。

全国における高校統廃合の地域への影響を調査したところ、統廃合後は市町村総人口に約1%の転出超過の影響が出ることがわかった。一方、島根県で10年ほど高校魅力化に取り組んできたところでは、総人口の約5%超の維持・増加効果が出ていることがわかった。高校統廃合は人口減少や少子化を加速させ、高校魅力化はそれを食い止めることが数字で明らかになったのである。

人口減少や少子化と学校教育の間には密接な関係がある。構造的には、子どもの数が減る→学級・教職員数減→学校の教育力・魅力の減少→さらなる生徒減→学校統廃合→家族流出→地域衰退……という負のスパイラルが働く。小規模化し、教育力や魅力が減少していく学校では生徒の意欲・活力や自尊感情・自己肯定感も下がっていくし、劣等感の裏返しとして外部や都市部への憧れも高まり、「こんなところには何もない」と言って、どんどん地域外へ流出し、Uターンすることもない。

こうした負の連鎖をどう生徒や高校、地域にとって良い循環に変えていくか。それが高校魅力化の取組みだ。要点を一言で言えば、閉じて、縮小する「負のスパイラル」を、未来に向けて開き、つながる「進化するスパイラル」に変えていくことだ。地域社会にはまだまだ教育に使われていない多様な資源がある。それらを活用し、「社会に開かれた教育課程」を実現しながら、生徒や教職員だけではなく、地域社会にとっても魅力ある学校づくりをめざしていくのが高校魅力化だ。

 

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「機会の均等化」と「学校の特色化」

 しかし、高校魅力化が人口流出を食い止める手段のひとつになるとしても、小規模化した高校にはデメリットや課題があるのも事実だ。現在それを克服する有効な手段として考えられているのが、ICTを始めとするテクノロジーだ。例えば、遠隔授業により、一人ひとりの学力や進路希望に応じた多様な科目や授業の選択が可能になったり、オンラインを通じて国内外の多様な生徒との対話や交流、切磋琢磨も実現させることができる。その上、先端技術や機器などの導入は、学校規模が小さければ小さいほど費用も少なくてすみ、小回りもきき、結果も見えやすいので、魅力的なモデルづくりに向いている。

ICTなどの活用は、どんな地域に生まれても、どんな規模の学校にいても、格差なく良質の教育を受けられるという意味において、教育の質と機会の「均等化」を可能にする。一方、地域資源を教育に活用する開かれた学校づくりは、各地域に個性があるので、まさに学校の「特色化」を進め、多様な学校づくりにつながっていく。この二つの相互作用によって、教育の機会均等を実現しながら、小さくてもキラリと輝く個性豊かな学校が、全国各地に生まれてくると考えている。それが当該地域の人口動態にもいい影響を与えることは、先に示した通り、私たちの調査で明らかになった。

今後、おそらく2020年代の中盤あたりからは、海外の生徒や教職員が日本の高校へ学びに来るような「国際社会に開かれた」魅力ある学校づくりも進んでいくだろうと、私たちは期待している。

 

高校魅力化の5つのポイント

ここで高校魅力化を進めていく上で大切なポイントをまとめてみた。

1つ目は高校と地域が協働するための「コーディネート機能」だ。これには「学校から地域社会につながっていく機能」と「地域から学校へとつながっていく機能」という二つの側面がある。学校側と地域側の両方にコーディネートに関する機能や役割、人が備わっていれば理想的であり、コーディネータ―を校内及び地域にどう配置・育成していけるかが高校魅力化の一つの鍵になる。

2つ目は「チーム」だ。リーダーシップのある管理職や一部の教員だけで進めていると、その中心人物たちがいなくなると、取組みが継続しなくなる。意志あるチームをつくり、チームで動き、その輪を広げていくことが求められる。校内の人間だけでなく、校外の人も含めたチームにしていくことがポイントである。

3つ目は「協働の体制づくり」だ。チームでの動きを、より持続可能で効果的なものにしようと考えると、チームをバックアップする協働体制を整える必要が生じる。私たちは、高校と市町村、大学、産業界、NPO等の組織が協働する体制のことを「コンソーシアム」と呼んでいる。コンソーシアムは継続的かつ計画的に大きな取組みを進めるために有効な体制である。

4つ目は「変化の見える化」だ。高校魅力化のような新しい取組に後ろ向きな教員や保護者の姿勢が変わるのは、生徒の変化が見えたときである。そして行政の場合は数字の変化が示されたときだ。生徒の成長や学校・地域の変化をいかに見える化して、共有していくか。生徒の変化や成長を実感できる場づくりや、評価システムは、こうした意味でも重要になる。

5つ目は「学校を越えた学び合い」だ。私たちはこれを「共学共創」と言っているが、「他の学校や地域の事例や挑戦から刺激を受け学ぶ機会」や「自校の挑戦や成果を発信する機会」「外部と交流や連携する機会」を意図的につくることである。自分たちの取組みが惰性になったり形骸化しないためにも、新たな世界に出逢ったり、外の風にあたったり、他者から学び合う機会をつくっていくことはとても重要だ。

 いま高校魅力化を進める教員以外の専門人材「コーディネーター」は、全国の公立高校で140人を超える。学校と地域をつなぐ役割をはたすだけではなく、全国のコーディネーター同士もネットワークを通じて、その役割や課題について話し合っている。地域の課題を地元のメンバーだけで抱えていくのではなく、外部とのつながりや新しい人の流れを利用しながら、乗り越えていく時代が始まったのである。この5つのポイントも、そのような全国の学校魅力化の実践によって見えてきたものである。

 

《続く》

 

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教育からの地域・人・未来づくり

岩本悠さん(地域・教育魅力化プラットフォーム 共同代表)

大学時代から途上国支援や開発教育に取り組む傍ら、卒業後はソニー(株)で人材育成や組織開発に従事。2006年に東京から島根県の海士町へ移住し、廃校の危機にあった県立高校で教育改革に取り組んできた。

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