西日本豪雨(2018)、台風19号(2019)、7月豪雨(2020)、熱海市での大規模な土石流(2021)。災害は、「毎年のように」ではなく、「毎年」やってきている。本当に恐ろしいことだけれど、きっと、今年も来るのだろう。
その「きっと」に対して、私たちにできることは何だろうか。私たちのチームがたどりついたのは、防災における「もったいない」をなんとかしたい、ということだった。
たとえば洪水。国と都道府県が管理する主な河川は、全国に2178本[1]。そのうち、99%の河川について、「どこが」「どれだけの深さの」浸水をするか、を国や自治体が分担して1000年に1度クラスの想定でシミュレーションしている[2]。自治体から配られる「ハザードマップ」も、このシミュレーション結果に基づいて作成されている。命を守るために、まず活用されるべき、非常に重要なデータだ。
しかし残念なことに、せっかく結果として存在するのデータ全てを、すぐに確認できる方法はない。シミュレーションのデータは膨大で、国も全てを収集できていないというのだ。結果、少なくない川のリスク情報が、ハザードマップなどの「紙」でしか閲覧できないのだ。データとして一元化されていないため、「リスクデータを使った分析」等を全国を対象にして行うこともできない。
これは、実はものすごく「もったいない」ことなのではないだろうか?誰もがこれらのデータにアクセスできるようにして、災害から命を守ることに役立ててもらうことが、できないだろうか?
そこで私たちは、洪水だけでなく、土砂災害など様々な災害リスクに関するデータを、国・都道府県・市区町村に依頼して、提供してもらうことにした。
趣旨を説明すると、ほとんどの自治体の担当者が、多忙な業務の合間を縫って、快くデータを提供してくださった。
「うれしい悲鳴」・・・という表現があたるかどうかわからないが、一つの自治体の洪水のデータだけで、数箱の段ボールに詰め込んだハードディスクを送ってもらうこともあり、作業量は想像を遙かに超えるものになった。
結局、チームのメンバーを拡大しながら、1年がかりで全国のデータを収集・整理し、ふたつの形として世に出すことができた。
ひとつが、2022年6月5日に放送されたNHKスペシャル「いつ逃げる?どこへ逃げる?~新・全国ハザードマップ水害リスクを総点検~」であり、そしてもうひとつが、この期間限定公開の「全国ハザードマップ」だ。番組ではどうしてもお伝えできる地域に限りがあるが、オンラインのマップとして公開すれば、ひとりひとりが身の回りの災害リスクを検索・確認することができる。
リスクを“知って”、もしもの時を“想像”し、的確に“逃げる”。
あなた自身と、あなたの大切な人の命を守れるように…。
実際には考えたくないことだが、今年も、来年も来るであろう「きっと」に備えるために、ぜひ、マップを開いてみて欲しい。