放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KBS社長にチョ元副社長が就任

公共放送のKBSは,旅客船の沈没事故の際,大統領府からの圧力を受け報道内容に介入したとして解任された社長の後任に,元副社長のチョ・デヒョン(曺大鉉)氏を選出,7月25日に就任した。KBSの理事会は同月9日,社長公募に応募した30人の中から絞り込んだ6人に対して面接審査を行い,11人の理事による投票の結果,チョ氏が6票を獲得して,社長候補に選ばれた。この人事は,KBS社長の任命権を持つパク・クネ(朴槿惠)大統領が承認し,25日に正式に任命された。チョ氏は1978年にディレクターとしてKBSに入社し,東京特派員,テレビ制作本部長などを経て,2009年11月から約2年間,副社長を務めた。今回の任期は,前社長の残りの任期である1年4か月となる。

韓・中のテレビ局が“抗日番組”共同制作

韓国の放送政策を管轄する未来創造科学部(未来部)は7月4日,KBSと中国のCCTVが,豊臣秀吉の朝鮮出兵をテーマにした歴史番組を共同で制作することを発表した。未来部は,中国の国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局との間で,両国のデジタルコンテンツ分野の交流拡大のため,「韓中朋友コンテンツプロジェクト」をこの1年進め,その結果,KBSとMBC,それにCCTVの3つの放送局が,「放送ドキュメンタリーの共同制作業務協力(MOU)」を締結した。未来部によると,今回のMOUに基づいてKBSとCCTVが,2015年末までに,16世紀末に豊臣秀吉が行った朝鮮出兵に関する「壬辰倭乱」のドキュメンタリーを共同で制作する。また,MBCとCCTVでも別のドキュメンタリーを制作する計画で,2作品の総制作費30億ウォン(約3億円)は,韓中両国政府が半額ずつ負担するという。

中国,汚職取り締まり強化がCCTVに本格波及

中国中央テレビ(CCTV)の名物キャスターである芮成鋼氏(36)が,担当する7月11日夜の経済番組の生放送直前に,当局に連行された。容疑については明らかにされていないが,中国では権力闘争の一環ともされる汚職取り締まり強化で高級幹部が次々に摘発されていることや,すでに6月に,芮氏の上司にあたるCCTV経済チャンネルの郭振璽総監が収賄容疑で身柄を拘束されたことなどから,汚職摘発が国を代表するテレビ局にまで波及したものとみられている。芮氏は2003年からCCTVの英語チャンネルで,また2008年からは経済チャンネルに出演し,『財経新聞』などの番組の名物キャスターとして知られていた。

香港,報道の自由が「数十年来で最悪」に

香港のジャーナリスト団体である香港記者協会は7月6日,「報道の自由が落城の危機に」と題した報告書を発表,この1年間は報道の自由が過去数十年で最悪だったとの評価を示した。報告書によると,2012年に梁振英氏が香港の行政長官に就任して以降,香港の報道の自由は後退を続け,特にこの1年間は,「明報」の前編集長が暴漢に襲われ大けがをした事件や,厳しい政府批判で人気があった商業電台(Commercial Radio)の女性司会者が解雇された事案,Hong Kong TVの無料テレビ免許申請が却下された事案など,報道の自由に悪影響を与える問題が相次いだとしている。こうした状況に対して香港記者協会では,「自己規制監視委員会」を設置し,各メディアの自己規制に関する告発を受け付け市民に公表することで,報道の自由を守る一助にしたいとしている。

パキスタン,Geo News配信めぐり混乱続く

パキスタン南部の都市カラチで7月19日,衛星チャンネルGeo Newsの配信を再開したばかりの大手ケーブルテレビ局Worldcallに,銃で武装した男たちが乱入,建物に火をつける事件が発生した。同局は,Geo Newsが規制当局(PEMRA)から15日間の免許停止処分を受け1か月近く経った後も大半のケーブルテレビ局が同チャンネルの配信再開に踏み出せない中,配信に踏み切っていた。ケーブルテレビの事業者団体(COA)は,事件を非難し,Geo Newsの配信が襲撃の理由との認識を示した。Geo Newsは,人気キャスターHamid Mir氏が4月に銃撃を受け重傷を負った事件で,軍諜報部の関与を示唆したことから軍の不興を買い,現在まで苦境が続いている。一方のケーブルテレビ局は,Geo Newsの配信再開を求める国内外の世論と,配信に反対する勢力との板挟みとなって苦慮している。