放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,有力紙の社説差替命令に記者ら反発

中国広東省のリベラルな週刊新聞『南方週末』の1月3日付け新年号の社説が,当局の命令で全く違う内容に差し替えられたため,編集者など約50人が連名で,徹底的な調査や差し替えを命じたとされる党幹部の辞任をネット上で要求,国際的ニュースとなった。この問題は,「中国の夢,憲政の夢」と題した,政治の民主化や言論の自由を求める『南方週末』の社説が,いったん当局の検閲を通過したにもかかわらず,印刷直前の1月1日夕方に省共産党委員会宣伝部が編集長らを呼びだして書き換えを命じ,共産党を賛美する全く別の内容に差し替えられたものである。香港などの報道によると,その後広東省のトップである胡春華党書記が調停に入り,表面上は全ての関係者に対して責任を問わないことで事態の収拾が図られた模様で,1月10日付けの『南方週末』は予定通り発行された。

香港,会社条例改正にメディア界反発

香港では,政府がプライバシー保護を理由に会社役員の個人情報公開を制限する条例改正を打ち出したことから,各メディアの間で「調査報道への障害」と強い反発が起きている。香港の会社条例では,会社役員の住所や身分証番号,パスポートナンバーなどを記者や一般市民が閲覧できるようになっている。これについて香港特別行政区政府は,プライバシーの保護を理由に,2014年から閲覧をできなくするよう,会社条例を改正する方針を打ち出した。これに対し香港メディアの間では,中国の高官やビジネスマンが香港にペーパーカンパニーを作って資産隠しを行うことが日常化している中で,条例改正は企業の腐敗に対する調査報道を妨げるとの批判が噴出している。IFJ(International Federation of Journalists)のメンバーである香港記者協会では,香港撮影記者協会などと共同で1月28日付けの新聞に全面広告を打ち,条例改正反対運動を活発化させている。

韓国,2012年末に地上アナログ放送終了

韓国は2012年12月31日午前4時,首都圏の地上アナログ放送を終了し,地域ごとに進めてきた地上デジタル放送への移行が,北朝鮮向けの放送を除いて完了した。韓国放送通信委員会(KCC)によると,地上アナログ放送終了時点で,全国1,734 万世帯の99.7%以上が地上デジタル放送を視聴している。アナログ放送終了後もデジタル放送受信機を設置していない世帯(5 万世帯以下と推定)については,2013年3月まで申請を受け付け,デジタルコンバーター設置などの政府支援を延長して実施するとしている。

フィリピン,デジタルTVは日本方式を支持

2013年1月15日,フィリピンの報道各社は,フィリピン国家電気通信委員会(NTC)が地上デジタルテレビの放送方式について,日本方式採用の方針を表明したと伝えた。それによると,フィリピンでは2015年までにアナログ放送を終了しデジタル移行を完了する予定で,2010年にいったん日本方式(ISDB-T)の採用を決定したが,国内の大手放送事業者などから反対の声が出たため,再検討を行ってきた。NTCが日本方式を支持する背景には,ヨーロッパ方式(DVB-T2)よりもコストが安く,また,災害情報などのタイムリーな情報発信が可能になるといった事情があるとみられている。

カタール,アルジャジーラが米進出拡大へ

ドーハを拠点とする衛星テレビ局アルジャジーラは1月2日,米国のCATV向けニュースチャンネルCurrent TVを買収し,アメリカ視聴者向けの新たなニュースチャンネルAl Jazeera Americaを立ち上げると発表した。アルジャジーラはCurrent TVの買収により米国の視聴可能世帯を現在の470万から4,000万以上に拡大できるとしている。Al Jazeera Americaは既存の英語ニュースチャンネルAl Jazeera Englishの番組を一部活用するものの全体の6割ほどはアメリカ視聴者向けに独自制作したニュースを放送する予定で,年内の放送開始を目指すという。Current TVはアル・ゴア元米副大統領と著名な実業家ジョエル・ハイアット氏がリベラル層をターゲットに共同で設立したチャンネルで,両氏は新チャンネルの諮問委員会メンバーとして残るという。