放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,放送開始90年

イギリスの公共放送BBCは11月14日,放送開始90年を迎えた。この日,BBCはロンドンの科学博物館から特別ラジオ番組“Radio United”を午後5時33分から3分間,BBCが運営する国内・海外の60のラジオ局で同時に生放送した。記念番組を飾ったのは,ブリティッシュ・ロックを代表するブラーのリーダー,デーモン・アルバーンが作曲した“2LO Calling”。アルバーンは,1948年に行われたリース・レクチャーに登壇した哲学者バートランド・ラッセルによる“Love is wise, hatred is foolish”のフレーズを曲の中に取り入れた。BBCは,記念番組に引き続き数々の番組やイベントを開催したが,その一環としてBBCが所有する録音機やマイクなど1,000余りの歴史的記念物を「全国メディア博物館」に寄贈した。

英BBC,ユーチューブ専用チャンネル開設

イギリスのBBCワールドワイド(国際放送の商業放送部門)は11月16日,ユーチューブ専用チャンネル「アース・アンプラグド」を開設した。自然番組を制作するBBCアース・プロダクションが,野生動物の生態や自然の驚異などを数分程度のビデオクリップに編集し,紹介している。ユーチューブ専用チャンネルの開設はBBCにとって初めてで,世界の新しい視聴者を開拓するためとしている。

英デジタルラジオ普及促進キャンペーン開始

イギリスのラジオ業界はデジタルラジオの普及促進のため,11月24日から2013年1月まで,公共放送のBBCや商業テレビなどの放送媒体も含むキャンペーンを開始した。イギリス政府は2013年にアナログラジオ放送を終了するかどうかの決断を下す予定である。政府は終了の目安として,ラジオ聴取の50%がデジタル聴取であることと全国のデジタルラジオ網がFMと同等に拡大し,ローカルのデジタルラジオが人口の90%に到達するという条件を示している。BBCはローカルのデジタル網を拡大するため総額2,100万ポンドの投資を約束している。2012年6月末現在でラジオ聴取のデジタルシェアは31.5%である。

フランス,受信料6ユーロ値上げへ

フランスでは,2013年度の公共放送負担税を,今年度より6ユーロ(600円)値上げして131ユーロ(約1万3,000円)とすることが決まった。フランスでは,受信料にあたる公共放送負担税は消費者物価指数に連動して決まり,2013年度は今年度より2ユーロ高い127ユーロになる予定だった。しかし政府の財源難から,議会で負担税の値上げが審議され,下院では10月22日,129ユーロとする案が可決された。これを受けて上院では,与党社会党の議員がさらに2ユーロの値上げを提案し,11月24日に可決された。政府は5つある公共放送会社への補助金の合計を2013 年度は3.3%減額して24億5,000万ユーロ(約2,400億円)とする予算を編成している。

独,放送負担金の徴収業務開始

ドイツで2013年1月から実施される放送負担金の徴収業務を行う“ARD・ZDF・ドイチュラントラジオ負担金サービス”が11月26日,業務を開始した。“負担金サービス”は,従来の受信料徴収センター(GEZ)を改称したもの。“負担金サービス”は,支払い額の変更がある市民やすべての事業所に通知を送付するとともに,ウェブサイトで届け出に必要な書類の提供などを始めた。

伊Sky Italia,代表選へ向け初の米国型テレビ討論会

イタリアの衛星有料放送Sky Italiaは,11月12日,衛星放送,地上放送,インターネットの全プラットフォーム上で,中道左派連合の代表予備選挙へ向けたテレビ討論会を放送した。これは2013年4月で任期切れとなるモンティ現首相の後任を選ぶ総選挙を前に,中道左派連合の首相候補を選ぶ予備選挙が11月25日に行われるため,5人の候補者によるテレビ討論会を中継したもの。同番組は研究機関のデータやツイッターなどを利用したリアルタイム評価など,アメリカ大統領選挙のテレビ討論会に似た新しいフォーマットを採用した。専門家による分析の中には,伝統的にテレビ依存率が高いイタリアにおいて「わが国の選挙報道のあり方に革新をもたらす歴史的な放送」という評価もある。