放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

オーストラリアABC,VODサービスiViewを開始

オーストラリアの公共放送ABCは7月23日,国内限定の無料VODサービスiViewを開始した。視聴者はABCの5つのチャンネルの見逃した番組を,放送後1週間,自分のPCでストリーミング視聴することができるようになった。iViewのシステムはABCが独自に開発したもので,基本ソフトは Windows,Mac,Linuxのいずれでも視聴可能である。サービス開始時点で72番組,約40時間の番組が提供されており,この量は徐々に増やされる予定である。ABCはiViewとほぼ同時に,ABCのコンテンツ(最近のヒット番組やアーカイブ番組)を有料で提供するVODサービス,ABC Shop Downloadsを開始した。現在250時間の番組が提供されており,ほとんどの番組を2.95オーストラリアドル(約310円)でレンタル(Windowsのユーザーはダウンロードが可能)して視聴することができる。

中国,「報道の自由」に海外メディア懸念

オリンピックの開催を間近にした7月,中国の警察当局と海外メディアの間で取材をめぐるトラブルが相次ぎ,中国政府が保障したはずの「報道の自由」への懸念が高まっている。このうち25日には,入場券を買いに来た市民の行列を取材していた香港の複数の記者が,警備の警察官に暴行されてけがをしたり連行されたりし,香港記者協会では中国政府に対し,警察当局の取材への干渉をやめさせるよう要求した。また11日には商品取引所幹部の横領事件に抗議する投資家の写真を撮っていた香港の記者が警察にカメラを押収された。外国人記者クラブ(FCCC)のまとめによると,去年海外メディアの取材を自由化する規則が導入されてから7 月までに,警察当局による取材妨害は合わせて260件にのぼっている。

台湾,放送事業発展基金条例を廃止

台湾の立法院は7月15日,放送事業の質向上などを目的に1983年に制定された放送事業発展基金条例について,与党国民党の賛成で条例廃止の決議を採択した。条例に基づいて設立された放送事業発展基金会は,商業局の利益の一部を財源として優良番組の選考や放送分野の学術研究などを行う組織だが,民進党政権の時代に野党系メディアへの批判が目立ったとして,国民党が不満を募らせていた。国民党は「基金会はその役割を終えた」としているが,メディアNGOからは,放送分野の人材育成など放送事業の質向上のための組織は必要であり,商業局の売上の一部を財源とする新しい基金を設置すべきだとの声が出ている。

台湾,立法院がNCCの新委員を承認

台湾で放送・通信分野を管轄する独立規制機関のNCC=国家通信放送委員会の新しい委員が7月19日,与党国民党の賛成などで承認された。メンバーを従来の13人から7人に減らした新NCCは学識経験者を中心に構成され,主任委員には政治大学報道学科の彭芸教授が選出された。

韓国,大手3社が放送広告収入の半分確保

韓国の放送通信委員会は7月1日,2007年末時点の380放送事業者のうち,事業を中断した社などを除く342事業者を対象とした「2007年度放送事業者財産状況」を公表した。それによると,放送事業者全体の資産は26兆2,625億ウォン(2兆7,000億円)で負債は10兆5,308億ウォン,資本は15兆7,317億ウォンであった。また,広告収入については,44の地上放送事業者の合計が2兆4,620億ウォンにのぼり,なかでも KBS,MBC,SBSの大手3社の合計額は1兆7,951億ウォンで放送広告収入全体の51.8%を占めた。

ネパール,KTVが新チャンネルスタートへ

ネパールの代表的な地上商業テレビKTV(Kantipur TV)の最高幹部は7月14日,現在の総合チャンネルとは別に,ニュースチャンネルとスポーツ・娯楽チャンネルを近くスタートさせることを明らかにした。 KTVはネパール最大のメディア企業グループKantipur Media Groupのテレビ放送部門で,2003年7月,カトマンズ盆地を放送圏とする地上放送局として開局,3年後の2006年7月,衛星伝送による全国放送と海外向け衛星放送を開始した。