放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBCトラスト,オンライン教育サービスを一時中止

BBC の監督機関のBBC トラストは3月14 日,5歳から16歳を対象としたオンライン教育サービスの「BBC Jam」を3月20日をもって一時中止することを発表した。BBC Jamはイギリス政府の肝いりで2006年1月に開始した無料の教育サービスで,新特許状で規定された「教育と学習を促進する」という公共的目的を達成する重要な要素の1つに位置づけられている。しかし,同様のサービスを提供する商業事業者の強い反発を招き,EU 域内市場における競争問題を所管する欧州委員会に提訴される事態に至った。こうした状況下でBBCトラストは,BBC Jamを公共的価値の審査にかけ,このサービスが不当な民業圧迫にあたるのかどうかを改めて検証することを決定した。

英FA,2008年からの独占放送権をITVとSetantaに販売

イギリスのイングランド・サッカー協会(以下FA)は3月30 日,2008年8月から2012年7月までの4シーズンの独占テレビ放送権を無料商業テレビの老舗ITV とスポーツ有料放送のSetantaの2社に販売することを公表した。放送権料は42%アップの総額4億2,500万ポンド(約977億円)。なお,これによって14年に及ぶ衛星放送BSkyBによるFA 放送権の所有に終止符が打たれた。

仏CanalSat,2社の統合に向け新サービス開始

3月21日,フランスの衛星放送CanalSatは,これまでTPSで放送されてきた多くのチャンネルを統合し,"CanalSat Nouveau"と名づけた新サービスを開始した。月額の加入料金は当面据え置かれる。一方TPSでは,同日で新規加入の受付を停止した。1月初めに2大衛星放送事業者であるCanalSatとTPSが,いずれも新会社CANAL + Franceの100%子会社となったことで,サービスをCanalSatに統合するため。9月以降2009年までに,TPSの加入世帯ではパラボラアンテナの方向をユーテルサット衛星からアストラ衛星に変更する作業が行われ,加入者は順次CanalSatのサービスに移行することになる。

独公共放送,サッカーW杯2014年大会の放送権獲得

ドイツ公共放送のARD とZDF は共同で3月23日, 2014年に南米で開催されるFIFA ワールドカップのドイツ向けの全放送権を獲得したと発表した。ARD とZDF は全64試合のうち少なくとも44試合を生放送する意向で,さらに全試合の同時放送の権利を有料放送事業者にサブライセンスすることもできる。なお,放送権料は約1億5,000万ユーロ(約236億円)と推定されている。

オーストリア 公共放送ORF,携帯端末向け専用のテレビチャンネルの試験放送開始

オーストリアの公共放送ORF は,携帯端末向けの新しいテレビチャンネル「ORF MOBIL」を立ち上げ,3月5 日,DVB-H 方式による試験放送を開始した。「ORF MOBIL」専用の番組を制作し,放送する点が特徴。ターゲットは若年層で,アート・音楽・娯楽の3つのブロックを繰り返し放送し,これに毎日のニュース・天気予報・交通情報・イベント情報などを加える。ORF はすでに2006年末より,ORF1 とORF2 の2つのテレビチャンネルを携帯端末向けに試験放送(サイマル放送)している。試験放送エリアは首都ウィーン,期間は6月末までの予定。

欧州委,携帯向け放送の統一規格にDVB-Hを提唱

欧州委員会の情報社会・メディア担当委員レディングは3月16日,ヨーロッパの携帯端末向けデジタル放送の統一規格としてDVB-H 方式を採用すべき,との見解を述べた。現在ヨーロッパでは,携帯向け放送に関してDVB-H とDMB の2つの規格が競合しているが,規格統一の合意の見通しが立たないまま各国が個別に導入や実験を進めている。レディングによれば,期待される経済効果を最大限に生かすために,EU は規格や免許制について早急に統一戦略をもつ必要がある。その際,ライセンス条件が安定しており,規模効果を追求できるDVB-H 方式を業界は発展・振興すべきだとした。さらに欧州委は今年中に正式なガイドラインを策定する意向も示した。これに対して,世界DMB フォーラムは,欧州委は技術中立であるべきだとして,介入を批判している。