放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

英BBC,マイクロソフトと提携に合意

イギリスのBBCは9月28日,米マイクロソフトとの間で,デジタル戦略上の業務提携に合意したことを発表した。この提携には,オンライン・アーカイブの活用,インターネット第2世代であるweb2.0上のウェブサイトの開発,オンラインコンテンツの共有方法の模索などが含まれる。なお,新技術を実際に応用し,サービスを開始するには,監督機関であるBBCトラストの承認が必要である。

英BBC,生活時間調査を公表

イギリスのBBCは10月2日,生活時間調査「The BBC Daily Life」の結果を公表した。これは,1930年代から5年ないし10年おきに実施してきたもので,公共サービス放送事業者として,国民の1日の時間の使い方とメディア利用状況を把握することで,視聴者のニーズを理解し,サービスの向上に役立てる重要な基礎調査とされている。今回の調査は,2002年10 月から2003年9月までの期間実施され,全国4歳以上の国民5,000人が対象である。また,記録方法として初めてPDAの使用が導入され,回答者の 70%がこれを利用した。結果の一部を紹介すると,ラジオとテレビの1日の利用状況は,深夜から午後3時30分までテレビよりラジオのほうが多く利用され,その時間以後はテレビがラジオを圧倒する。報告書では,この結果から北アイルランドの地域ラジオBBC Radio Ulsterの編成を改善したと具体的な事例を挙げている。

仏地上デジタル放送,100%カバー計画に遅延

フランスの地上デジタル放送は段階的にカバー率を拡大しているが,最終的には85%程度にとどまる見込み。国境隣接地域や山間部などがあるためだが,無料チャンネルの団体Le Groupement TNTでは,ユーテルサット衛星でカバー率100%を目指すことを7月に決定し,準備を進めてきた。スクランブルはかけるが,100ユーロ程度の受信機器で無料で受信可能にする。しかし,TPSと,アストラ衛星を使用するカナルサットとの合併問題が絡み,9月末に使用衛星に関する意見対立が表面化,政府目標の,年末の放送開始は困難な情勢となった。

伊テレコム,事業再編でニューズ・コープと提携

イタリア通信最大手Telecom Italiaは9月11日,大規模事業再編計画を決定し,今後IPTV を含むブロードバンド事業を強化して「メディア企業」を目指す方針をうち出した。新計画は現在グループが行う事業を3つに分割し,地方固定電話事業と携帯電話事業とを本体から分離してそれぞれ新しく設立する子会社に運営させるというもの。ブロードバンド事業強化については,ニューズ・コープ社と米20世紀フォックスの映画コンテンツをテレコム社のIPTV「Alice Home TV」で提供することで合意した。新計画では国内で約3,000万件以上の加入者を持つ携帯電話最大手TIMを売却する可能性がある。

アイルランド語チャンネルTG,2007年独立へ

アイルランドの放送を所管するコミュニケーション・海運・資源省は8月17日に,アイルランド語専門テレビチャンネルのTG4 が2007年4月より,独立した公共放送事業体となることを発表した。TG4 は1996年の放送開始以来,公共放送RTE の傘下で運営されてきた。同国の憲法は,アイルランド語を第1公用語,英語を第2公用語と定めているが,アイルランド語が日常的に用いられているのは一部地域に限られ,政府は,国内におけるアイルランド語の普及,振興を政策課題としている。なおTG4 の財源(2005年実績)は,政府交付金(約86.8%)と,広告などの商業収入(約13.2%)で,独立後も政府交付金の継続が保障されている。

ヨーロッパ放送連合,Pleitgen新会長就任

ヨーロッパ放送連合(Europe Broadcast Union/EBU)の会長に9月1日,前任者のフィンランドの公共放送YLE会長Arne Wessberg氏の後を引き継ぎ,Fritz Pleitgen氏が就任した。Pleitgen氏は,1995年からドイツ公共放送連盟(ARD)の最大加盟局である西部ドイツ放送協会(WDR)の会長の任にあり,2002年からはEBUの副会長も務めていた。EBU会長は,EBUの業務全般を監督し,EBUの活動すべてに責任を負う。任期は2年。